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ドラゴンさんのセカンドライフ  作者: いくさや
第二章 街住まいのドラゴン
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63 ドラゴンさん、失敗する

 63


 トントロにピートロ。

 それから周りにいる動物やモンスターたち。

 僕が飛び降りると、いきなりこっちに集まり始めてきた。

 人間はシアンたちの方に行ったままだから、僕の相手をさせるつもりなんだ。


「今は、相手している場合じゃないんだ」


 翼があれば空を飛べるけど、今はない。

 このままだと下りるとのいっしょに襲われてしまいそうだ。


 だから、地面に落ちる。


 わざとうまく着地はしない。

 そうすれば、地面が揺れてすぐに襲われなくなるから。


 走って向かってきていた動物もモンスターも足を止めた。


 けど、これぐらいならすぐにまた走り出す。

 その前に動く。


「わっ!」


 ただ、大きな声を出す。


 生命力も魔力ものせていない、ただの音だ。

 こんな事じゃ敵を倒せたりはしない。


 けど、ドラゴンの僕は動物から怖がられる。

 威嚇には十分だ。


 後は……。


「えいっ!」


 魔闘法――竜王撃:破岩竜『真竜の裂け目』。


 生命力と魔力をこめて地面に両手を突き刺す。


 そうすれば、地面は揺れて、崩れて、壊れて、続いて、つながって――僕の周りをぐるっと囲むみぞができあがる。

 本当はたくさんいるモンスターを埋めてしまうために使うんだけど、こうすれば邪魔されないだろう。

 僕が縦に五人は入れるぐらい深くしてあるから、ここに落ちたら簡単には上がれないはず。


 揺れと音から回復したモンスターも向こう側から動かなくなった。

 みぞができる時に巻き込まれた何匹かも上がれなくなっている。

 空から向かってくるハチとかコウモリのモンスターもいるけど、こっち相手に遠慮はいらない。


「あっちいっててよ」


 今は両手の調子がいい。

 生命力で強くして振るうだけで空に爪あとができる。

 空を飛ぶモンスターはそれに巻き込まれて、バラバラになってみぞに落ちていった。


 そうしていると、後ろからドンと何かがぶつかってくる。


「トントロ」


 振り返ったらモンスターになってしまったトントロだ。


 何度も体当たりを繰り返してくる。

 僕は痛くないけど、このままだとトントロの方がまいってしまいそうで、優しくその頭を受け止めてみた。

 金属みたいな毛並みが手にチクチクする。

 でも、これならトントロを傷つけないでいいはず……あいた。


 今度は横からピートロが突進してきた。

 やっぱり痛くないけど、これじゃあ二匹を助けられないから、片手ずつでどっちも止めておく。


「……どうしよう。手が使えない」


 僕がお手本にしようとしていたのはマリアだ。


 ギルドで銅斧さんが変になった時、マリアは手のひらから生命力を流して、悪いのをなくしていた。

 あれはきっと魂魄が悪いマナに汚されそうだったのをきれいにしたんだと思う。


 あれをトントロとピートロにしてあげれば、きっと元に戻せると思ったんだけど、手が使えないと……あ、もう、さわっているからいい、のかな?


「とにかく、やってみないとわからないや。トントロにピートロ、ちょっとだけガマンしてね」


 両手からそっと生命力を流してみる。

 量はいっぱいじゃなくていい。

 たしか、マリアはただ流すんじゃなくて、波みたいに揺らしていた。

 それをマネしてみる。


 けど。


「ダメだ。何も変わらない」


 ただ、生命力を分けてあげているだけ。

 トントロとピートロが元気になって……ないな。

 なんだか気持ち悪いみたいで、押してくる力が弱くなっている。


 トントロとピートロの内側を感じる。

 魂魄から生み出されている生命力と魔力。

 どっちも嫌な感じのするモンスターのそれのままだ。


「やり方、間違えてるんだ。思い出せ。マリアがどうやっていたか」


 銅斧さんが変になって、それをノクトがマリアに教えて、それから何があったか思い出すんだ。


 近づいて、それから――手のひらを当てる前に球をいくつもぶつけていた。

 あと、ぶつける前に生命力をこめていたし、それもひとつひとつが波を持っていた。


 そうだ。

 いくつもの波が銅斧さんの中で揺れて、ぶつかり合って、返っていって、きれいだったのを覚えている。


 大事なのは波だけじゃない。

 あの波のぶつかり合いだ。


「あれ、できるかな?」


 ちょっと自信がないけど、やらないと二匹を助けられないなら、うまくやるだけだ。

 マリアが持っていたような球はないから、えっと、そうだ。


「トントロ、ピートロ、ちょっとだけ痛いよ?」


 押してくる二匹をゆるく押し返して、その間にコツンとそのおでこを叩く。


 ズゴン、と大きな音を立てて二匹が地面にぶつかってしまった。


 すっごい手加減したのに、今は両手の調子が良すぎるよ。


「ごめん、ごめんね!? けど、すぐに助けてあげるから」


 当たり所がよかったみたいで、二匹とも生きている。

 うまく立てないみたいで、うずくまったままなのはかわいそうだけど、今のうちに準備をしないと。


 僕は自由になった両手で頭の角を持って。


「えいっ」


 二本ともへし折った。

 ちょっと痛かったけど、こんなの生命力で簡単に治せるし、人間に角とかいらないしどうでもいい。

 遠くでシアンが何か叫んでいるけど、今は目の前の事に集中だ。


 そのまま角をにぎって、砕いて、球の代わりになる大きさにしていく。

 硬いけど、調子のいい両手なら難しくない。


「よし。やるぞ」


 手のひらにのせた角のかけら。

 そのひとつひとつに生命力をこめる。

 揺れるのもマネしてみるけど、これは難しい。

 いろんな波がなかなか作れない。

 でも、それなら工夫をする。

 生命力でダメなら魔力だ。

 右手のには生命力。

 左手のには魔力。

 普通に揺らしてみたら、それぞれが勝手にちょっと違った波になるから、これならだいじょうぶだろう。

 それでもマリアの用意した波にはぜんぜん足りないな。

 いや、それなら違う方法で波を起こせばいいんだ。

 手とは別に、声からも波を起こしてみよう。


「よし」


 うずくまったトントロとピートロにかけらをいくつものせて、もう一度手のひらをおでこに当てて、大きく息を吸う。

 濃いマナが体の中で生命力と魔力に転換される感覚。

 これだけあればいくらでも流し込める。


「思いっきりいくよ」


 そうして、僕は生命力の波を作り出す。

 手のひらと声から。

 ドラゴンブレスが放てるぐらいの生命力と魔力を波にして流し続けた。


 目をつぶって、祈るように、トントロとピートロを助けたいと願いながら。




 そうして、しばらくして、僕は気づいた。

 どれだけ時間が過ぎたのか集中していてわからないけど、いつの間にか手のひらから伝わる感覚が変わっている事に。

 あんなにはっきりと感じていた嫌な気配が二匹の中からなくなっている。

 それどころか、とてもきれいな生命力と魔力があふれていた。


 成功したんだ!


「トントロ! ピートロ!」


 目を開けて、そして、僕は目にする。


 なんだか、人間っぽくなった子豚の男の子と女の子を。


「……あれ?」


 もしかして、失敗しちゃった?

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