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ドラゴンさんのセカンドライフ  作者: いくさや
第四章 ドラゴンをやめるドラゴン
154/179

151 ドラゴンさん、感心する

 151


 横から来たのは剣の人だ。

 右と左。

 どっちからも。

 十よりも多い。


 僕が矢を撃っている間に横の方から近づいていたらしい。

 ずるい。

 でも、ノクトが教えてくれたから気づいた。

 ざんねん。


 ドラゴンシャフトを弓から剣に変える。

 近づいてきた氷像、まずは右の方にそのまま斬りつけて――。


「あれ?」


 はじかれた。


 びっくりだ。

 魔力剣で斬れないって、どうして?

 さっきは斬れたのに?


「……盾?」


 よく見ると、剣の人の後ろには別の氷像がいた。

 それらは大きな氷の盾を持っていて、僕が魔力剣をふるといっしょに前に出てきて、その盾を持ち上げたんだ。


 でも、すごい盾だ。

 魔力剣で斬れないなんて、すごい。

 街をこわさないように気をつけているし、今のでけっこうボロボロになっちゃったみたいだけど、しっかり止められてしまった。

 割れちゃったのもすごい速さで直っている。


「じゃあ……」


 剣じゃダメ。

 槍と弓も近すぎてうまく使えなさそう。


「斧だ」


 ドラゴンシャフトを持ちかえる。

 そうしたらさきっちょの先から魔力の刃ができあがる。

 剣とも槍ともちがう。

 丸をはんぶんにしたのと槍みたいにとがったのがくっついた形の、大きな、大きな刃だ。

 それから、ドラゴンシャフトがとても重くなった。

 剣とか槍よりもずっとだ。


「よいしょ――っと」


 それを持ち上げる。

 そして、今度は左からそっと近づいていたのに落とした。

 思いっきり、ブンってね!

 さっきみたいに盾の人が前に出てきたけど、そんなのじゃダメだよ。


「どーん!」


 僕の斧が盾にぶつかって、そのまま何もなかったみたいにぜんぶを吹き飛ばす。

 盾の人も、剣の人も、ぜんぶだ。

 どっかーんってぶつかって、バラバラになった。


 って、いけない。

 地面もどっかーんてなっちゃっている。

 すごく、いっぱい、たくさん、土がなくなって……。

 うん。やっぱり、後であやまろう。


「だから、今はごめんなさい!」


 ほうっておいた右の方に斧を落とす。

 ソロって近づいていたみたいだけど、わかっているからだいじょうぶ。

 今の氷像と同じように吹き飛んだ。


 右と左の剣と盾の氷像を倒している間に、前の方からまた剣と槍の氷像が近づいてくるけどへいき。

 もうわかっている。

 剣には剣。

 槍には槍。

 弓には弓。

 盾には斧。

 そうすればかんたんに倒せる。


 だから、そうする。

 剣をふって、槍で突いて、剣をふって、斧でつぶして、弓で矢を撃って、槍で突いて、剣をふって、ふって、ふって、斧でつぶして、つぶして、つぶして、槍で突いて、弓で矢を撃って、それから剣をふって――あれ?


 僕は


「像、なくならないよ?」


 像はいっぱいだった。

 僕が数えきれないぐらいだった。

 でも、僕もがんばった。

 いっぱいいっぱいいっぱい倒している。


 なのに、氷の像はどんどんやってくる。

 ぜんぜん、終わりがこない。


「どうなってるの?」

『それは倒しても補充されているからよ』


 ノクトが教えてくれる。

 ホジュウ……なんか強そうな名前だ。

 どんな動物だろう?


「補充っていうのは、なくなった分を作ったりして元の数に戻すって事ですよ」


 そうなんだ。

 シアンが教えてくれて……って、シアン?


 チラって後ろを見るとシアンが魔導の準備を終わらせていた。

 いつもの自信まんまんの笑顔がかっこいい。


「お待たせしました。レオン、一気に決めますよ!」

『レオンはそこで警戒! シアン、気をつけなさい!』

「わかっていますよ、わたしは天才ですからね!」


 シアンが杖を持ち上げる。

 いっぱいの魔力が上の方に流れていった。

 そして、そこで魔導に変わる。


 これは濫喰い獣帝王種キマイラカイザーを倒した……でも、あの時よりももっともっと、いっぱいの魔力を使っている。


領域エリア展開ブレイク-300・水属性ブルー――水精聖殿ウンディーネ!」


 水の柱が落ちてくる。

 でも、氷像の上じゃない。

 その向こう側。

 広場のまんなかの近く。

 あっちはたしか……アメジスがいた場所!


 水の柱が落ちるのといっしょに、目の前まで来ていた氷像が動くのをやめた。

 僕の足元でつぎつぎと倒れて、本物の氷の像みたいに動かなくなる。


 そっか。

 氷像を作っているアメジスを倒しちゃえばよかったんだ。

 さすが、シアンは頭がいいなあ。


 僕も弓でアメジスを撃っていれば……。

 でも、何かちがう気がするんだよなあ。


立体キューブ二重展開ダブル+5・水属性ブルー――水渦乱流アクアヴォーテックス!」


 何がちがうのか考えている間に、シアンが魔導をつづける。

 水の柱がグルグルとまわり始めて、中にあるものを振り回しだした。

 氷の像がどんどんバラバラになっていって、あれじゃあその中にいるはずのアメジスも……アメジスも……いない?


「アメジス。いないよ?」

「ふむ」


 気づくのと、その声が聞こえたのはいっしょだった。


 ふりかえると、僕たちの後ろ――シアンのすぐそばに、いつのまにかアメジスの姿が目に映った。

 思い出したのはさいしょに広場に来た時の事。

 あの時も僕たちはアメジスに気づけなかった。

 結界っていうやつ。

 それを使って、僕が氷像を倒している間に後ろに来ていたの?


「シアン!」

「気づくのが遅かったのう」


 僕がさけぶよりも先に、いつの間にか持っていた氷の剣を突き出す方が早い。

 シアンはまだ杖を持ち上げたままで、ふりかえってもいない。

 よけられない。


 けど、シアンは笑ったままだ。


「『そうくると思いましたよ』」


 シアンとノクトの声がいっしょに聞こえた。

 その時にはもうシアンが猫っぽくなっている。

 まっくろな目と髪と服の、猫耳としっぽのシアンだ。


 シアンとノクトは後ろを見ないまま、それでも力をふるう。

 後ろに向けて。

 しっかりと当てる。

 いろんな物を止めてしまう力だ。


 氷の剣が持ち主といっしょにピタリと止まって、動かなくなった。


「『ブリューナクのやり方は熟知していますからね』」


 シアンもノクトも後ろから攻撃されるってわかっていたみたいだ。

 だから、わざと知らないふりをして、そこを逆にねらったんだ。

 そっか。

 そうだったんだ。


 僕は感心して、それからため息をついた。


「『どうしました、レオン? ため息なんか……』」


 僕を見たシアンが息をのんだ。

 びっくりさせちゃった。

 あとであやまらないと。

 あぁ、失敗した。

 僕は手とか足とかを見下ろして、もう一回ため息をつく。

 シアンがつらそうにしているのを見るのはやだなあ。


 手も足も、今は氷の中。

 足元から伸びてきた剣とか、槍とかがぶつかって、僕の手足を凍りつかせている。

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