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ドラゴンさんのセカンドライフ  作者: いくさや
第四章 ドラゴンをやめるドラゴン
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121 ドラゴンさん、Aランクさんと会う

 121


 しーんとなったロビー。

 ギルドの人と冒険者の人。

 入る前からわかっていたけど、あんまりいっぱいはいないなあ。

 冒険者の人が十三人。

 それからギルドの人は……マリアたち受付の人と、ディックたち素材の買い取りの人たちが少し。

 他の人たちは奥の部屋みたいだ。


 そんなあんまりいっぱいいない人たちが僕たちを見ている。


 ギルドの人はびっくりして、それから「あぁ」みたいな声を出していた。

 マリアはほっぺに手を当てて、こまったみたいに笑っている。

 おかしい。

 こまらないようにしたはずなのに、こまらせてしまっている?


 それから冒険者の人たち。

 食堂の方に座っていたみたいだけど、今はほとんどの人が立ち上がっている。

 武器を持って僕をにらんでいるんだけど、悲しい。

 どうして、きらわれちゃうんだろう?


「ああ、もう。レオンはすぐにそんな顔をするんですから。ほら、気にしないでください。嫌われたわけじゃありませんよ? その、警戒されているだけです。あの人たちはレオンの事を知らないですから、ね?」

『警戒、かしら? 既に臨戦態勢のように見えるのだけど』

「気のせいです! きっと……その、お腹がすいているんですよ!」


 おなかがすいている。

 そっか。

 それなら気が立っているのも仕方ないね。


「ご飯、まだ来ないのかな?」

「え、ああ、そうかもしれませんね。だから、今は触れないようにマリアさんの所へ」

『無理みたいね』


 冒険者の人たちがこっちにやってくる。

 そっくりな顔の男の人がふたり。

 どっちも大きな体に、かたそうな鎧を着て、武器は剣だね。

 赤い鎧と青い鎧だから、赤鎧さんと青鎧さんだ。

 男の人たちはシアンに話しかけてきた。


「おい。こいつは最近Bランクになった魔導使いだったよな」

「ああ。そうだ、兄貴。変装しているようだが間違いない。最近、随分と派手に活躍してるらしいが……」


 じろじろとシアンを見ている。

 なんだろう。

 ちょっとやな感じだ。

 アルトを思い出してしまう。


 僕が胸の中のグルグルするのを考えていると、男の人たちが小さく笑った。

 あ、やっぱりやな感じだ。


「魔力はまあまあだが、それだけだな。生命力が話にならねえ。大方、そっちの生命力バカに守られているだけだろう」

「噂では使い魔の猫の妖精は収納が使えるらしいな。おい。Aランクに上がったらうちに入れてやろう。もちろん。荷物担ぎとしてだが」


 なんだろう?

 この人たちはシアンに話しかけているのに、いじわるな事を言っているのに、僕の方ばかり気にしている。

 目はむけてないけど、気持ちが僕を見ている。


 とりあえず、シアンにいじわるを言わないでほしい。


「シアンはすごいよ。いじわるしないで」


 だまったままのシアンの代わりに言う。

 そうしたら、シアンが手を引いてきた。


「レオン、いいんですよ。この人たちも間違った事は言っていません」


 それから顔を耳に寄せてきて、小さな声で教えてくれる。


「この人たちはわたしをネタにしてレオンを刺激しているだけです」

『そうね。どうせレオンの強さが気になって様子をみているのでしょう。勧誘のためか、それともライバルとしてかは知らないけど。ただ、それにしたところで、礼儀を知らないのに変わりはないわ。関わるだけ時間の無駄よ』


 あ、ノクトも怒っているんだ。

 フードの中でしっぽを細かく揺らしている。


 うーん。

 シアンとノクトの話はむずかしくてよくわからなかった。

 ただ、この人たちは僕を知りたくて、それでシアンにいじわるを言ったのはわかった。

 変な事をする人だなあ。


 僕が知りたいなら聞いてくれればいいのに。


「僕はレオン・ディー。冒険者だよ」


 だから、教えてあげた。

 なのに、二人はちって舌を鳴らしてくる。


「ちっ、乗ってこねえか。冒険者ギルドだからか? それともビビったか? そこそこの生命力はあるみたいだが、使い手がこれじゃあ程度が知れるぞ?」

「生命力だけのバカじゃないのかもな。『裸捨て』された奴隷にしては知能があるらしい」


 やっぱり、やな感じ。

 今度はシアンじゃなくて僕の方にいじわるを言ってくる。

 本当に何がしたいんだろう?

 あと、名前を教えてほしいんだけど。

 名前を教えたら、教えてもらえるんじゃないの?


 にらんでくるのを見つめ返して、どうしようかと思っていると他の人が入ってきた。

 冒険者の女の人だ。

 こっちの人は鎧じゃない。

 シアンみたいなローブだけど、魔導装備だね。

 長い髪の間から二人を見て、それから僕を見て、息をのんだ。


「……おやめなさい。二人とも」

「あん? 『魔女』のお嬢様が誰に命令してるんだ? 『双頭狼』の俺らに命令を出せるのはギルマスだけだぜ?」

「兄貴の言う通りだ。口出ししないでもらおうか」

「口出しじゃない。忠告だ」


 女の人――魔女さんがまた僕を見る。

 なんだかたくさん汗をかいているみたいだけど、だいじょうぶかな?

 お水、持ってこようか?


「……とんでもない魔力。前衛には生命力しか感じ取れていない? だとしたら、どれだけの?」

「あん? 魔力? Bランクの小娘の魔力に『魔女』が恐れをなしたか?」

「いや、それはないだろう、兄貴。魔力は『魔女』の方が上だ」

「三人はそれぞれ生命力と魔力に特化しているからな。得意分野でしか彼を理解できないのだろう」


 また、来た。

 今度はまっ白な鎧のおじさん。

 腰とか背中とかに剣がいっぱいだ。

 これ、剣も鎧も魔導装備だ。


「おい? 『大鷲』の旦那? どういう事だ?」

「言った通りだ。この少年の力は易々と測れない。生命力も魔力も途轍もない質と量だ」

「生命力だけじゃなく、魔力も? なるほど、『魔女』殿には魔力を感じられる、と」

「手練れでしか測れないレベルで押さえているのね」


 僕、ぜんぜんお話できないよ。

 最後に来たおじさん――大鷲さんといっしょに三人はお話していて、ちょっとさびしくなってきた

 シアンの手をにぎってなかったら落ち込んでいたかもしれない


「ねえ、シアン。どうしたらいいのかな?」

「関わらないのが一番ですよ。ちなみに、こちらの方たちはAランクパーティのリーダーですよ。前衛特化の『双頭狼』と、魔導使いパーティの『魔女』と、最優秀の『大鷲』のパーティですね」


 ふうん。

 たしかに他の冒険者の人たちよりずっと強いよね。

 赤鎧さんと青鎧さんは生命力が。

 魔女さんは魔力が。

 大鷲さんはどっちも強い。

 食堂の方で立ったままの人たちよりも上だ。


 でも、一人だけ座っている人。

 この人はこの四人よりも強いよね。

 寝ているみたいで動かないけど、わかる。


 武器はない。

 鎧を着てない。

 というか、ボロボロの服を着ている。

 あんまり強そうに見えないかもしれないけど、一番強いのはこの人だ。


「ねえ、シアン。あの人は?」

「……すみません。わたしも知らない人ですね。ですが、Aランクパーティーの中に一人、となると」

『唯一のソロのAランク冒険者。『覚醒者』のハンスなのでしょうね』

「名前と通り名ぐらいしか知りませんが、おそらく」


 シアンとノクトが知らないんだ。

 やっぱりすごいんだろうなあ。


 Aランクの人たちはわかった。

 なんだかいじわるをして来たり、お腹がへってイライラしたり、仲が悪そうで良かったりしている人たちなんだね。


 名前を教えてくれなかったのは残念だけど、お話しているのを止めるのはいけないよね。

 そう思って僕たちはマリアの方を見た。


「やあ、待たせたね。ボクの最強の冒険者たち!」


 そしたら、マリアの後ろにはいつの間にかギルマスがいた。


 この人、いきなり出てくるんだよなあ。

 白黒のマントを着ていて、顔もきれいなのに気づけない。

 わからないばかりだし、やだなあ。


 ギルマスは僕たちを、Aランクさんたちを見て、それから僕だけを見る。

 ニコニコと笑いながら、手を伸ばしてきた。


「さあ、このメンバーでダンジョンの下層を突破しようじゃないか! エースは君だ、レオン君!」

「やだ」


 僕のパーティーはシアンとノクトとトントロとピートロだ。


「あ、マリア。お金ちょうだい」

「えー、あーうんー。これねー」


 僕たちはマリアからお金の入った袋をもらって、ポカンとしているギルマスとか冒険者の人たちに手を振った。


 さあ、お買い物だ。

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