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勇者ゴブリンが征く!  作者: 啄木鳥 小鳥
一章
4/17

似た者同士

  パームとヴァイクと友達になって二日経った。

  今は、食べれる魔獣を狩ったり、体を鍛え直している最中。


「疑問に思ったけど、パームとヴァイクって種族違うけど仲がいいのはなんでだ?」


  魔物は助け合ったりしているがそれは仲間内や近しい者、そこは人間も同じだがこの二人は分かりやすく違っている。


「我とパームは似た者同士なのだよ」


「似た者同士?」


「そうだ。我とパームは突然変異種でな、我は人狼でパームはグリーンスライムの変異体なのだ」


  魔物の中で偶に生まれてくる突然変異種は、種族が変わって別の力を持つみたいだ。

  人狼は二足歩行だがヴァイクの場合は、四足歩行だ。力を使えば二足歩行も可能らしいが面倒だから使わないようだ。

  アギトウルフの名の通り、顎の力が強力で堅い鋼も噛み砕けるため歯の方も頑丈で、折れても直ぐに生え変わるため便利。


  グリーンスライムは、毒の塊だがパームには、毒が無くなっている。

  そしてパラサイトスライムの名の通り、生物に寄生し神経などを溶かして体を動かすことが出来る。はっきり言って戦いたくない相手と言えなくもない。


「それじゃあボスもボクらと一緒だよネ」


  確かにそうだな普通のゴブリンが光属性を持つことがない。

  つまり、オレも突然変異種に分類されるのか。

  種族名は……シャインゴブリン。

  名は体を表す、安直だが分かりやすくていいかもしれない。


「確かにそうだな、じゃあオレは、これから種族名をシャインゴブリンにしようと思うがどう思う?」


「良いのではないか?我とパームも特徴を種族名にしておるし妥当だと思うぞ」


「ボクの種族名を付けたのヴァイクだからネ。ヴァイクが良いならボクはいいと思うネ」


  種族名考えたヴァイクだったのか。

  ま、深く考え過ぎて変な名前になるよりマシだな。


「シャインゴブリンで決定でいいな。それじゃあこれから狩りに行って晩飯確保するか?」


  会話しながら鍛練や狩りに使う木刀を作っていた。

  硬いハガネカシと呼ばれる木をヴァイクに手伝ってもらい、四本ほど削っていた。

  刀のように研げば切る事ができるが、鍛練や狩りには特に必要ないから形だけに留めている。

 

「ならば、南の湖まで行ってみるか」


「そこって遠いのか?」


「歩くと三時間以上かかるだろう。だが、我の背に乗り走れば三十分もかからないだろう」


  そう言ってヴァイクは、一メートルから二メートル以上までに変化した。

  三メートルまでなら自由に大きさを変えれるらしい便利で羨ましく思う。

  大きい獲物を運べて集落まで届けることが出来そうだ。二人が集落にいた理由は、狩りの手伝いだったな。

  ヴァイクの背に乗りながらそんなことを考えていた。

  そして、地獄を体験した。

  景色がブレた、と思う位速かった。しっかり掴んでいたから助かったが危なかったと言わざるを得ない。

  衝撃で気絶しても可笑しくなかった。


「すまない、いつもパームだけであったから加減を忘れていた」


「…あ、あぁ。次から、気をつけ、て」


  肩で息をしながら呼吸を整える。

 

「パーム、おま…体……便利だな」


  パームはスライムだから体を変形してオレをヴァイクに固定するように巻きついていた。

  これなら加減せずに走る事ができたのだろうな。

  そんなパームに弱点はあるのだろうか気になる。


「便利だけどネ…直接的な攻撃が出来ないのがネ…」


  ため息混じりに答えてくれた。

  グリーンスライムは、直接毒をぶつければ勝てるが…パームには毒がなく、相手の体に寄生する特殊な戦いをせざるを得ない。

  一度体に入ってしまえば抵抗出来ない利点があることを理解しているのだろうか。


  他人を心配しているが自分はどうであろうか。

  人ではなくなったことで色々と戦い方を修正しなければならない。

  死ぬ前は独特な闘い方をしていた。光属性の魔法と剣で相手を肉薄してからガントレットを着けた腕で殴るという確実に相手を無力化させる脳筋な闘い方だった。

  ゴブリンである今その闘い方は出来ない。

  背が低いし腕も長くない、体重も軽くなった。これでは、重い攻撃が打てないしリーチが短いから当てづらい。

  だがその分瞬発力と小回りが利くようになった。これからはこの二つを生かす工夫考えなければならない。

  どうしようかと思案していたら止められた。


「湖の縁にアームグリズリーが居るな」


  アームグリズリーは熊の仲間だが腕が異常に大きい。その大きい腕の肉はたいへん美味…とはヴァイクからの情報。今日の獲物が決まった。

  ヴァイクに跨がりアームグリズリーに突撃する。


「ヴァイク、パーム!ちょっとオレだけで倒してみたいから手出さないでくれ」


「ボス大丈夫?」


「勝算があるのか?生まれたばかりのリィールでは、まだ危険な相手だと思うのだが」


「大丈夫だ。闘い方は心が、魂が覚えてるからな」


  そう言ってアームグリズリーと向き合う。

  持って来た木刀を二つ、短い物を左手、長い物を右手に持つ。

  腰を少し落として構える。腕と牙に捕まらないように動く。

  アームグリズリーの腕の力は凄まじく当たったら体の肉が吹き飛ぶだろう。

  だが一撃が遅い。攻撃をかわしながら横っ腹に木刀を叩きつける。


「…ふっ!せい!」


  怒ったアームグリズリーが両腕を降り下ろすのをかわし右手の木刀を離して左手の木刀を両手で握り渾身の力で頭に叩きつけ頭を砕く。

  頭を砕いたことでアームグリズリーの体が沈む。

 

「ボス、スゴーイ!本当に倒しちゃった‼」


「クックック、勇者の名は伊達ではなかったようだ」


「ふぅ~。おう、どーよ!見たかオレの実力」

 

  実力と言っても人間だった時とは違う。ゴブリンとしての力で行った地力の実力。

  一体だけだったから楽に戦えたが、複数来たら梃子づる可能性がある。明日からまた鍛え直さないとな。

  これがゴブリンに転生してから初めての本格的な戦闘であった。

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