転生の理由
オレは死んだ…。
何とも言い難い浮遊感を感じながら暗闇の中を漂って……否、訂正しよう。
一面真っ暗な闇だと思っていた。
そう…何も見えない筈なのだ。
それが、見えるようにするためには喚び出す必要があるからだ。
光輝く珠の様なものが呆れた感じで語りかけてきた。
「…何で死んでるのさ?」
何でって言われても…。
此方が聞きたい。
「せっかく、ワタシの力に耐える事ができる魂を持つ人間を見つけたのに…何で死んじゃうのさ!」
いやいやいや、キレんな!
此方が文句言いたいよ!
祝福とか加護はどうしたんだよ、全然役に立ってねーじゃんかよ‼
「しょーがないでしょ!あんた以外の勇者全員、戦って死んだのよ。誰だって病気で死んじゃうなんて考え無いでしょ‼」
自分は悪くないって言いてーのか。
…あれ?
そういえば何で会話が成立してんだ?
死んでるのに何でだ?
「うん?あ~そうだね、言ってなかったね。今のキミは、死んで魂だけの存在になっているんだ」
魂だけ?
「そうだよ、普通魂が体から離れたら霧散して消えちゃうけど、キミはワタシと繋がっているからそれを利用して、魂が消える前に保護しておいたのさ、繋がりを通じてキミの思っていることを感じているにすぎないのさ」
そういう仕組みだったのか。
でも何でそんな事を?
オレは死んだのだから新しい勇者を探せばいいだろ。
ハァーっと、ため息をついてぶっちゃけた。
「何かもう勇者探すのが面倒になっちゃってね…。キミが生まれるのを待つのにも五十年近くかかってたからさー。この際だから、このまま魂を転生させようかなーって」
かなーっじゃねーよ!
ふざけんなよ、お前の我が儘に付き合わされるオレの身にも…
身は無いから魂か。
付き合わされるオレの魂にもなれってんだ。
この光虫!
怒りのままに暴言を吐く。
「光虫って言うな‼ちゃんと名前で、光精霊レイディーネ様って呼びなさいよ!」
ふん。
口が無いので呼べませーん。
そして精霊は、怒ってオレがあーなってしまった原因を告げる。
「もう怒った!キミを反省の意味を込めて魔物に転生させてやるー。」
はぁーー!?
ふざけんなー!勇者が魔物になるって冗談でも笑えねーよ‼
「祝福と加護は付いたまんまだから、喚べば何時でも力を貸すから反省しなさい!」
有無を言わさず、光の渦に飲まれて意識が闇に落ちる。
■□■□■□
意識が戻ってくるのを感じる。
どうやら呼吸しているみたいだ。
転生することに不安で一杯だったが、ちゃんと転生出来たようで安堵する。
しかし、本当に魔物に転生したのだろうか?
意識はあるが周りが視えないのは不安になってくる。
光が射し込んできた。
目蓋を開ける事に気づいたので、開いた。
こ、これは……。
まだ馴れない眼を凝らして周囲を見渡す。
オレを囲むのは緑色の肌を持つゴブリン達だった…。