席決め
新しい席はくじ引きで決める事となった。
みのりさんと前頭の横に座った女の子は抗議をしたが多数決の前に脆くも崩れ去った。
「さっ、できたよー」
くじ引きを作っていた子が声をあげる。
このくじ引きだがあるのは当たりと大当りだけで、その二つだけ席が決まっており、後の席は自由にしろと言うことらしい。
因みに大当りが俺の隣で、当たりが前頭の隣らしい。
「さて、みんな準備は良いかしら?」
進行役は中学校で委員長をしていた三島さんだ。
その呼び掛けに各々準備完了の声が返ってくる。
「私の神引きを見せてやるわ!」
「必殺のドロー……、今こそこの手に勝利を!」
「私が今まで運が悪かったのは、ここで使うために貯めてたからだ! 多分、……きっと、…………恐らく」
等々、個性的な雄叫びが挙がっている。
作成されたくじは空にされたバックに入れられシェイクされている。そして腕一本分の隙間が開けられた。
「じゃあ誰から行く?」
三島さんが問いかけるが誰も動かない。
お互いを牽制しているためだ。くじ引きなので確率的にはいつ引いても同じなのだが、心情的にはそうもいかないのだろう。
俺も最初に引くと外れる気がするし……。しかしもしも先に引かれたら……、その思いから後にするとも言い出しにくいのだろう。数秒の沈黙の後の一人の女の子が前に出てくる。
「私が行こう! 神の引きを見せてやる!」
そう言い勢い良くバックに手を突っ込む。
「これだー!」
引き抜いた手に有ったのは真っ白なくじ……、外れである。
それを確認したその子は崩れ落ちる。
……敗北者の出来上がりである。
「滑稽だね」
俺の横で前頭がニヤニヤと嘲笑っていた。
ドSである。
しかしその少女の行動を切っ掛けに次々とくじを引いていく。
「ドロー! 大当りを召喚する!」
くじを見て崩れ落ちる。
「今この時に人生を捧げる!」
捧げるな……。
そしてまた崩れ落ちる。
「真打ち登場! 運命は私に微笑む!」
そして崩れ落ちる。
その後もくじは続いて行くがまだ当たりは出ない。そして量産される横たわる女子高生……、カラオケ店で死屍累々の光景である。なんの事件現場だと思うがみんな必死なので黙っておく。
そしてまだ誰一人としてカラオケしてない。
さっきまで嘲笑っていた前頭に至っては、既に興味を無くしスマホを弄っている。
そして、残り少なくなって来た所で知り合いがの順番になった。
引く人は三枝みのり、その人である。
「そろそろ出てもおかしく無いですよね?」
と言いながらバックに手を入れる。
今まで横たわっていた女の子も起き上がって注目していた。
起き上がる動作を見てこいつらゾンビみたいだな……と思ったのは内緒だ。そした周りの女の子達の視線からはコイツにだけは引かせたくないと言うような気迫を感じる。
お弁当の時の恨みか、今も一緒のクラスだからかはわからないが……。
「えいっ!」
みのりさんは可愛らしい声をあげてくじを引いた。
周囲に緊張が走る。
まるで全球団の指名が重なったドラフト会議の様な緊張感だ……。
思わず俺も固唾を飲んで見守ってしまう。
みのりさんはゆっくりと手にしたくじを見る……。
そして崩れ落ちる。
それを見た女の子達はやったーと喝采を挙げハイタッチをしている。どんだけみのりさんに引かせたく無かったんだろうコイツら……。
……やっと席が決まった。前頭の横は大人しい感じの女の子で、確か名前は栗田さんだった様な……。当たりを引いたときには神に感謝の祈りを捧げていたのが印象深い。
そして俺の横は、何と三島さんになった。三島さんは最後だったのだが残り物には福があるとの言葉通り見事俺の席をゲットした。
「えっと、秦野くん隣座るね?」
「うん、どうぞ。なんなら俺の膝の上に座る?」
「いいの!!!」
「……冗談だけどね」
俺の冗談に三島さんは激しい反応をした。
思わず仰け反ってしまった……。
まぁ三島さんだけじゃ無く、他の子達も身を乗り出していたが。
……前頭含めて。
「そっ……、そっか〜。いや、わかってたよ。うん大丈夫! 秦野くんの太股の感触を味わって見たかったとか思って無いから!」
少し動揺してるのか、結構な事を口走っている。
そして三島さんは案外むっつりな事が判明した。
「コホン、じゃあまずは飲み物持って来ましょうか」
ここのカラオケはソフトドリンク飲み放題なのでドリンクバーに入れに行かないと駄目なのだ。
「あっ、秦野くんの分は私が持って来るから立たなくて大丈夫だよ。何が飲みたいかな?」
これが男の特権と言うやつなのか、女の子が率先して世話を焼いてくれる。
「え〜、じゃあコーラでお願い」
「うん、わかった。入れてくるね」
三島さんは嬉しそうに部屋を出ていく。その後を他の女子がどんよりとした顔で追って出ていく。
「前頭くんは何が良いかな?」
「青汁」
青汁は置いてないだろうよ!
隣では俺と三島さんがした様なやり取りを前頭と栗田さんもしていたが前頭が鬼畜な回答をしていた。
「あ、青汁……、えと、流石に置いて無いと思うけど」
「え〜、今青汁の気分なんだけど〜。外で買って来てよ」
飲み放題の意味が無くなった!
「そうだね、そんな気分の時もあるよね。わかった買ってくる」
買ってくるな! 物わかり良すぎだ! しかも前頭は金を出す素振りが全く無い。
「いやいや、前頭ここは有るもので我慢しとけ」
「秦野くんがそう言うならコーラにしとく」
思わず口を出してしまったが、前頭は躊躇うこと無く前言を翻した。
……コイツ青汁持って来ても飲まなかったんじゃ……?
栗田さんはコーラ持って来るからと行って部屋を出ていった。
「………………」
「どうしたの秦野くん?」
「いや、なんでも……」
俺は先ほど迄の女子達の様子を思い浮かべ、こう思ってしまった。
これ、キャバクラみたいだな……、と。




