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待ち合わせ

 さて同窓会の日がやってきた。同窓会の会場となる場所はこの町で一番大きなカラオケ屋さんで、そこは大人数で使える部屋もある所である。

 今回の同窓会では驚いたことにクラスメイト全員が出席するらしい。普通なら欠席者は少なからずいると考えていたので素直に驚いた。この同窓会をみんながどれだけ楽しみにしていたのかがわかるようだ。

 たかが同窓会、されど同窓会……、もしくはそこに男がいるとなれば予定は開けておくと言うことか……。


 俺は会場まで前頭と一緒に行くことになってるので、今そこに向かっているところである。

 一つ気がかりなのはあの電話に出た指導係の先輩が余計なことをしていないかだ……。

 少し電話で話しただけだけど、あいつからは変態の気配を感じる。

 前頭の持ち物に盗聴器でも仕掛けていそうな、もしくはGPSで居場所を常に把握していそうな、そんな感じを受ける。……でも、あれはバカっぽいから大丈夫か。


 ……とっ、待ち合わせの場所に着いたな。まだ前頭は到着していなかったので俺はポケットからスマホを取り出し時間を確認すると、待ち合わせ時間の十分前であった。

 もう少しすれば来るなと思いながらスマホをいじっていると、数分もしない内に前頭がやってきた。


「秦野くーん!」


 前頭は待ち合わせ場所で待っている俺の姿を認めると、手を振りながら小走りで近寄ってきた。


 ……乙女か!?


 前頭の行動に思わず心中で突っ込んでしまったが、男女の価値観が逆のこの世界ならおかしくないのかも知れない……。しかし前頭は中学校時代よりもなんというか……、乙女度が上がっているような気がする。

 乙女度……、いや違うこの場合”漢度”という方が正しいのか? まぁこの前頭の態度が男か女どちらに好かれるのかわからないが……。

 もしかしてこの前頭の態度が清明で男を惹きつけているのかも知れない。

 そう考えた俺の脳裏に顔も知らない指導係の先輩が浮かんだ。

 後輩に手玉に取られる先輩か……、そして飽きればポイッ……。


 哀れ先輩!


 走り寄ってくる前頭を見ながらそんな考えが自然と浮かんできた。


「ごめん待った?」

「いや、全然」


 時間を確認するとまだ待ち合わせの時間には五分以上ある。


「待ち合わせの時間にもなってないし別に急がなくても良かったのに」


 小走りで来なくても良かったのにと暗に言ってみると。


「でも久しぶりに秦野君に会えて嬉しかったし……」

「あっ、そう……」


 連休前に会ったけどな!


「あっ! そうだ秦野君に渡しておくね」

「何を?」


 前頭はそう言うとゴソゴソと鞄を漁り細長い管の様な物を俺に渡してきた。


「催涙スプレー」

「…………」

「いくら以前のクラスメートだからって言っても安心は出来ないからね!」


 前頭はそう言うとニッコリと笑顔を浮かべた。

 しかしせっかくの好意だがここは謹んで遠慮しよう。


「有り難いけどいらない」


 俺の言葉に前頭は驚いた顔をして、次に憂慮の顔を浮かべた。

 でも……、と食い下がる前頭に俺はゆっくりと首を振る。

 俺にはそれは必要ないんだと言うようにゆっくりと……。

 前頭の心配はもっともだと思う、しかし俺には本当に必要ないんだ……。



 だって……、もう持ってるから……。



 持ってるから。俺はそう言いながら鞄から催涙スプレーを出して前頭に見せる。

 そのスプレーを見て前頭は安心した顔を浮かべた。


「そっかー、そうだよね! いくら何でも女子達ばっかの所に行くのに護身用の道具持って来ない訳ないないよね! 秦野君無防備な所があるから心配してたんだけど大丈夫だったね!」

「ハハハー、も、もちろんだよ」


 前頭は俺を心配をしてくれていたみたいで俺が護身用の道具を持っていると知ったら心底安心したみたいだった。しかし、このスプレーは自発的に用意した物では無く、メイドが絶対に持って行けと用意した物だったのだ。しかもこれだけでは無く……。


「実は僕も催涙スプレーだけじゃ無くて防犯ブザーとかも持って来てるんだ」

「へ、へぇ~、そうなんだ」

「秦野君も他に何か持ってきてるの?」

「ま、まぁ一応……」

「へぇー、見せて見せて!」

「うっ! うう……」


 俺は前頭の興味津々の眼に負けて持ってきた護身グッズを見せる。


「うぇ! 一杯あるんだね! えっと催涙スプレーの他には……、警棒にスタンガンにスプレー二つ? これ何のスプレーなの?」


 前頭は青と赤のスプレーを手にとって聞いてくる。


「……睡眠スプレーと麻痺スプレー」


 家のメイドさんお手製らしいがあの人どうやって作ったんだ!?

 前頭はそれらのグッズを見て感心したように言った。


「良かったよー、秦野君って無防備に人を信用してるのかと思ったけど、全然そんなこと無かったね!」


 違うよ信用はしているよ! 信用している振りをしている訳じゃないよ!

 前頭は悪意無く賞賛してくれているのはわかっているのだが、何故だか心に来る物がある。


「僕も先輩から凄い心配されたよー、防犯アイテムももっと持って行けとか」

「あー、大変だったな」

「んー、でも心配されるのは嬉しいけどね」


 あっでも、と前頭は続ける。


「先輩、秦野君にも気を付けろって言ってたな」

「はっ?」

「いや、何か僕を狙ってる気がするって」

「良し、ちょっとここに連れて来い」


 ぶん殴ってやる!

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