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家出

 学校での打ち合わせが終わり帰宅している。

 時間的には夕方なのだが夏が近づいているせいかまだ日が高く周囲は明るい。

 俺は帰宅途中にある中華料理の店が店舗前で販売している肉まんを買い、食べながら歩いている。

 この肉まんは小さく小腹が空いた時にちょうど良い大きさで、一つ百円で売られており子供から大人まで人気がある商品である。


 最近は良く買い食いとかしてるから男が買いに来ても驚かれなくなって来た。とても気が楽である。


 買った肉まんは二つだ、二つ食べても夕飯はキチンと食べる事が出来ると思っている。一つ目を食べ終えたので、二つ目を食べようと袋の中に手を入れようとした、その時に気になるものが目に入って来た。


 それはちょうど、公園の横を通りすぎる所であった。小さな公園で今は一人しかおらず、道にもあまり人通りも無く閑散としている場所だった。そんな場所で目を引いたもの、それは一人の少年だった。その少年は人気のいない公園であまり一人ブランコに乗って黄昏ている。その少年、……年の頃で言うと十三、四程に見える。そしてその少年は容姿が整っている。

 まだ幼いながらも憂いを帯びているその表情は何処と無く色気を漂わせておりここに女性がいたなら、必ず目を惹き付けるだろうと思わせる。


 中学生ぐらいかな……? 俺はそんな事を思いながら周囲を見渡す。


 ……誰もいない。

 ……そして黄昏ている少年が一人。


 誘拐とかされないだろうな……。いくらこの世界の女性が淑女ばかりだからと言っても、そう言い犯罪もあるからな。

 う~ん、このまま放って置いても良いんだけと、妙に気になってしまう。


 取り敢えず、声を掛けて迷惑そうだったら放っておくか。

 俺はそう決めると、公園の中に入って行き少年がいるブランコ迄近づいていった。


 少年は何か考え事をしているのか全くこちらに気づく様子が無い。


「君、もう直ぐ日が沈むから帰った方が良いよ」


 俺が少年に声を掛けると、その少年はビクリと身体を震わせ、おそるおそるこちらに視線を向けてきた。そして俺の姿を目に写すと安心したかの様にホッと一つ息をついた。


「心配してくれてありがとうございます」


 おおっ! 礼儀正しいぞ。


「でもちょっと家には帰りたく無いので……」


 何か家で嫌な事でも有ったらしいな。


「成る程、でも何時までもそうしている訳にもいかないと思うけど?」

「…………」

「まぁ、ここで会ったのも何かの縁だし悩み事があるなら聞くよ? 当然無理にとは言わないけど、まぁ肉まんでもお食べ、おいしいよ」


 肉まんを戸惑った様子で受け取った少年は俺と肉まんを交互に見て少ししてから思いきった様子でかぶりついた。


「……おいしい」

「結構、人気ある肉まんなんだよ」


 その後、少年は少し迷った様だが話す事にした様で、ポツリポツリと話し出した。


「僕、お見合いをする事になったんです……」


 少年の悩みはどうやらお見合いが嫌だったらしい。

 ……これは結構厄介かも知れない。俺は少年の悩みを聞いてそう思った。

 前世ならどうと言う事も無いかもしれないが、今世(こっち)の男のメンタルだったら、無理矢理のお見合いなんて自殺するかも知れない案件である。

 こっちの男は面倒くさいので取り扱いに注意しなければいけない。特別天然記念物並みに!


「しかし、何でまた?」


 そんな男達だから無理矢理お見合いなんて無いはずなのに……。


「父はお見合いと言っても異性の友達を作らないか? 程度の事だと言いましたが……」


 あっ、思ってたよりも全然軽かったわ。


「僕は、……その」


 俺が内心で会って見たら良いんじゃないか、と思っていると。

 少年は言いづらそうに言葉を続けた。


「女性が……、怖くて……」

「ああ、なるほど」


 それは逃げたくもなるな。

 多分、父親は克服して欲しいんだろう。


「父と母は仲が良いので僕にも同じ様な家庭を築いて欲しいんだと思います。……でもどうしても怖くて」


 そしてこの子はその事にも気付いている。けど怖いだから家出をしてしまったと……。

 しかし残念な事にこの世界の殆どは女性で、どこへ行こうとも女性はいるのである。


 とは言うもののこの世界、男性が引き込もって過ごす事も可能ではあるのだが……。やはりそれはあまり宜しくない。


「女性の何がそんなに怖……」

「僕を見る目です」


 最後まで言い切ること無く答えが返って来た。


「僕を見る女性の皆さんの目付きが、獲物を見る肉食動物の様に感じるんです。」


 ……おそらく間違ってない。

 この少年、かなりの美形である。薄い桜色の髪もよく似合っている。

 みんな食べ……、もといお近づきになりたいのだろう。

 しかし、このままだったら女性恐怖から女性嫌いになってしまう。

 そこで、僕はどうしたら良いんでしょう……、と悩んでる少年に助言を一つ。


「諦めよう」

「えっ?」

「女性がそういう目で見てくるのは諦めよう」

「で、でもどうしたら……?」

「慣れよう」

「な、慣れる……」

「うん、どうしたってこの世の中、女性が多いんだからしょうがない。それに……」

「それに?」


 少年は俺の言葉を興味深そうに聞いてくる。


「どんな目で見てこようが、そうそう無茶な行動は起こさない」


 この世界の男はメンタルがちょっとアレだから、不必要に刺激したらどうなる事か女性は良くわかっている。


「だからもしお見合いして、良かったら友達に成れば良いし、どうしても無理だったら言えば良い……」


 "生理的に無理です"と……。


 俺の言葉を聞いて、納得したのか少年はコクコクと頷いている。

 そして、しばらく考え答えを出したみたいである。


「わかりました。……そうですよね、何時までも怖がってちゃいけないですもんね。良い機会だと思ってお見合いして見ます」

「がんばれ」


 俺は決意した少年にエールを送る。


「はい! まだ怖いですけど頑張って言います。生理的に無理だって!」

「……えっ?」

「相談にのってくれて有り難うございました」


 ペコリと頭を下げて少年は走り去っていった。


 えっ……、違うよ。生理的に無理はどうしても駄目だった場合だよ。

 不必要に使ってトラウマメーカーに成っちゃ駄目だよ……、わかってるよね!

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