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パンフ

 コトリと飲んでいたお茶をテーブルに置く。

 そのお茶のお供にあるのは柑橘系風味のおまんじゅうである。


「これ、おいしいね〜」

「そうね、さすが秦野君が選んで買ってきただけあるわね」


 モグモグとお茶を飲みながらおまんじゅうの評価をしているのは、生徒会副会長の二人である。

 連休も明け学校が始まり、放課後に生徒会を手伝いに来ているのである。今は旅行のお土産を生徒会のみんなで食べている所である。


 一応みんなに行き渡るように大サイズを三つ買って来ていたのだ。クラスのみんなにも配って評判が良かったけど生徒会(ここ)でも良いみたいだ。お土産選びは成功したようで嬉しい、みんな美味しそうに食べてくれている。


 良かった良かったと周りを見渡していると、一人の女生徒が全く手を付けていなかった。

 ひょっとして柑橘系がダメだったのか、それともまんじゅうがだったのか、もしそうだったら悪いことをしたなと俺が思っていると、その子の近くに居る人も不思議に思ったらしく何故残しているのかを質問していた。


「ねぇ食べないの?」

「う~ん……」

「? 何ダイエットでもしてるの?」

「……違うけど」

「……良くわからないけど、食べないなら貰っても良い? 秦野君のお土産を食べたってだけで何倍にも美味しく感じるわ」

「ダメだよ!」

「えー、じゃあ何で食べないの?」

「食べないんじゃ無くて、食べるのがもったいないの!」

「いやもったいなくても食べないともっともったいないでしょうに……」

「そうだけど! そうじゃないかもしれないじゃない!」


 ……どうやら残している女生徒はおまんじゅうが嫌いと言う訳ではなさそうだが、ちょっと何言っているかわからない。俺は引き続き会話を聞いてみる。


「……そうじゃないかもって、食べないと腐るわよ」

「そう、そこが問題なの……」

「問題って、自然の摂理よコレ……」

「私はこの秦野君のお土産を一生物として飾っておきたいの」

「……ちょっと落ち着きなさい、そりゃ男の子からのお土産なんか貰えるの一生でこれが最後かもしれないけど、まんじゅうは飾っておく物じゃないの」

「でも……、でも!」


 でも! では無い……。諦めて早く食べて欲しい。仮に保存出来たとしてもお土産のまんじゅうなんか飾っていて欲しくない。部屋に行ってインテリアとしてまんじゅうが飾られてたらどう反応して良いかわからない……。


 どうやら説得されたのか女生徒は泣きながらおまんじゅうを食べている。

 そこまで上等の物では無いので普通に食べて欲しい……。しかし男のお土産と言うだけでこの反応なら適当に男って付けたらバカ売れしそうだな。

 ……いや、むしろ根金際(ねこんざい)調べあげられて男が関わって無かったら、恐ろしい報復をされそうだな……。

 こっちの男はプライド高いからそんな商売には手を出さない気がするし……。


 そんな生徒会の日常を過ごしていたら、ドアがノックされ、その後に女性が入ってきた。

 その女性は俺が居るのを確認すると笑顔になり話しかけてきた。


「秦野さんお久しぶりですね、学校は楽しめていますか?」


 ……誰だろうか? いや、ぼんやりと記憶に残っているんだが……。


「秦野さん?」


 俺が返事をしないので再度呼びかけられてしまった。

 まずいな……、さすがにどなたでしょう? と聞くことは失礼すぎる。かと言ってこのまま黙っている訳にはいかない?


「いえ、ご無沙汰しておりました。その節はお世話になりました」


 取り敢えず話を合わせておこう……。その内に思い出すだろう。

 俺が返事を返したことで安心したのかその女性は顔に笑顔を浮かべた。


「ああ、良かった。もしかしたら忘れられているのかと思いましたよ」

「ははっ、まさか」


 鋭いな……。


「今日は以前の契約通りお手伝いをして頂こうと思いまして」


 契約……、契約ってなんだろう? 話からすると俺はこの人と何か契約をしたらしい。

 ……この学校の関係者で契約、そこまで考えてようやく思い出した。

 説明会に同行するってヤツか! 

 俺はようやく思い当たってスッキリしたが、まだ女性の名前は思い出せていない。


「契約ですか……、でも説明会ってまだ始まってないですよね?」

「説明会はまだですが、学校案内のパンフレットはもう作らないといけませんからね」

「はぁ、でも契約では説明会に同行して魅力をアピールするって事だったと思いますけど。パンフレットに載るなんて言ってませんよ」


 そうなのだ。同行してPRするとは契約したがパンフレットに載るなんて言ってはいないのだ。

 残念だけど契約だからね……。


「ふふふっ、わかっています。だから今日訪ねてきたんです!」


 そう言うとその女性はおもむろに跪き、勢いを付けて頭を下げた。


「お願いします! モデルになってください!」


 それはもう見事な土下座だった。

 あっ、思い出したこの人前会った時も土下座してたな……、と言うか最近土下座する人多いな……、ブームか?

 しかしどうしようかな、心情的には受けても良いがコレに味をしめてアレもコレもとなるとな……。


 それにこの世界で俺の市場価値はかなりの物だ……、正直俺くらいの男をモデルとして使うとなるとそれはもう金が掛かる。

 安売りはしたく無い、とはいえまだ俺は一介の高校生だしな……。


 うーん、どうしよう……。この人の名前も含めて……。


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