表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/313

観客席

 みのりさんと分かれた後、観客席に向かう。まだ試合開始までは時間があるみたいだが、観客席は結構埋まってきていた。俺はなんとかフィールドとモニターを見やすい席を確保して一息つく、そして開始時間までどうしようかと思う。すると、俺の耳に売り子の元気な声が聞こえてきた。外だけではなく会場の中でも売っているみたいである。


 何か良い物が売っているかと思いその声を聞いていると、なんだか小腹が空いてきたような気がしてきたのでなにか買おうかなと売り子の声に耳を傾ける。


「裏料理同好会特製、密ぞ……、お米ジュースいかがですかー、果実の香りー、まろやかな口触りでおいしいですよー」


 …………


「すいませーん、一杯くださーい」


 俺はスッと手を挙げて売り子さんを呼ぶ、お米のジュースって珍しいから飲んでみたい。そう思ったのだ。

 それ以外に特に他意はない。


「はーい、少しお待ちくださーい」


 俺の声を聞いて売り子をしていた女生徒がこちらに向かってくる。


「一杯三百ジェニーでーす」

「はい、どうぞちょうどです」


 チャリンチャリンと硬貨を三枚売り子の女生徒の手に落とす。


「毎度でーす、おにいさんかわいいから目一杯注ぐねー」

「わっ! ありがとう」

「これ自信作だからー、美味しいよー」

「へー、楽しみ」


 そう言い売り子の女生徒は紙コップ一杯にお米のジュースを注いでくれた。

 注いでくれたジュースからは果実の上品な香りがして、一口飲むと米の甘みが感じられしっかりとした旨みもある。自信作と言うだけはある。とても美味しいおさ……、もといお米ジュースである。こうなると何かおつまみも欲しくなってくる。


「えだまめー、おつけもの各種ー、焼きトウモロコシー、じゃがバター、ありまーす。第一農芸部の新鮮野菜でーす」


 …………


「すいませーん。くださーい」

「ありがとーございまーす」


 新鮮野菜でお腹を膨らませつつ、二杯目のお米ジュースを飲み終える頃には試合開始の時間になっていた。




「みなさまお待たせ致しました! 只今よりスーパーアーツ部、恒例入れ替え戦を行います! 実況は私! 放送部の金平(かねひら) 一二三(ひふみ)が務めさせて頂きます! 解説にはスーパーアーツ部顧問、竹田先生に来て頂いております」

「どうも」

「さて竹田先生、恒例の入れ替え戦ですが今回の見所は何処でしょうか?」

「ああ、今回はなんと言っても初戦ですね」

「ほう、初戦ですか!」

「初戦の挑戦者は一年生の三枝で絢爛のスーパーアーツ部史上最速での挑戦です。それに対するはレギュラーでありインターハイ個人戦ベスト十六の二年生の有野です。先輩が後輩を叩き潰すのか、最強の一年生がレギュラー相手に下克上を成すのか……」

「それはそれはとても興味深いですね! しかしレギュラーが入れ替え戦に出るなんて初めてではないですか?」

「そうですね、入れ替え戦に出るA級からの人員は基本的には実力が低い者が出るのですが、今回の有野は立候補したらしく、相手の三枝も了承したのです」

「おお! それは凄い! 立候補した有野さんの真意は謎ですが、それを受けた三枝さんは凄い肝が据わっていますね! そんな二人の試合はもう間もなくです! 皆様刮目して見ましょう!」


 ……え? みのりさん何了承してるの。弱いヤツ狙おうよ……。


 そんな事を考えていると、みのりさんの入場が始まった。

 入場に合わせて実況の人がアナウンスを始める。


「私より強いヤツはいない! A級だろうがレギュラーだろうが私の前に跪け! 三枝みのり入場です!」


 アナウンスが流れると歓声があがる。

 ……しかしこれ絶対みのりさん言ってないだろ。

 そのアナウンスと供に入場してきたみのりさんは刀を手に持ち堂々と歩いてきた。

 しかし、服装は絢爛の体操服なので刀と合わせてみると結構シュールである。

 みのりさんの入場が終わると今度は対戦相手の入場である。


「生意気な一年は私が潰す。 おまえが今まで勝った相手は弱かっただけ! 私が本当の強者というものを教えてやる! 有野 あず入場です!」


 対戦者のアナウンスが流れるとみのりさんよりも大きな歓声あがる。

 やはり、強いだけあってファンもついているんだろう。俺は入場してきた対戦者の姿を見る。

 入場してきた選手は小柄だった、みのりさんよりも頭一つ分ぐらい背が低く、こちらも体操服での参戦だった。しかしその両手にはそれぞれ棒が握られている。

 その棒の先端は直角に曲がっており、曲がった先は二つに分かれてその部分は鋭く尖っている。


 ……一見するとバールの様に見える。と言うかバールである。


 どうやらバールを武器にしている様である。俺はあの人に教えてあげるべきだろうか? 

 バールは武器ではなく工具ですよと……。いや、知っていると思うけど……。


 二人は目算で二十メートル程開けてお互い向かい合っている。

 その二人の様子を見て段々と会場が緊張に包まれてくる。


 そしてとうとう試合開始の合図を知らせるブザーが会場に鳴り響く。


 瞬間、二人の間にあった距離が一瞬にしてなくなる。

 仕掛けたのはみのりさん、先手必勝とばかりに斬撃を放つ。

 それを相手は焦ること無くバールで受け止める。


 鈍い音が会場中に響き、その音と共にドン! と衝撃が俺の身体を襲う。


 その衝撃でほろ酔い気分だった俺の意識は一気に醒めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ