絢爛高校生徒会(入学式前)2
理彩は騒がしく生徒会室に入ってきた人物、この生徒会で共に仕事をこなす仲間でありそれも副会長の役職についている少女を見る。
先ほどの事から何やら大変な事があったらしい、さすがにマッサージされながら聞くのは悪いかと思い、先程までの至福の時間を終わらせるスイッチを押す。もみ玉が止まる事に若干の寂しさを覚えるが、先ずは何が大変かを聞かなければとこちらに歩いてくる少女を見る。
近づいてくる副会長、千香の様子を確認すると、何やら興奮しているみたいだが早急に対処が必要な様子では無い様に見受けられる。理彩はフム、と一息つくと近くに来た千香に話しかける。
「何かあっ……」
「大変なの! もー大変なの! スッゴイ大変なの! とんでもなく大変なのー!」
しかし、言葉を言い終わる前に、上から言葉を被せられる。理彩は千香の様子に顔から一筋の汗を垂らす。
何せスゴイ勢いで話しかけてくるのだが、得られた情報は大変な事があったというだけである。
「わっ、わかった。大変なのはわかった」
もうそう言うしかない……。
取り敢えず、落ち着いて貰わないと話しが出来ない。
「まぁ、何だ落ち着いてくれ。こっ、紅茶でも入れようか?」
「うん! お願い!」
まだ興奮しているようだが、会話が出来るぐらいには落ち着いてきたようだ。その事に少し安心すると、電気ポットに入っているお湯をティーポットに入れ、カップが置いてある場所に向かう。カップに関しては役員が各々自分の物を持ち込んでいるので、千香が生徒会室に置いてあるカップを取り出しそれに注ぐ。紅茶にも美味しい入れ方があるのだが、理彩はそこまで気にして入れた事は無い。
注いだ紅茶からは良い匂いが香ってくる。理彩はこの香りを嗅げば気持ちも落ち着くだろうと、まだソワソワしている千香に紅茶を持っていく。
「どうぞ……」
「いただきます!」
千香の前に紅茶を置くと、千香はすぐに手に取りそして一気に飲み干す。
「ちょっ! それホット!」
理彩はいきなり一気飲みした千香に驚愕する。実際に湯気が出ているぐらいに熱いのだ、それを一気に飲んだらどうなるかぐらいわかる筈である。
「てっ! あっつー!」
「……だろうね」
熱い紅茶を一気に飲み干し、のたうち回る千香を憐憫の視線で理彩は見てしまう。
しばらく、のたうち回っていた千香だが、ようやく治まってきたのか机に手を置き立ち上がってくる。
「大丈夫かい?」
「……いや、すごい熱い」
理彩はそれはそうだろうと思ったが口には出さなかった。
代わりに口に出したのは、何が大変なのかと言うことである。
「それで、何をそんなに慌ててたんだ?」
「それですよ! 大変なの!」
「うん、大変なのは良くわかったよ」
しかし大変なことはわかったが、何が大変かは全くわからない……。
「それで何が大変なんだい?」
「いや、すごいの、も~すっごいんの、とにかくすごいの」
「うん、すごい事は良くわかったよ」
理彩は落ち着け、落ち着けと、興奮し出す千香を宥める。それが功をそうしたのか、なんとか落ち着いてきた。
「ごめんごめん」
てへへと苦笑しながら千香は謝ってくる。
ようやく落ち着いて話せると理彩は一息つく。
「それで何があったんだい?」
「私ねさっき職員室で今度入学してくる男子生徒の確認をしてたんだけど」
生徒会は生徒に関してもフォローをしていかなければいけない、繊細な男子は特に注意する必要がある為、きちんと名前と顔を一致させる事が必要となる。その作業をしていたらしいがそれがどうかしたのか……? と理彩は不思議思う。
「もーすっごい可愛い子がいたの!」
理彩はその言葉を聞くと、なんだと気が抜けた。絢爛には結構な数の男子が入学してくるので、その中には容姿が優れている子もいる。確かにその子は人気がでるだろうから余計に気を付ける必要があるが、言ってしまえばそれだけである。学年も違う自分たちがそれ程関わる事もないだろうと理彩は思う。
「違うんだって! 学園長に聞くと性格も良いらしいよ! 絶対に人気がでるよ!」
「そうだろうね」
「でしょ? だったら部活とか入るのに苦労すると思うの」
理彩はそうだな、と同意し先を促す。
「その子が入ろうとした部活に、入部しようとする子が増えて収集がつかなくなるでしょ」
「そう言うこともあるな」
「大変でしょ?」
「大変だな」
「だから生徒会に入れよう?」
「いや、生徒会は生徒による選出だから」
しかも、今期は既に役職は既に埋まっている。
「いやいや、あれ! 何だっけお手伝い制度みたいなの! あれ使おうよ!」
「見習い制度か? でもあれは生徒会を手伝いたいと言う生徒か、入りたいと思っている生徒の為のものだが」
そして、生徒会の活動をして次の役員を目指す者が、在校生に自分の存在を知らせて選挙で投票して貰う、一種の宣伝的な物だが。
「でも、そんな規定ないじゃん。あるのは生徒会長がその生徒の意志を確認して任命できるって事だけじゃん」
「まぁそうだが……」
「ねぇ~、聞いてみるだけでも聞いてみようよ~」
理彩はしばらく考えていたが、そうだなと呟く。
「確かに部活に入ると大変そうだし、提案するだけでもしてみるか。性格も良いとの事だし邪険にはされないかも……、だしな」
その言葉を聞くと千香はやったーと飛び跳ねている。
その様子を見ながら、理彩は大事な事を聞き忘れていたと千香に質問する。
「それで、その男子の名前は?」




