休憩中の副会長
三島さんと別れた後、見回りを続けるが当然のように声をかけられる。
しかし前の二人とは違い、将来有望と思える人は中々いなかったので特に悩むこと無くお断りしている。
……しかしこの見回り、男を一人でさせるのは失敗だったのではなかろうか? いくら俺がしっかりしているとはいえ、フラフラとついていくとも可能性としてはあるのだから。
「ん?」
ガヤガヤと少し先の方で騒がしくなっている。もしや何か問題でも起こっているのでは気になり、様子を見に行くと、そこには執事服を着て、手にチョコバナナを持っている田町君と綿菓子を持っている日比谷副会長のコンビが文化祭を楽しんでいた。
「あれ?」
「むっ!」
文化祭を満喫しているなぁ。とぼんやり見ていると向こうもこちらに気づいたらしく、二人と視線があった。さすがにバッチリと視線が合った状態で無視するのはどうかと思うので、手を上げながら二人に近づいていく。すると周囲の人がスマホを取り出し、パシャパシャと写真を撮り出し、口々に『尊い!』などと言い出し余計に騒がしくなってしまった。
俺としてはこのぐらいなら許容範囲であり、かつ文化祭と言うこともあり煩くいうつもりは無いのだが、目の前の二人が不快に感じるなら注意しなければならない。
そう思い二人の表情を伺って見ると、意外に二人は表情を変えていなかった。……いや、日比谷副会長は心底嫌そうな表情を浮かべているのだが、それは俺の顔を見た時からなので、周囲の女子達の行動が原因では無いだろう。……そうすると俺への嫌悪感が周囲の女子たち以上ということになるので、俺はこのことを考えることをやめた。
「二人とも休憩ですか?」
俺は出来るだけにこやかな表情を浮かべ話しかける。その瞬間『美少年!』との声とともにシャッター音が一際高くなった。
「はい。絢爛の文化祭は色々な催し物があって楽しいですね」
同じように笑顔で言葉を返してくれる田町君。彼のその笑顔に周囲は『ショタ!』という言葉が飛び交った。……彼女たちはもう少し自分の欲望を抑える努力をした方が良いのでは無いだろうか?
「フン、余裕そうな態度だが、今度こそ俺たちは貴様に勝つぞ。こんな所で悠長に休みをとっていて良いのか?」
挑発してくる日比谷副会長。それに対する周囲の反応は『ツンデレありがとうございます!』である。コイツら実は何でも良いのでは? と彼女たちの性癖について疑問が出てきた。
「それはそちらも同じでは?」
「残念ながらこちらには他にも多くの優秀な男子が在籍している。お前以外の男にはそうは負けん」
俺は両校の男子を頭の中で比較してみる。
「おっしゃる通りだな!」
「……お前には仲間を信じると言う言葉は無いのか?」
日比谷副会長は呆れた表情でそんな事を言ってくるが、自分所の生徒会長を酷使している人に言われたくない。
「でも二人とも楽しんで貰えてるようで、絢爛生徒会の一員として嬉しく思います」
「……確かに。合同で文化祭を行わなければ、この様な多種多様の催し物に触れることは無かったな。新しい文化に触れるという意味合いでは、まさに文化祭と言えただろう」
……これは賛同してくれているのだろうか?
「良い文化祭になったって言ってるんですよ」
と俺の疑問を感じたのか田町君が小さな声で教えてくれた。なるほど日比谷副会長も初めて会った時に比べると随分丸くなったものだ。おそらくこの変化は良いものなのだろう。
「じゃあ俺はもう行きます。二人とも楽しんでください」
そう言って二人と別れる。時間を確認すると、ちょうど舞澄さんと八千草さんの演劇部コンビから観にくるように言われていた劇の始まる時間が迫っていた。
俺は急いでその劇が行われている体育館まで急いで行くことにする。
どうやら一年生ながら彼女たちも出番が多い役柄を貰ったとのことで、随分と張り切っていた。
……魔法少女の役柄に悩んでいた頃が懐かしく思える。今回の劇は身分差のある二人の恋物語らしいが二人の役どころは教えてくれなかった。しかし頑張って練習をしていたことは知っている。その努力に見合う成果を得られるというのはやはい素晴らしいことだと思う。
努力が必ず実るかはわからないが、その努力が彼女たちの力になることは間違い無いだろう。
改めてそう考えると、玉の輿を狙う俺の存在が非常にゲスく感じるので、この思考はゴミ箱に捨てることにする。……いや俺は玉の輿のために自分磨きを怠っていないので、俺は努力家だと言っても過言では無い。そう考えるとやはり俺の努力は報われるべきだろう。
よしイケる! 俺はそう結論づけ、劇が行われる体育館に足を踏み入れた。




