連絡
『つらい……( ノД`)…』
もうすぐ文化祭だというある日に、俺のスマホへとこんなメッセージが入ってきた。
こんな顔文字つきで弱音むき出しのメッセージを送ってくる知り合いは一人しかいない。
「どうしたんですか? っと……」
俺は清明男子高校生徒会長、白銀昴にそう返した。
『人手が足りないです』
『いやいや、お宅の学校執事候補一杯いるじゃないですか』
清明の生徒達はかなりやる気になっていると、電話で話した前頭から聞いている。当の前頭からも『やるからには秦野くんにも勝つ気で行くよ』とこれまたやる気に満ちた言葉を貰ったところだ。
『執事は一杯。裏方いない(*_*)』
『へー。何人ぐらいでやってるんですか?』
ポチポチとメッセージを打ち、送るとすぐに返事が返ってきた。
『……今の所、俺、だけ』
バカなんだろうか?
『そして奴等は料理は出来立てが一番旨い! 絢爛に勝つためには出来立ての料理を出す必要がある! とケータリングは認めない模様。しかし調理は俺に丸投げしてきた。控えめに言って地獄です』
バカだな。
『他の人にも生徒会長権限で仕事を振ったらどうですか?』
『ハハハッ( ´∀`) もう試した。結果、包丁は怖くて満足に食材を切れない。火傷は肌に悪いからコンロに近寄りたくない。そもそも裏方は嫌だと泣き出した。地獄かな?(´;ω;`)』
……エリートとは一体? もしかして案外、楽に勝てるかも知れない。
『何とかケーキのケータリングだけは認めさせた。そっちはどう?』
『順調です。こっちは裏方に女子がいますから。スムーズ仕事の割り振りが出来てます』
『うらやましい……( ;∀;)』
『まぁまぁ、執事の方はどうですか?』
『そっちはかなりレベル高いものを見せれると思う。俺に裏方丸投げしてるだけあって。日比谷が指導にも精を出して、良い仕事してる』
どうやら文化祭では白銀会長が馬車馬の如く働くみたいだ。しかしその分、本命の執事は上手くいっているのか。
でも喫茶店なので、料理が出てこないと不満が出てきそうだが、その辺は大丈夫だろうか?
とは言え、よその学校のことにあまり口出しはできない。第一それに関しては白銀会長もわかっていることだろう。
となると、うちのクラスの出来が重要なのだが、いかんせんうちの男子たちはそう言った出来映えよりもいかに自分が気持ちよく振る舞えるかに重きをおいている性格である。
とてもではないが、執事という枠組みで勝てる気がしない。
なんと言うか、うちのクラスは執事喫茶とい言うよりも、俺様系ホストクラブと言った方が良仕上がりだ。
しかし、正攻法で敵わないのだからむしろ、この路線の方が良いだろうと思っている。お客さんからしても似ている物が二つあるよりも違う物が二つあった方が嬉しいだろう。
そうだ、そのはずだ。……そう思わないとやってられない。
なんたって奴らは自分の接客が正しいと信じきっている。どこから湧いてくるんだその自信。
しかし、怪我の巧妙ではある。単純な売上比較で文化祭の順位は決まらないが、どれだけ売上が出たのかは、一つの目安ではある。
そして向こうは軽食の類いに不安がある。
……まぁ、文化祭の執事喫茶に食いもん求めてくる人がどれだけいるのかという問題はあるのだが……。
仮に自分が客としていくならば、やはりお目当ては高校生の執事となるだろう。
むしろそれが、良ければ後は蛇足な感すらある。
うちのクラスは良家の女子も多いため、喫茶店で出す紅茶の茶葉やコーヒー豆にもこだわっていると連絡を受けているが、お客さんがその違いに気がつくかどうかはわからない。
その逆に清明の執事喫茶は男の白銀生徒会長、自ら手を振るった男の料理である。そこには素材以外での付加価値が生まれることだろう。
……ではうちのクラスでも男が手料理を作れば良いのでは? と考えるところだが、生憎とこちらも料理をできる人材がいない。俺は簡単な料理なら作れるが、男子王の肩書きを持っている俺が裏にこもるのはいかがなものか?
清明というブランドに対抗できる名声を使わないのは、さすがにもったいない。
と、色々と考えてはいるのだが、結局のところ自分達のポテンシャルを発揮するしかないというのが、結論なのだろう。
取り敢えず、うちのクラスは大人の人向けに、ピンドンでも用意しておくべきだろうか?
「秦野君、ミーティングを始めーー、何か悪いことを考えていないか?」
俺がそんな事を考えていると、真田生徒会長がジトッとした目を向けて来た。
「そんな……悪いことなんて考えていないですよ。ただうちのクラスの喫茶店を、どう盛り上げようかなって、考えてたんですよ」
「フム、そうか……。それは不躾な目を向けてすまなかったね。ちなみに良い考えは浮かんだかな?」
「そうですね……。大人のお客さん向けにドンペリのロゼでも置こうかなと」
そう口が滑ったら、その後正座をさせられ、コンコンと説教と常識について説かれてしまった。




