文化祭準備
このところ、文化祭の準備を整えるため、学校へ来て生徒会の仕事を手伝っているのだが、何故、高校の生徒会の仕事がこんなにも多いのか。確かにこれだけ仕事をこなせるようになれば、責任感や自主性、それに加えて判断力、決断力など社会に出たときに必要となるであろう能力がついてくるだろう。
しかし、やはりこう思ってしまうのだ。教師の仕事、振ってないだろうかと……。
そんな事を俺は去年の文化祭で使われた大量の備品を前に考えいる。
とは言えこれがこの学校のやり方だと言うのなら仕方がない。いくら働きたくない系の男子と言えども仕事を割り振られたらキチンとこなすのがこの俺だ。
……まぁ前世のブラック企業と比べれば天国なのだけれど。
俺を追い込もうとするならこんな物では足りない。少なくとも引き継ぎをしないで前任が消えたうえ、資料が全くないなんて状況じゃないだけマシだろう。……比較対象が大分とおかしい気がする。
俺は確認できた備品を紙に黙々とチェックしていく。
「結構な量があると思うけどそっちお願いするねー」
「はい」
「じゃあ私はこっち側をしてからー」
一緒に作業をしているのは、副会長の一人である芦屋先輩だ。慣れた様子でテキパキと作業をしていっている。
「夏休みなのにかなり仕事あるんですね?」
「そうだねー。うちの文化祭は学校行事の目玉の一つだからねー」
「そんなに盛り上がるんですか?」
「盛り上がるよー。うちの学校、催し物に順位をつけるからね。みんな頑張って上位狙っていくから」
「順位? 売り上げとかで決めるんですか?」
「売り上げも一つの指標でもあるけど、それ以外にも質や動員数とか、生徒にわからないように学校側が採点する人を紛れ込ませてるんだって」
「へー。上位入ったら何か良いことあるんですか?」
「もちろんあるよー」
芦屋先輩は手を休めずに教えてくれる。
「上位に入った団体は、それだけの催し物を作成できたってことだから、内申点も上がるし、大学への推薦にも有利になるよ。それに食堂の食べ物が無料になるチケットが順位に応じて配られるの」
「ほう……」
この学校の食堂は安い物から高級な物まで幅広く揃えているから、食欲旺盛な高校生としては嬉しいだろうな。この世界の女の子は健啖家が多いから余計にだろう。
「それに、メディアも来るからそこで目にとまって商品化とか商業デビューとかもあるよー」
「なるほど」
前世の文化祭とは比較にならない。学校行事なのに規模が全国レベルになっている。そりゃあ皆、必死に取り組むはずだ。下手な物を作って、それがテレビに流れでもしたら恥ずかしいどころじゃない。それも他の物が素晴らしいほど比較対象として情けなくなるだろう。
「だからそれを支える生徒会の仕事もミス無くしなきゃいけないから仕事が多くなるんだよね」
確かに各種許可を取るために、役所などに出す書類も生徒会が作成している。
「それに今回は清明との合同だから、警備会社にも頼まないと駄目だしー。もし彼らに何かあったら……」
そこまで言うと芦屋先輩は考えたくないと言わんばかりに顔をブルブルと振った。
「と言うように文化祭を滞りなく進める為には、こうした下準備をキチンとしなければ駄目だから一生懸命しようねー」
「はい」
にこー、と笑いかけてくる芦屋先輩にこちらも笑みで返す。
……しかし文化祭って順位が決まるのか。
「芦屋先輩」
「何ー?」
「その順位って全部発表されるわけじゃないですよね?」
「うん。上位だけだよー」
なるほど、とすると清明の彼らは自分達の催し物が上位でなかった場合、プライドが痛く傷つくのではなかろうか?
白銀会長に聞いたところ、彼らの今までの文化祭は展示が主だという。さすがにそれではいくら男子が発表しているとしても、上位は取れないだろう。
この学校の生徒はそこまで甘くはない。
「その事って、清明の生徒会にはもう話してるんですか?」
「清明の?」
芦屋先輩は唇に指を当てて少し考えてから答えてくれた。
「んー、まだだねー。そこまでの具体的な話には進んでないし。清明の催し物を含めるかも決まってないし」
「なるほど」
しかし、清明を含めないなら含めないで、清明は怒りそうな気がする。
よし、ここは一応情報をリークしておこう。別に知らせなくても良いものだが。どんな催し物にするかで揉めているらしいので判断材料にはなるだろう。
おそらく彼らの高いプライドは敏感に反応し、自分達も含めろと言ってくるとは思うが……。
しかし清明男子高校は非常に結束が固い学校だから、彼らが一位を狙ってきたらそれは良いものが出来るだろう。そう考えると執事喫茶は話題性、売上、集客とも見込める素晴らしい提案だったのではなかろうか?




