三人の話し合い
詩乃の笑顔を受け、苦々しいする柚香と雅。いくら男子を守る必要があると言っても、乙女にだって苦手な物は存在する。今回のそれが、お化けや幽霊なだけだ。
しかし詩乃の言うとおり、自分達は一蓮托生。協力し合う必要がある。……まぁお互いがお互いをタ出し抜こうとしている事実はあるが、それはそれというやつだ。
「クッ……わかったよ。まぁ冷静に考えれると、全員で行けば幾分恐怖心も和らぐだろうし」
「そうですね。みんなで行けば怖くない!」
雅の言葉に同意し、柚香はムンと気合いを入れる。
「それで私達に聞かせる話はそれだけかい?」
そうだったら自分も部屋に向かうが、と雅は確認すると、詩乃は笑顔でそれを否定する。
「ううん。むしろ話としてはこっちが本命かな?」
「むっ?」
「うん?」
では一体何の話だろうかと、二人は首を傾げた。詩乃はそんな二人を見て、大きなため息を吐いた。
「はぁ……二人はしおりをちゃんと見た? せっかく作ったんだからキチンと見てよ」
そう言うと詩乃は、しおりを取り出し柚香と雅に見せた。
「ほらココ!」
詩乃はしおりを広げ、ビシッとある部分を指差した。詩乃のホッソリとした指先に示された文字を追うと、夕食後のレクリエーションと書かれていた。
「レクリエーション?」
「そう!」
「一体何をするの?」
柚香は未だ、詩乃が何を言いたいのか分からず、不思議そうに聞き返した。その柚香の言葉によくぞ聞いてくれたと言わんばかりの笑顔で詩乃は答えた。
「王様ゲーム!」
その言葉に柚香と雅はマジかコイツと言う顔をした。
「詩乃まさか……」
ゲームにかこつけて、琥珀に卑猥な要求をするつもりなのかと二人は戦慄した。しかし詩乃は、そんな二人の思いを笑い飛ばした。
「あはは、まさか!」
「あっ、そうだよね!」
「アハハ……」
三人はお互いに朗らかに笑いあった。ひとしきり笑いあった後、三人はピタリと笑うのを止め、真面目な顔で話し合った。
「……でも少しぐらいのスキンシップは……ねぇ……」
「……まぁ少しぐらいなら」
「むしろ無かったらおかしいと言うか……」
「って言うか王様の命令は絶対だし」
「何の命令が来るかわからないですし」
「うん」
「そうだね。そう考えると他の子が琥珀君を狙って、エッチな要求をするかも知れない……」
その言葉を聞いた詩乃は然り然りと首を縦に振った。
「うんうんそうだよね。だから……」
詩乃はごそごそと荷物をあさり、用意してきた道具を取り出し、言った。
「ある程度、私たちが場を整える必要があると思うんだよね」
「……なるほど……詩乃の言うことには一理あります」
「仕方がないね。琥珀君の為だ。うん、これは必要な事だ……」
そう言い、三人は邪気の無い顔で笑いあった。が内心では邪念まみれである。
その様子を、メイド服に着替えた詩乃付きのメイドである結が見た時、『また変な事しようとしているなぁ』とソッとため息を吐いた事に三人は気づかなかった。
◆◆◆◆◆
「さてと……」
部屋に案内された俺は、取り敢えず部屋の中を確認する。部屋には簡易な冷蔵庫も置かれており、中にはミネラルウォーターが入っている。まるでホテルの様な部屋だ。
……なるほど、しばらく過ごしても不便が無いように色々と揃っている。メイドさんによると、洗濯もしてくれるとの事で至れり尽くせりと言った所だ。
ベッドに腰かけると、柔らかいがしっかりと受けとめてくれ、俺はそのまま寝転んだ。車での長距離移動だったので、途中の道の駅で名物料理を買い食いしつつ来た、その為そこそこお腹も膨れているので、油断したらこのまま寝てしまいそうだ。俺はイカンイカンと気を取り直し、気分転換に景色を見ようとバルコニーに出る。
「おおうっ……!」
バルコニーから見えるオーシャンビューは凄まじく綺麗で、旅行に来た! と言う感じがすごくする。
……しかし男一人で女性に混じって旅行か。一緒に来た彼女達の将来性は、かなりな物だと思う。そんな彼女達に好意を寄せられてる、俺はかなりのリア充街道を走っていると言っても良いのではないだろうか?
まぁ他の男があまり異性に興味を示さないために、競争相手はいない様なものなのが現状だ。……もっともそれに甘えていては、自らの価値を落とす様なものだし、豊成さんにそんな俺を知られたら、一気に評価を下がる危険性もある。なんかあのお祖父さんのせいで難易度が上がっている気がする。……割と順風満帆と言えないのでは?
高みに行こうとすれば、相応の努力を必要とするのは前世でも、今世でも変わらない。世知辛い現実と言う奴だ。
……お金溜まったら、不動産でも買おうかな。人脈を駆使して良い物件を教えて貰い、目指せ不労所得!
俺は部屋から海を眺めながら、そんなとりとめも無いことを考えた。




