屋敷に到着
「皆様ようこそおいでくださいました」
そう言って深くお辞儀をしてきたのは、この別荘の管理を任されている年配の女性だ。そしてその後ろにはメイド達が並んで頭を下げている。先に言った詩乃さん付きのメイドさんである結さんから連絡を受けて待っていてくれたのだろう。
「しばらくお世話になるわね。斉藤」
「こんにちは斉藤さんまたお世話になります」
「久しぶりだね。また宜しく」
詩乃さんと以前来た事がある貴族組がそう言った後、俺達も続いて挨拶をする。斉藤と呼ばれた年配の女性はそれを笑顔で受け止めた。
「こちらこそ宜しくお願い致します。既にお部屋のご準備はできておりますので、まずはそちらでご休憩ください」
斉藤さんがそう言うと後ろで控えていたメイドさんの一人が、スッと前に出てきた。
「彼女が案内を致します」
「よろしくお願い致します。ではこちらへ……」
俺達がそのメイドさんについて行こうとした瞬間、詩乃さんが声を掛けてきた。
「あっ、一時間後にここに集合ね。この家を案内するから」
その言葉に斉藤さんが反応する。
「お嬢様、案内は私どもが致しますが?」
「ううん、いいの今回は私がホストだし私がやるわ」
「かしこまりました」
その詩乃さんの言葉に俺達には頷き、再度歩き出すが、柚香さんと南方院さんはそのまま立ち止まっている。俺は疑問に思い、聞いてみる。
「二人は行かないの?」
「ああ、私と柚香ちゃんは何回も来てるからね。部屋の位置は知ってるんだ」
「はい。勝手知ったる他人の家ってやつですね」
俺はなるほどと思い、特に気にせずメイドさんの後をついていく。
◆◆◆◆◆
メイドに連れられて、一緒に来た琥珀達が歩いて行く。その後、メイド達が詩乃達に挨拶をした後、各々の仕事へと戻って行く。そして残されたのは詩乃達、貴族子女だけとなった。
「……さて」
詩乃が玄関ホールに残った、柚香と雅へ顔を向ける。二人は詩乃から話があるからと言われこうして残っていたのだ。
「こうして二人に残って貰ったのは、一応伝えておこうかと思って」
「何を?」
柚香は思い当たる事がなく、不思議そうに首を傾げる。
「……いや本当に大したことじゃないんだけど、ほら、私達って肝試しするじゃない」
「うん」
「そこって最近、本当に幽霊がでるって噂らしいんだ」
「「えっ!?」」
「だからもし二人が琥珀君の前で情けない姿を見せない様に、その……連絡を……」
「いや、ちょっと待って! それ教えて貰った方が怖いんだけど!」
雅の言葉に柚香も同調するように首を縦に激しく振る。その言葉を聞いた詩乃は輝くような笑顔で言った。
「だよね!」
「「……えっ?」」
その言葉を聞いた二人は唖然とした表情を浮かべた。
「いやー私もそれを聞いてからすごく怖くなってー。やっぱりいるかも知れないより、いるって知った方が怖いよねー」
アハハと笑っている詩乃を見て、柚香と雅は理解した。『こいつ巻き込みやがった』と。
実際に幽霊が出なかったとしても、出るかも知れないと思っていたら、木々が揺れる様子や、動物が動く音を聞いて、それを幽霊と思ってしまうかもしれない。そしてそれらが恐怖を増強させ、みっともない姿を琥珀に見せるかもしれない。もしそれが一人だけだったら臆病な女だと琥珀に幻滅される。しかしそれが二人、もしくは三人だったらどうだろう? 木を隠すなら森の中、怖がる者を隠すならその人数を増やせば良いのだ。
「いやー私も言わない方が良いかなーって思ったんだけど、やっぱり同盟組んでるから情報共有は必要かなって」
「あ、あはは……そうだね情報共有は大事だと思う」
「ははは……詩乃ちゃんはキチンとしてるなー」
オノレ、と思いながらも二人は頰を引き攣らせながら同意した。ここで否定すると今後、その言葉を引き合いにだされ大事な情報を隠蔽される可能性があるからだ。
「なるほど、詩乃やっぱりこの情報は皆に伝えておいた方が良いんじゃない?」
「それも考えたんだけど……」
柚香の提案に詩乃は難しい顔をする。
「そうしたら琥珀君にも伝わるじゃない」
「うん」
「そうすると怖がった琥珀君が一番頼りにしそうなのは誰かな?」
「誰って……」
柚香の頭に一人の少女が浮かぶ
「……物理系少女」
「だよね。幽霊に拳が通じるかどうかはともかく、強い女の子に頼りたくなるよね」
強い女子に男の子は引かれるものだ。だからこそスーパーアーツは人気なのだ。
「……つまり」
「三人で我慢しようよ!」
詩乃はサムズアップしながらそう言った。




