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練られるデートプラン

「これ……いや駄目かな……じゃあコレで……」


 ブツブツと呟きながら西華宮柚香はクローゼットから服を引っ張り出しては放り出す作業に従事していた。しかし、いくら柚香が持っている衣類の量が多くても、やがて終わりが来るのは自明の理である。


 空っぽになったクローゼットを見た柚香はポツリと呟いた。


「……新しい服買わないと」

「ちょっと待ちなさい」


 制止をしたのは母親である柚木だ。随分と気合いが入った顔で帰ってきた娘に、何があったか事情を聞けば、今度の週末に琥珀君とデートをするのだと、顔を赤くしながら言うではないか。


 柚木も娘のデートが成功する事を願っているが、この狼狽え振りは如何なものだろうと思うのだ。柚香が持っている服の数は、さすが西華宮と言う量がある。それを片っ端から取り出しては放り投げると言う行為をすれば、あっと言う間に部屋が散らかってしまう。


 現に今、柚香が放り出した服を屋敷のメイド達が拾っては畳直している。しかしそのそばから柚香が『やっぱりさっきのが……』等と言い、畳んだ服を広げてしまうので全く片付く気配がない。メイド達に取っては終わりが見えない作業。さながら賽の河原で石を積んでは崩される行為の疑似体験をしていると言っても過言ではない。


「何かな?」

「はぁ、デートに向けて新しい服を用意するのは良いけど、一体貴方は何処へ琥珀さんを誘おうとしてるの?」

「………?」

「なんでそこで不思議そうな顔をするの?」

「えっ……と……」

「まったく……何処へ行くか決めて無かったら服だって決めれないでしょう。ドレスコードがあるお店と美味しいラーメン屋だと着ていく服だって違うだろうし」

「……うん」

「わかったら、取り敢えず部屋を片付けなさい。それからデートプランを考えましょう。フフッ安心すると良いわ。私は久慈さんを射止めて、今も独占してラブラブと言う実績があるのよ。少しは助けになれるわ」

「お母さん……!」


 キラキラした眼で娘から見られ、柚木も満更でも無い。その後部屋の片付けを終え、二人は仲良く屋敷の一室でデートプランについて話し合いを始めた。


「そうね。琥珀さんはこの間、雅ちゃんとデートをしたのよね?」

「うん。これが当日の二人の足取り」


 柚香が差し出した用紙には『重要』と赤い判が押されており、そこには、この間の二人のデートした場所や時間、そして二人の反応等の様子が記されていた。もしこれが琥珀に見られたらドン引きされる用紙だが、柚木はそれをなんら疑問に思うこと無く、手に取り目を通して行く。


「成る程、雅ちゃんは手堅く固めて行った。そんな印象を受けるわね。さすがデート慣れしてるだけあるわね」

「手堅い?」

「ええ、イベントを見に行って……この場合は美術館ね。ここは相手の興味によって場所を変える必要があるわね。その後ショッピングでプレゼントを送った後は食事へ。王道のデートプランね。……何故か食事に他の人もいるけど」


 最後の言葉を意図的に無視して柚香は問いかける。


「じゃあ私は違った事をした方が良いよね?」

「そうね、琥珀さんは気にしないかも知れないけど、やっぱり『この間と同じ感じだな』って思ってしまうもの」


 その言葉を聞き柚香は考え込み、ハッとした顔で思い付いた事を言った。


「ハイキングなんてどうかな? ホラ最近、軽い登山する男子がいるらしいし」


 良い事を思い付いたとホニャとした笑顔で提案する柚香。しかしそんな可愛らしい娘に対して母親たる柚木は冷酷に告げる。


「却下」

「ええっ! なんで!」

「当たり前でしょう。琥珀さんがハイキングを好きなら良いけど、そんな情報どこにも無いでしょうに。何回もデートに行く仲になったら誘っても良いかも知れないけど、最初のデートにそこを選ぶってお母さん、ちょっとどうかと思うわ。最悪、琥珀さんに『コイツわかって無いな』って幻滅されるわよ」


 あまりの酷評にガーンとショックを受ける柚香だか、それに構わず柚木は話を続ける。


「あのね柚香。貴方が琥珀さんを好きでいる事は良い事だと思うし、西華宮の家としても琥珀さんが相手だと申し分はないわ。でも魅力的な男性は人気なの。いくらでも相手がいるの。お金積んでも靡かないの。この一回のデートで振られる事もあり得るの」


 畳み掛ける様に柚木は言葉を重ねる。


「琥珀さんには東華院、南方院も誘いを掛けている中で、もし貴方だけ振られてみなさい。社交界が開かれる度に自分が好きだった男性が友人と仲睦まじくしている様を何度も見る事になるのよ」


 その様子を思い浮かべ、柚香は顔を青ざめさせる。


「じ、じゃあどうすれば……」

「やっぱり王道が良いと思うのよね」


 その言葉に柚香は首を傾げる。先程二番煎じは駄目だと言ったばかりではないかと。しかしそんな娘の様子を見て、柚木は軽く微笑み、言う。


「何も王道は一つでは無いわ!」

「そ、そうなの……?」

「ええ、デートにおけるもう一つの王道。遊園地よ!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 西華宮のお母さん最高だろ! この世の中で愛する男性と人生を歩んできたとか最高すぎる。
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