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恋は進む

『各所で話題の人物、Hがお忍びデート!?』


 朝、パンを囓りながらテレビを見ていると、こんなタイトルのスクープが出てきた。この朝のワイドショー、二人のレポートが順番にスクープを対決形式でスピーディーに発表していく人気の企画である。そんな人気の企画に、まさか一般人のデート事情流す程テレビマンも暇では無いだろう。恐らく芸能人の誰かだろうと思いつつ……いや、思い込もうとしつつテレビの続きを注意深く見る。


『この話題の人物H! 今や誰もが知る程の人気ぶりの人なんですが、なんと! このHがお忍びデートしていたとの情報が入ってきました! そのお相手も凄い! なんとこの国でも名高い資産家のご令嬢! もしかして結婚秒読みかとの情報も!』

『ええっ! そのHさんって……もしかしてあのHさん!?』

『どのHさんかは皆様のご想像にお任せします! しかしこのビッグカップル誕生の噂に各方面で俄に騒がしくなっています!』

『異議あり! そのお忍びデートですが、実はお友達との只のお出かけとの情報もあります。何故ならば後々に他の人物も合流したと情報も入っております』


 俺は静かにリモコンを手に取りチャンネルを変えた。……思いの外テレビマンは暇だったらしい。


「琥珀様、そろそろお時間ですが」

「ああうん、そろそろ行くよ」


 俺はマリアにそう言い家を出た。


「う~ん……」


 俺は学校へ行く道すがら、先程のワイドショーの事を考えていた。何故だか徐々に外堀を埋められていっている様な気がする。それが事実ならやっているのは南方院さんと言う事になる。既成事実を築き上げ、後戻りが出来ない様にしていこうとしているのか? それ程、腹黒い人には見えなかったが、そこはやはり四大貴族と言う事か。


 ……しかし、もしそう考えて状況を動かしているなら、この場合相手が悪いのでは無いだろうか? 我が事ながら客観的に分析してみる。何故なら俺は、周りがどう熱狂していようとも嫌な物は嫌と言える人物だからだ。仮に大勢を巻き込んだフラッシュモブで告白されたとしても、相手の事を好きではなかったら簡単に断ることができる。もっと言えば鼻で笑って蔑んだりする事も余裕である。そしてその後の相手の自棄になった姿を見ながら一杯やる事もできる。


 ここまで大きくなったからには、テレビで放送されなくても結果は知る人には知れるだろう。それは彼女の傷になりはしないだろうか……。と思ったが、そう言えば南方院さんは既に失恋しまっくている人だった。それが一人増えた所で痛くも痒くも無いと言う事か。……成程、捨て身になる貴族……怖い物なしだな!


 そんな事を考えているといつの間にか教室についていた。


「おは――」

「やぁ秦野! おはよう!」

「おはよう秦野! 今日も格好いいな!」

「フフフッ秦野、おはようだね」


 男子達から今までに無いぐらい爽やかな挨拶をされた。コイツら絶対、俺のニュースを見てのこの笑顔だな。俺の晒し者になってるのが嬉しいんだろう。コイツらの性格の悪さには開いた口がふさがらない。


「ちょっと福島君達退いて……」

「な、なんだと僕にそんな口を聞くなんて!」

「ひ、酷いんじゃないかなぁ」

「クッ! 屈辱だ!」


 グイッと福島達を押しのけて、現れたのは委員長……もとい三島さんだ。どうやら体の調子は戻ったようだ。


「おはよう三島さん。体はもう大丈夫?」

「うん。ごめんなさいこの間は迷惑掛けて……なんで季節外れのインフレエンザに掛かったあげく、肺炎になんか……」


 ……どうやら俺の予想以上に調子を崩していたらしい。


「いや、病気だったらしょうが無いよ。でも治って良かったよ。うん。」

「ありがとう。……でもそんな事より秦野君結婚するって本当ですか?」

「いや、しないよ」


 第一、まだ結婚できる年齢になっていない。


「ほ、本と……」

「「「しないの!?」」」


 ホッとした三島さんとは逆に驚愕の表情をした男子達。三島さんはそんな男子達をグイグイと押し出し、話を進める。


「そうなんだ、良かったー。テレビでも秦野君が結婚するみたいなニュースがあったし、男子の皆もそれで盛り上がっていたから……」

「ホウ……」

「それなら良かったの。じゃあ私は席に戻るね」

「うん」


 ウキウキした様子で席に戻る三島さんを見送り、俺も自分の席につき一息つく。すると間をおかず、詩乃さんと柚香さんが教室に入ってきた。


「おはよう琥珀君、この間はありがとう」

「おはようございます。この間は邪魔しちゃってごめんなさい」

「ああ、おはよう」


 いつもなら一言、言葉を交わしたら二人とも一先ず自分の席につくのだが、今日は何故か柚香さんがそのまま俺の前にいる。その様子に先に席に着いた詩乃さんも不思議そうに小首を傾げている。


「どうしたの?」

「……琥珀君。今度、私とデートしてください」

「えっ……あっはい」


 柚香さんは大胆にも朝の教室とい場所で誘いを掛けてきた。恥ずかしそうに顔を赤くし、ギュッと眼をつぶりながら誘ってくれた。柚香さんの小さな拳も堅く握りしめられ緊張してした様子が見て取れる。その様子に俺は思わず頷いてしまった。そしてこのやり取りにクラスの全員が唖然としていたのが印象的だった。


 ……しかし最近俺のリア充具合が凄いな。

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