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登校(高校)

 あれから入学式は行われ、少しざわついたが厳かに進行し無事に終わった。

 何事も無くて良かったよ。

 俺が入場した時、マリア以外の人達も一斉に写真を撮っていたが、まぁ許容範囲内だろう。


 駅のホームで電車を待ちながら今日のことを考える。

 今日は丸一日使ってのオリエンテーションだ。

 一限目にホームルームで自己紹介などをして、残りはこの広い学校を案内され、各施設を回り、その後部活の紹介をされるのである。


 ……部活か、何か入るかな。やはり高校生活、部活で青春と言うのも捨てがたい物がある。

 前世(まえ)は野球部に入っていた。結構強くて県大会ベスト16にも入ったことがあるものだ。


 しかし、この世界では男性の人口が少なく、また男性自身も積極的にスポーツにのめり込む事がないので、男性のチーム競技という物はほとんど無い。個人競技のスポーツなら大会とかも開かれているのでそちらの方を考えても良い。


 さて、どうするかと考えていると、電車が来た。

 朝の電車はやはり混んでいるので、当然のことながら男性専用車両に乗り込む。

 早めの時間に家を出たので、車両には数人しか乗っていない。


 もう少し時間が遅ければ、もっと乗ってるんだろうな。

 この線には清明男子学校へ通う生徒も使っているので、それなりに電車の中は埋まるだろう。


 まぁ、快適で良いけどな。


 スッと目を隣の普通車両に向けると、ギッチギッチに込んでいる。

 まるで朝の山手線みたいな感じである。すし詰め状態と言うやつである。

 それを快適な男性専用車両の座席に座り見ていると、少し悪い様な気がするが、それよりも朝からあの状態にならなくても良い事に、大変気分が良い。


 男に生まれて良かったものだ。

 しみじみと感慨に耽っていると、駅に着いてドアが開く、すると清明の制服を着た生徒が数人、電車に乗り込んでくる。

 彼らは清明男子学校の制服……、黒いセーラー服に身を包み優雅に歩いてくる。


 男に黒いセーラーか、似合わないことにも程が有るな……。

 でも元々軍服だから、おかしくは無いのか? いや、でもスカートだしな。


 そんな事を考えていると、俺の存在に気がついたのかこちらを見てくる。

 何だろうと思っていると、話し声が聞こえてくる。


「絢爛の生徒か……」

「あそこって金で男の生徒買ってるんだよな?」

「ああ、俺も絢爛の人から話だけは聞いたけど、要は金をあげるから絢爛に来いって話だったよ」

「なんだそれ、最低だな!」

「ああ、その話を聞いて、ふざけるな! って言ってしまったよ」

「そうだよな、それが普通の反応だよな」


 そこまで話すとそいつ等はこちらを侮蔑の目で見てくる。


「じゃあ、あそこのあいつは金で自分を売ったって事か……」

「ああ、男の風上にも置けないヤツだな」

「金で自分を売るなんて恥ずかしくないのかな」

「さあ? でも同じ男として、こちらが恥ずかしくなるな……」


 ……車内が空いているせいか、話し声が凄くはっきりと聞こえる。

 君たち陰口は聞こえないように言いなさい。

 と言うか、なじりすぎだろうに!


 俺はお金が貰えるから絢爛を進学先に選んだんじゃないよ! 設備とか大学進学へのフォローとか色々整ってるんだよ! だから選んだだけだ。


 ……確かにお金もらったよ、でもアレは言ってみたらくれたんだ、まさかくれるとは思ってなかったんだよ。


 ……嘘じゃないよ?


 しかしなるほど……、アレが清明の絢爛への認識なんだろう……。

 でも自分を売るとか売らないとか、どう考えても考えすぎなんだが、あいつ等の頭の中ではどんなストーリーが展開されているのか?

 アレか、援助交際みたいな感じか? これくらいお金くれたら行っても良いよ~、てな感じか? それを自分に照らし合わせてみると、




 …………アレ? あながち間違いじゃない! アレ?




 そんな考えに耽っていると、降りる駅に着いた。

 よし! わすれよう! 今日から新しい環境で過ごすことになるんだ。過去の事にこだわっていたら人生損をする。


 そう気持ちを切り替えて電車を降りる。 

 決して否定の言葉が出なかった訳ではない……。


 電車を降りると絢爛の生徒が多く見かける。おそらく同じ電車だったのだろう、あの凄い乗車率の車両で人混みに揉まれながらの通学ご苦労様です。


 駅から降りての学校への道程は、周りの生徒から注目はされたが、さすがに入学式見たいに大名行列になることは無かった。とても安心した。毎度あのような事になっていたら登校するのも嫌になってくるからな。


 ……そういえば、生徒手帳に校則が書いてあったけど、その中に男性の迷惑になることは禁止するって事が書かれてたな。そのおかげかな。なんにせよ少し安心した。


 教室に着くと、まだ時間が早いせいか二人の女子しか中にいなかった。


 しかしその二人も様子がおかしい。


 一人は頭を抱えて、うんうん唸っている。もう一人はそれは困った顔で慰めているみたいであった。

 なにがあったんだ? と思ったが朝の挨拶はきちんとしておく。


「おはよう」


 その言葉に、唸っていた方がバッ! 勢いよく頭を上げこちらを見てくる。

 こちらを見るその子は、目が大きくぱっちりとした美少女である。肩口ほどの茶色の髪をしたその少女はこちらに救いを見た様な瞳を向ける。



 ……何か用ですか?


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