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お隣様

 お隣さんの話をしよう。

 俺の家の隣に住んでいる人は、正直よくわからない人である。

 なんと言うか、挙動不審な人なのだ。それにいつも目の下にくまがあり、ふらふらな状態で見かけることが多い。

 一応見かけたら挨拶をするのだが、挨拶をする度に、何故かビクッと身体を震わすのである。


 コミュ症なのかもしれない……。


 しかし、いつも家に明かりがついているのは何故なのか? 一人暮らしの様だし働いていない訳はないと思うのだが。


 その謎なお隣さんだが、今目の前にいて、海鮮物を目の前に出している。

 その言葉を聞くと、おかしな行動をしている人だが、何てことは無い、ただのお裾分けに来てくれただけだ。


 ちょうど、マリアが買い物に出かけていたので、俺が対応していたのだが、目の前の女性……、お隣さまは菊水さんというお名前なのだが……、正直ひどい。


 濃い目の下のくま、髪はぼさぼさ、肌も荒れ気味みたいだ。顔の作りは良いのだが、恐ろしいほど残念臭が漂ってくる……。


 なにより、一向に目を合わせようとしない。


「ど、どぞ、じっ、実家から送って来たんです。一人でた、食べきれない……、ないので、お裾わけ……、です。いえ! もちろん! よろしければですが……、わ、私みたいな女から、その、受け取りたくないってことなら、む、無理しなくても全然大丈夫ですので……」


 卑屈すぎて気を遣うわ!


「いえ、ありがとうございます。喜んでいただきますね」


 発砲スチロールの箱を受け取り、中身を見てみる。

 箱の中には、海老や、ホタテ等の貝類、鯛等の魚介類がぎっしり入っていた。


 ……海の幸満載とても豪華である。正直言ってとても嬉しい。


「こんなに一杯、本当に良いんですか?」

「もももももちろん! です!」

「ありがとうございます」

「秦野さんに食べて貰えるなら、そそそそその魚達も喜びます! ハイ!」


 ……取り敢えず、もう少し落ち着いて貰えないだろうか。そして目を合わせて話をしろ。


「それでは、これで!」


 そう言い放つと凄い勢いで帰ろうとするので引き留める。


「あっ、待って下さい」


 俺の言葉に急いで帰ろうとする菊水さんが固まる。

 そして、さび付いた機械のようなぎこちない動きで振り返る。


「なななな! なにか失礼しましたでしょうか!」


 なぜここまで卑屈なのか……


「いえ、そうじゃなくて、頂くだけじゃ申し訳ないので、一緒に夕食いかがかなと思いまして」

「えっ!」

「あっ、無理にとは言いませんが……」

「わ、私如きが一緒に卓を囲んでも良いんでしょうか」

「……もちろんですが」

「私は明日死ぬかもしれない」


 縁起悪いこと言わないでくれますか。


「琥珀様、どうか致しましたか」


 買い物に行ったマリアが帰ってきて、玄関で立ちつくしている、俺たちの事を不思議に思ったらしい。


「いや、菊水さんにお裾分け頂いたんだけど、貰うだけじゃ悪いから夕食に誘ったんだよ」


 すると、マリアは箱に入っている海産物を見て、感嘆の声をあげる。


「これは、たくさん頂きましたね」

「うん、美味しそうだしね」

「では、早速夕食の用意を致します」

「おねがい。菊水さん、できあがるまで入って待ってて下さい」


 そう言い、菊水さんを家に上げる。当の菊水さんはキョロキョロしながら入ってくる。


「では、鯛は鯛飯に、他の物は刺身と七輪で焼いて頂きましょう」

「七輪なんか家にあったっけ?」

「はい、二つも有りました。炭もあります」

「なんで二つも……」


 あれか、母親が酒のあてにスルメでも炙ってたか……。


「鯛飯は少しお時間を頂きますが、もうすぐ洋子様もお帰りになるお時間です。ちょうどその頃にできあがると思います」

「確かにこの海老とか、炭火で焼いて塩を振るだけで十分美味しそうだ」

「はははい、焼いても美味しいですし、刺身でも美味しいですよ」

「あっ、すいません。今お茶をだしますから、ソファーに座ってください」

「ふゎ! すいません、ありがとうございます」

「お客様なんですから気を使わないで下さい」


 苦笑気味に言うと、顔を真っ赤に染めて恥ずかしがる。

 もしかしたら、男がいる家に上がって緊張しているのかもしれない……。

 そのままソファーに座るとカチコチに固まり、ぴくりとも動かなくなってしまった。


 ……死んでないよな?





「ただいまー」


 そうこうしている内に母親が帰ってきた。


「なんか美味しそうな匂いがする!」


 鯛飯の匂いに釣られてかそんな事を言いながらリビングに入って来る。

 そして、リビングのソファーで固まってる菊水さんを見て首を傾げる。


「あれ、菊水さんどうしたの?」

「ああ、お裾分け一杯貰ったから、夕食に誘ったんだよ」

「おおおお邪魔しています!」


 おお! 生きてた。いや当たり前だが……。

 母親の帰宅に反応した彼女に、思わずそんなことを思ってしまった。


「いらっしゃい、お裾分けありがとうね」

「いえ、そんな」


 とそこへ、マリアがやってくる。


「洋子様お帰りなさいませ。ただいま鯛飯ができあがりましたので、食事に致しましょう」


 そうして、お隣様と一緒の食事が始まった。


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[気になる点] >「七輪なんか家にあったっけ?」 >「はい、二つも有りました。炭もあります」 練炭自殺二人前かな? こころの健康相談統一ダイヤルはコチラ 0570-064-こころ
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