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母親との出会い

 備え付けの時計を確認すると、針は九時を回っている所だ。

 目の前には白衣を着た女医さんが目を覚ました俺を診察してくれている。


「……今のところは、異常がありませんね。レントゲンや、CTにも異常がありませんでしたので、念の為、二、三日様子を見て、それからから退院しましょうか。」

「あ、はい。」

「目を覚ましたことは、親御さんには連絡しておきましたので、そろそろ来られると思いますよ。」


 女医さん。……自己紹介を受けたところ、高階 南という名前の先生は優しく微笑み掛ける。


「すごく喜んで、すぐに来るって言ってましたよ。」

「そ……そうですか」


 自分の今までの態度を考えると、母親の気持ちは少し申し訳ないんだが……

 しかし、この病室広いだよな。テレビにパソコンは備え付けであり、それに加えてキッチンや、シャワールーム迄完備している。いったいどれくらいの値段なのか……。

 そんなことを考えていると、部屋のドアが乱暴に開けられる。

 そこに目を向けると、明るい茶色の髪をした、切れ長の目をした綺麗な女性が息を切らして立っていた。

 その女性は、俺を見ると目に涙を溜め、ベッドに座っている俺に抱きついてきた。


「よかっ! よかったよ~、もしかしたら、目を覚まさないじゃないかって、おもっ……思って! 心配したんだから!」


 そう泣きながら、抱きついてワンワン泣いている女性、傍目には二十代にも見える女性が、この俺、秦野 琥珀の母親、秦野 洋子である。


 数分後、ようやく泣きやんだ母親に、先ずは心配を掛けた事を詫びるために声を掛ける。


「心配かけてごめんなさい。お母さん。」


 その言葉を聞いた、母親は時が止まったように動きを止めた。まるで一体の美しい彫刻のように微動だにしない。


 俺が素直に詫びた事に対して、この態度か……、今までの俺の態度のひどさが思い浮かばれるな……、しかも記憶にある限り初めての母親呼びだからな。


「い、今、お母さんって……」

「うん、今まで酷い態度とってごめんなさい、こんなに心配してくれるお母さんを見て、今までの自分を反省しました。」


 ……さすがに疑われるか? すこしわざとらしかったか? 変に思われないだろうか? 今までの俺からすると豹変したとしか言えない様なことを言ったからな、どう思われるか心配だ。そんな心配をしていると、その言葉に母親は激しく反応した。


「ううん、大丈夫よ、それに今までだって良い子だったわ、それがすごく良い子になったってだけじゃない。今までのことなんて気にしなくていいのよ! 大丈夫! お母さんがあなたの全てを受け止めてあげる!」


 大丈夫でしたね、ちょっと引きました。正直何いってんだ、このアマと思いました。


 今までの自分の態度は絶対に良い子なんてものじゃないし……。だって黙って財布からお金抜いたことも、一度や二度じゃないよ……。


 この世界の愛はこれがデフォなのか? ……愛、重すぎやしないですか?


「そ、そう、ありがとう」

「それじゃあお母さん、別室で今後の事を話しますので、一緒に来て頂けますか?」


 今まで、俺と母親のやりとりをニコーとした笑顔で見ていた高階先生が声を掛ける。


「はい、それじゃあお母さん、少し行ってくるから、また後でね」

「うん、いってらっしゃい」


 いってらっしゃいの言葉が嬉しかったのか、元気よく、行ってくるね! と部屋を出て行った。

 その母親の姿をみて、大きく息をつく。とりあえず母親に俺が変わったって事はわかって貰えたか……。


 さて、これからのことを考えるかと思い直し、今の自分の状況を考える。

 今、俺は中学三年、そして今は九月の下旬だ。

 もうこの際、中学の評判はどうでも良い。高校をどうするかだ。今の第一志望は清明男子学校、この男が少ない世界においてなお、男子校を貫いており、この国アーヘンハイムでも有数の有名校である。この学校に入学する為に、アーヘンハイム全土から入学希望の男子が集まってくる。その為、倍率も凄く高い学校だ。

 まずここに進むのは止めよう。魔性の男を目指すのに男子校入ってどうするんだよって話だ。

 それにこの学校は、新入生に指導係のとして、先輩がつくらしいのだが、噂によるとこの指導係と新入生が恋愛関係に発展する事が少なくないらしい。





 ……みなさんわかりましたか? ええそうですね、ボーイズラブですね。バラの花が咲き誇っているらしいです。




 何その学校、絶対に行きたくない……




 まぁ、進路は中学校に行ってから先生と相談だな……。

 そう考え、その事は忘れ、近くにおいてあるリモコンを手に取り、テレビを付けチャンネルを回していく。

 バラエティ、ドラマ、クイズ番組、ニュース番組、様々な番組があるが、出演者のほとんどが女性であるが、たまに男性の出演者が出ている、ちょうどその内の一人、今お茶の間で大人気の男性のアイドルが映る。


 この世界にも男性のアイドルはいるが、正直いうとあまり容姿は良くない。

 しかし、男性というだけでちやほやされる世界だからか、どの男性アイドルも大人気である。

 そのアイドルの顔を見て、自分の顔をぺたぺたと触る、そして備え付けの鏡がある場所まで歩いていき、自分の顔を確認する。


 肩口にかかるくらいの薄い茶色の髪に、大きな瞳、鼻すじがスッと通った、涼しげな綺麗な顔をしており、神秘的な美しさが醸し出されている。

 

 そんな自分の顔と、先ほどのアイドルを比べてみても、やっぱり自分の方がかわいいと思う。

 それどころか女性を合わせてみても、この世界トップクラスじゃないかと思う。

 アイドルでも食っていけるかな? なんて考えも頭に浮かんでくる。


 いや、やらんけどね。


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― 新着の感想 ―
> 正直何いってんだ、このアマと思いました。 この主人公思ってたより口悪いな……
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