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隣の陣地

 なんだよ『弄ばれる女の気持ちで興奮する』って。ドエム最強説ですか?


「……まぁそれはそれとして、彼に思うことはあれど丁度、陣地が隣同士なんだ、どうせなら最後に決着をつけたいと思ってやって来たんだ」


 そんな俺の言葉に、先程まで妄想をしていたとは思えない程、引き締まった顔をした彼女は確認するように、そしてこちらの意図を探る様に眼をわずかに細め返答した。


「……それは同盟の申し込みと受け取っても?」

「俺は邪魔が入らないで雌雄を決したいだけだよ」


 ……彼女との会話のほとんどが嘘と言う事実を考えると、自分がかなりのクズになった気がしてくる。おかしいなもうちょっとスマートに行くはずだったんだが……?


「わかった。少し連絡を取ってみる」


 目の前にいる彼女は携帯を取り出し仲間に連絡をとりだした。

 ……待つこと数分、どうやら対応が決まった様だ。


「私達のコテージへ招く事となった。案内しよう」


 彼女はキリッとした顔で俺へ手を差し出した。俺がその手を疑問に思っていると彼女はこう理由を述べて来た。


「いやなに、いくら敵とは言え男性をエスコートするのは女性の嗜みだからな。……うん、なんと言うか……お手をどうぞ?」

「……つまり欲望のまま俺の手を自由に触ってねぶり尽くしたいと……」

「ち、違うぞ! そんな卑猥な事をこの淑女の代表と言われた私が考えるなど……!」

「顔が真っ赤だよ」

「なっ!」

「まぁ良いけど」


 やれやれと言った体で俺は差し出された彼女の手を握った。その時の彼女の輝いた笑顔は必ず放送されるだろう。


「……なるほどこれが恋人繋ぎ!」

「いやこれ普通の繋ぎかただし……。恋人繋ぎって言うのはこう……」


 相手の手を取り、指と指を絡ませ合うようにギュッと握りしめる。


「わふっ! いやこれはちょっとエロすぎ……! そんな王を目指してる君がそんなハレンチな……!」

「ハハハッ、そわな事を言って君の手は俺の手を握って離さないじゃないか」

「ち、違う! こ、これは……そう! エスコートをする為だ! 決して私が恋人ができたとか喜んでない!」

「へぇー。じゃあ普通の繋ぎかたにする?」

「このままでお願いします」


 彼女は先程の連絡していた時よりも真剣な表情で返事をしてきた。……この人達は真剣になる場所間違ってないだろうか?


 彼女と手を繋ぎながら清涼な森の中を散歩する。途中、珍しい鳥や虫などを見つけ二人ではしゃいだりしながら彼女達のコテージへと向かった。ここまでバトルロイヤル要素が微塵も無いが大丈夫だろうか?


 しかし安心して欲しいカメラマンさん。ようやく敵のコテージが見えてきた。一人危険地帯へ乗り込む勇敢な姿を映して下さい。

 ……まぁここで人質にでもなったらただの間抜けだが。


「そこで一旦、止まってください」


 丁度コテージの全貌が見えた所に女性が二人待ち構えていた。


「申し訳ありませんが……!?」


 待っていた女性達はここに来るまで離れる事が無かった手を見て眼を見開き驚愕していた。しかし隣の彼女は悠然とした態度で『エスコートは淑女の嗜み』と言い放っている。


「そ、そうですか。しかしその握りかたは些か問題があるような……?」

「フフン、何も問題は無いよ。君は初(うぶ)だな」

「……羨ましい」


 仲間内で何やら盛り上がっているが、この人達はここで何故ここにいるのだろうか? そんな疑問が顔に出ていたのか、一人がコホンと咳払いをし、俺へ説明をしだした。


「失礼、お待たせしました。ここで私達が待っていた理由は刃物等の危険物を身に付けていないかを確認させてもらう為です」

「身体検査する」

「はぁどうぞ」


 顔を赤く染めた彼女達は即答した俺をマジマジと見てきた。


「えと……触りますよ?」

「凄く調べるよ?」

「どうぞ、何も持ってないけど」

「んんっ……! では失礼します……」

「失礼する」


 それから必要以上に念入りに調べられ俺は解放された。


「……はい。何も持っていない事が確認出来ました。主の所へご案内します」


 眼を伏せながら彼女は申し訳なさそうに言葉を続けた。


「我が主からカメラの前で念入りに調べる様にと指示がありましたので……すいません」

「なるほど……」


 つまりこれから向かう先にいる男は俺に恥をかかせたかったのか。まぁさすがの俺も裸で阿波おどりをしろと言われたら恥辱に震えただろうが、少し触られる位なら何も問題は無い。


「気にしないで。調べられるのが君達で良かったよ」


 とまぁ、本音を隠した上で、さらに恥ずかしそうな笑顔を作り彼女達に向ける。


「これが天使と評判の……」

「噂は正しかった」


 好印象行けました? いざとなったら手を抜いてくれます?


 そして、彼女達に周りを囲まれ俺はこの陣地の主と出会った。彼はソファーに足を組ながらこちらを見下すような眼を向けていた。


「そこに座ると良い。何やら話があると言うことだが?」


 掛けている眼鏡を軽く指で押しあげながら言ったきた。うん、大丈夫、顔は知ってる顔は。……でもどうしよう名前が覚えていない。


 ……まぁ良いか。

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