再会
ホテルに入りそのまま会場に行くのかと考えていたら、柚香さんに”こっちへ来てください”と案内をされ一つの部屋に着いた。その部屋はやはりと言うか、広くそして豪華な部屋である。部屋には柚香さんのご両親が寛いおり、父親である久慈さんと母親である柚木さんがおり、二人は柔らかそうなソファー身を寄せ合いながらお茶を楽しんでいた。
「お父さん、お母さん琥珀君が来てくれたよ」
柚香さんが両親に声をかけると、こちらに顔を向け笑顔を向けスッと立ち上がりこちらに来てくれた。
「琥珀さんこんにちは、今日は息子の憂の誕生日を祝いに来てくれてありがとう」
先ず母親である柚木さんがその美しい顔に笑みを浮かべて歓迎してくれた。およそ高校生の子供がいるとは思えない若々しさである。今世の世界ではこのように年に見合わない外見を持つ女性は多いがその中でも一際だろうと思う。娘である柚香さんと同じ年齢と言われても不思議ではないのだから、これで人妻と言うのだからずいぶんと背徳的な結婚生活が想像される。
なんたって伴侶である久慈さんはダンディなおじ様なのだから、若い女性と色気のあるダンディおじ様との恋愛話なんて近所の小説家がネタにしそうな話である。…………だからこそ今世の文化にもの申したい! 男性のドレス着用はやめませんか? と。ええ、前回会った時もそうでしたが今回も久慈さんはドレスである。勝手な言い分であるが、俺の目から見てもダンディでかっこいい人がドレスなのは正直ギャップがありすぎて勘弁してほしい。……こうなったら俺がパーティとかでスーツを着ていき、男性はドレスよりもスーツと言う文化を根付かせるしかないか……、文化大革命である。……まぁ、かなり無理があると思うが。第一俺の姿もドレスである。どの口が言うのかと。そんな久慈さんも笑顔で俺を迎えてくれた。
「やぁ、東華院さんのパーティ以来だね。元気にしていたかい?」
「はい、この度はお招き頂きありがとうございます。柚木さんも久慈さんもお元気そうで何よりです」
「う~ん、堅いわねぇ。私たちの事は身内だと思ってくれて良いのよ」
「そうだよ、柚香とも随分と仲良くしてくれているみたいだし」
その言葉に釣られるように隣にいる柚香さんへ顔を向ける。そこには顔を紅く染めて下を向いている柚香さんがいた。うん、わかるよ。親のお節介って恥ずかしいもんね。いくらこの二人がいい人で親しげに接してくれても実際には一度しかあっていない人達である。身内と思って軽く接しろと言うのは無理がある。第一、近所のおばさんとかではなく貴族のトップ達である。それだけでも緊張するのが普通である。……とは言うものの、この世界の男の精神構造は俺の考えを軽く凌駕するので、もしかしたら初対面でも気安く接するのかも知れない。
まぁ、それはともかく先ほど名前が出てきた弟君……、憂くんはどこにいるのだろうか? 俺は部屋の中を見渡すがどこにも姿は見えない。
「あの、今日の主役である憂君はどこかに行ってるんですか?」
「ん、ああ憂ならトイレに閉じこもって出てこないんだよ」
「まったく、困ったものよね」
久慈さんは何でもないように言う。柚木さんも困ったと口にしているがまったく困った様子が見受けられない。それもそうだろう、だってこの人達さっきまでソファーでお茶楽しんでたもん。そしてトイレに閉じこもっていると聞いた柚香さんはそこまで行き、中にいる憂君に呼びかけた。
「憂、お客さんが来たからキチンと挨拶しなさい」
柚香さんが呼びかけるが反応は無い。柚香さんは続けて声をかける。
「憂も会いたがっていた琥珀君に来てもらったのよ。早く出てきなさい」
すると、少しだけドアが開いた。……どうやらこちらを窺っているらしい。どんだけ用心深いんだろうか?しかし次の瞬間トイレのドアが勢いよく開き中からドレスを着たかわいい子が飛び出てきた。
「お兄さんお兄さん! お久しぶりです! 今日は僕の誕生日に来てくれてありがとうございます! 姉様からお話を聞いていて前の優しいお兄さんだと思ってたんです。また会えて嬉しいです!」
トイレから出てきた憂君は俺に抱きつき全力で嬉しさを表してくれた。俺はそんな憂君に驚きながら、やっぱり以前の子が柚香さんの弟だったと言う推測が当たっていたなぁと思っていた。そして改めて憂君を見ると……、まぁ見事な男の娘である。知らずに接していたら絶対に美少女だと思う容姿である。今来ているドレスも驚くほど似合っている。
これは人気が出る! 俺はそう確信した。
しかしながら、この憂君は爆弾を落としてくれた。
「お兄さん! 僕キチンと言ったんですよ!」
「言った? 何を?」
「お見合いの相手にキチンと言ったんです。生理的に無理ですって!」
その瞬間、憂君を除く西華宮の面々から視線が突き刺さるのを感じた。
当然の如く全力で眼を逸らした。




