予定
勢いよく、いや、むしろ勢いしか無い女子に囲まれ、何か必死に訴えかけられているが一斉に喋ってくるから聞き取れない。取り敢えずコイツらには俺が聖徳太子では無いことを理解して欲しい。
「今すぐ静かにしないと一生口を聞かない」
あまりにも埒があかないのでそう口にしたら一瞬で静かになった。
「ここはドアの近くだし、邪魔になるから離れよう」
俺はそう言うと、さっさと自分の席に座った。俺が席に座ると机の前に一人の女子が立った。そして、その後ろにもそのまた後ろにも立っており一人の女子を除いて全員が規則正しく列を作り並んでいた。
俺はその列を見て、一番前にいる女子を見る。
…………握手会なんか開いて無いんだが。
「……」
「………」
「……………」
「………………」
なんでこの人黙ったままなんだろうか? んっ? まさか……
「喋って良いよ」
もしやと思い、そう口にするとどうやら正解だった様で直ぐ様喋り描けてきた。
「お早う! 結婚して下さい!」
「よし、わかった席へ戻れ!」
「いや、ごめんなさい。溢れ出る愛情を止められなくて」
「安売り過ぎないですか愛情!?」
「愛情は豊作です! じゃあ先ず自己紹介を……」
それから、この子は自己紹介と所属している部活を言って、是非部活の応援に来て欲しいと言って、次に並んでいる子に変わり、自分の席に戻って行った。……まさかこの子達全員自己紹介の為にならんでるのか?
もうすぐ授業はじまるぞ?
「やぁ、今日は良い天気だね」
「えっ、まぁ確かに……」
次の人は天気の話しから入って来た。セオリーかと言えばセオリーなのか?
「太陽は暖かく私たちを照らしてくれているが、私は君の温もりの方が暖かいと思うよ。どうだろう一緒に朝を迎えないかい?」
「ちょっと言っている意味がわからないですね」
どうやらポエマーらしい。
この子もこの一言の後自己紹介と部活の応援に来て欲しいと言って席に戻った。
なんだろう? 最初に変な挨拶を言う習慣でも出来たのだろうが?
「やぁやぁ、我こそは……」
どうやら武将らしい……。
ようやく全員の挨拶が終わった。ギリギリホームルームが始まる前に終わったが、男子が入ってきた時に、”休み明け早々派手にやってるじゃないか? フンッ!”とツンデレ風味の嫌みを言われてしまった。俺が何かをやった訳じゃないんだが……。
俺の所にやって来なかった子を見ると別の男子と喋っていた。俺は他の男子と女子の会話に興味を惹かれて聞き耳を立てて二人の会話に聞いてみる。
「おまえ秦野に自己紹介してないんだ?」
「も、もちろんだよ! 私は君に夢中だし!」
「へー、秦野よりも僕にね。なかなかわかってるじゃん。ご褒美にお昼一緒に食べてあげるよ」
「うわっ! 楽しみにしておくね!」
…………おかしいな? 男子が上から目線なのは当然だが、会話がまともだ。いきなり求婚や、ポエムを語ったり、武将ぽっく名乗りを上げたりしていない、普通の会話だ。何というか青春の一ページっぽい感じがする。男子も上から目線だが悪い感情を抱いていないんだろう楽しそうである。
それに較べて俺は……。
なんだろう顔も可愛いしスタイルも良い女の子と話しているのに、まったくと言って良いほどにドキドキしない。むしろその顔の良さが残念さをより引き立てているような……。例えるなら一流のレストランで一流の素材をアルバイト店員に調理させるかの様な残念さである。なんだろう凄く納得がいかない。
まぁ、一番納得がいかないのは楽しそうに喋っている女の子の周りにいる子達だろう。みんな死んだような空虚な眼をしている。目の前で仲良くしているのを見せられたら、周りはああなると言う良い例を見せて貰った気分である。仲良くしている当人達にとっては関係ないだろうがな!
納得がいかないとはいえ、試合の応援に来てくれと言われたので都合がついたら応援に行こうと思う。
俺が応援に行くことで気合いが入り部として優秀な成績を収める事が出来たら、学校の宣伝にもなるだろうし広告塔の役目を果たしていると言えるだろう。この場合はアレか? ”琥珀を全国へ連れて行って”とウルウルさせた眼で言えば良いのか? ……いやまぁ本気で行ったときどういう顔をすれば良いのかわからないから言わないが……。
しかしここで気を付けなければならないのが、応援に行くときには一人で行かなければならないと言うことだ。厳密に言うと詩乃さんや柚香さんと言った、女子の友達と一緒に行くことはである。好きな異性が彼女を連れて来ているのを見ると絶対にやる気がなくなる。そう考えると前頭なんかだと喜ばれるのか? しかしアイツはアイツで先輩とやらがいるからな……。俺はスマホに予定を入れていく入れ終わった予定を改めて確認すると結構忙しい気がするな。
そう言えば詩乃さん達、一組の女子は今二組にいるんだよな。
体育大会で二位だった一組の女子は、一組から出された後二組との入れ替えを望んだのだ。一番割を食ったのは二組の生徒だろうな。二組の生徒は今特待生のクラスで授業を受けているはずだし、男子もいない上に校舎も違うと来た。まぁそうは言っても一週間だお祭りだと思って楽しんで欲しい。




