弟はシスコン
シスコン描写があります。
カレンほどのいい女を他に知らない。
この自論を分かってくれるのは、リーリアぐらい。
カレンは一見性格がキツそうに見えるが、とても面倒見がよく頼まれたら断れない性格だ。正直、いつか絶対詐欺に遭うと思ってた。貢ぐ可能性も考えていた。だからまさか。来るのを楽しみにしていた妹エリエーデをキツイ言葉で罵倒しているさまを見た時驚愕した。直後に問いただせば、目を泳がせたあと答えた。
「エリエーデのためだもの……」
カレンほど妹には興味なかったが、それを聞いて即座に問い詰めた。エリエーデはあっさり吐いた。意味がわからなかった。挙句「カルロ兄様も協力してくださる?」と。全然可愛くなかった。カレンのが百倍可愛い。
そんな馬鹿げた作戦が上手くいくはずないと思っていたのに、何故か成功した。何故か。今ではカレンのが使用人から白い目で見られる有様だ。もういいだろうと辞めさせようとしたのに。災厄はすぐに入ってきた。
カレンがとある令嬢に嫌がらせを始めたと噂を耳にした。公爵家の情報網を駆使し、俺はカレンの情報いち早く掴んでいる。問い詰めれば、カレンは目を泳がせながら、
「ルルーシュ・ブレア様をいじめることになったの」
と。理由を聞けば馬鹿王子とルルーシュ嬢の接点を作るためらしい。なんてくだらない。しかしカレン。何故引き受けた。リーリア。どうしてその場にいなかった。後にこれはリーリアに「四六時中兄上の面倒なんか見てらんないわ!」と言われた。
ちなみにこれを機に気に入らなかったカレンの婚約を解消してやろうと父に談判したが、上手くいかなかった。ちっ。
そして接点を作った馬鹿王子は、うまく恋人にまで漕ぎ着けた。謎だ。
宮廷ドロドロ恋物語もどうにかして辞めさせようとしているうちに、また新しい噂が届いた。
とある騎士を追いかけ始めた。
理由を聞く前に、その騎士を敵と認識した。許すまじ。見たらすごい美形だった。でもカレン。俺のがイケメンだ。
理由を聞けば、
「マリーが」
マリーシア。
幼馴染ゆえ、腐れ縁が続く奴。あいつはヤバい。無自覚に人の心を抉る。気付いてないぶんタチが悪く、ぶっちゃけカレンぐらいしか友達がいない。
例の騎士はマリーシアの婚約者らしく、酷い女が近くにいれば私がいい女に見えると言ったとのこと。
ほおおおおおおぉぉぉぉぉぉ?
どうしてやろうかと笑う俺は、カレンの次の一言でその気が削がれた。
「友達のために頑張るわ!」
その意気込みと笑顔に、なんかもう色々いっぱいになった。
例の騎士はマリーシアにあっさり落ちたと聞いた。見る目のない男だ。
ちなみに。カレンは俺の問いに全て答えているが、それは俺の尋問が上手いからでけしてカレンの口が軽いわけではない。そもそもカレンの口が軽かったら、どの作戦の上手くいってないだろう。俺の問いただした内容を他に言ってない。カレンが頑張ってることを、邪魔できないから。
本当のカレンを知っているのは、俺だけでいい。いつまでも側にいればいい。ああ、なんで俺はカレンと血が繋がってるんだろう。カレンと姉弟であることは大満足なんだけど、結婚出来ないのだけが心底残念でならない。
「怖」
リーリアは俺にいつも言う。
「あんたみたいな弟がいて、カレン可哀想」
「どういう意味だ」
「そのまんまよ」
幼少からよく遊んでいたリーリアとは歳が同じこともあり仲がいい。俺とリーリアがそういう関係と思っている奴が多いらしい。
「あんたの嫁とかお先真っ暗だわ」
本気で嫌そうな顔をするリーリアに俺もうなずく。
「全くだ」
俺はリーリアに魅力を感じない。リーリアは評判の美人だが、俺はカレンのが好きだ。リーリアは異性というより同性の友人感覚だ。幼い時から一緒なせいだろうか。
しかし馬鹿王子に懸念する臣下の中では、俺とリーリアをくっつけ王位を継がせてはどうかとかいう話があるらしい。そんなことされたらカレンと離れてしまうので却下だけど。
今日もカレンは頑張ってる。正直あの演技力は本当に凄い。惚れ直した。