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悪役令嬢はお人好し  作者: 悠雨
第1章
6/18

慕う令嬢



私の名前はマリーシア・クラウン。侯爵家の一人娘ですので、謙遜するのもおこがましいほど大切に、大切育てられました。

そんな私は、今まで欲しいと願った物は全て手にしてきました。お父様もお母様も、なんでも与えてくれました。

夜会で一目惚れした騎士様を、婚約者にもしてくれました。

ナツキ・シュレイド様。白金の髪の美しい騎士様。私は一目で恋に落ちました。どうしてもあの方が欲しくて、私はお父様にお願いしました。幸いあの方とは家柄が釣り合っており、親同士もそれなりに良好な仲を築いておりました。なので婚約はアッサリと出来ました。

問題はそのあとでした。二人で会ってもナツキ様は、私をどう扱っていいのか分からないご様子でした。会話もなまならぬ状況で、私はとても焦りました。

所詮親の決めた婚約者です。もしナツキ様に慕う方が出来たら、解消されてしまうかもしれません。それはなんとしても避けなくてはなりません。私はこの方を愛しています。そしてもちろん、愛していただきたいのです。

どうしたらいいのでしょう。困った私は助けを求めました。幼馴染である公爵令嬢に。カレンディラ・ユシュアン。

呼び出した彼女は、親身に私の話を聞いてくれました。

「大丈夫よマリー。貴女は可愛くてとってもいい子だもの」

私の自慢は桃色の巻毛です。多くの人から愛らしいと褒めていただきます。しかしナツキ様は言ってくださいません。

何故ナツキ様は私を見てくれないのでしょう。私はこんなに可愛いのに。

カレンが柳眉を潜めました。綺麗なカレン。美人のカレン。家柄もよい。王太子の婚約者。しかしその王太子は違う方に夢中。なんて可哀想なカレン。

ルルーシュ嬢に辛くあたっても、誰が責められるというのでしょう。

ふと。思いました。

カレンが慰めを求めて、何がいけないのでしょう。

もしそれが友人の婚約者だとして。女性慣れしていないあの方が、女性に強引に振り回されたあと、優しい婚約者に労られたら。あの方といえ、私を見てくれるのではないでしょうか。


酷いモノ隣にあれば、よく見えるのではないでしょうか。


大輪でも毒のある花と小さくても可憐な花。また会って少しですがナツキ様は後者が好みかと思うのです。

突然思ったことですが、私は幸運です。大輪の花の役に相応しい方を私は知っています。

「カレン」

「なあに?」

首を傾げたカレンは、やはりとても美しいです。私は彼女の手を握りました。


「お願いがあるの」


長年の付き合いです。カレンがこの言葉に弱いことを、私はよぉく知っています。

「ナツキ様のファンになって」

「え?」

キョトンとしたカレンに、私は思いついたことを伝えました。カレンは難色を示しました。

「無理だわ」

「熱狂的につきまとってくれればいいの! それでナツキ様の心労を増やしてくれれば!」

「忙しい方に申し訳ないわ」

「私が癒すから問題ないの!」

それでも渋るカレンに、私は縋りました。

「今の傷心のカレンならナツキ様も邪険には出来ないわ!」

最終的に。カレンが折れたのはこの言葉でした。

「こんなこと、他の人には頼めないの!! 私のために、お願い」

カレンはいくつか条件をつけて、承諾してくれました。一つ。私と会う日の直前に突撃をかますこと。二つ。最初の出会いは私が一緒にいること。一つ目は、ナツキ様と私が約束した日にカレンに知らせることにしました。

そうして。ナツキ様とカレンを出会わせました。初っ端から、カレンはかましてくれました。強引にナツキ様の腕を取り、引っ張りました。美人なカレンに揺らぐか少し心配でしたが、ナツキ様はむしろ少し嫌そうな顔をしておりました。ちょいちょい私が労わりの言葉をかけると、疲れたように笑いました。その顔にも、きゅんとしました。

私の作戦は、見事に成功しました。

日々カレンの突撃に辟易してから我が家を訪れるナツキ様に、いたわり、労いをしました。次第に私の前では柔らかい表情になってくださり、ある時ついに、

「貴女が婚約者でよかった」

と満面の笑みで言ってくださいました。


今日も。

「マリー」

ナツキ様は私を愛称で呼んでくださるようになりました。

「ナツキ様」

笑顔で私の手をとって、口付けを落とします。その一連の流れはとても優雅で美しく、何度見ても見惚れてしまいます。

「会いたかった」

「私もです」


婚姻も、そう遠くはないでしょう。


私は今、とても幸せです。

今日もナツキ様がいらっしゃいます。約束した日を知らせる手紙を書き、召使いに渡しました。



1話ずつはみじかめです。

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