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正義の剣と死神の鎌  作者: 射月アキラ
第2章
3/16

01

 想像力は、力だ。

 強固な意志と集中力、さらにそれらを補助する象徴があれば、人々の想像はそのまま現象としてあらわれ、周囲に影響を及ぼす力となる。

 たとえば、火の象徴である杖を使った火球の精製。

 たとえば、風の象徴である剣を使った速度の上昇。

 それらの能力は魔術と呼ばれ、ヒトの発展と共にあった。大抵の場合、魔術の発展はそのまま人々の生活レベルの向上につながり、象徴に関連した知識の有無が貧富の分かれ目にもなっている。

 はずなのだが──強力な魔術的象徴を扱っているものの、レビは路地裏で生まれ育ったと言われても疑問を抱かないような姿をしていた。癖の強い赤毛の上に、深くかぶったつば付きの帽子。袖も裾も布があまった少年のような服をまとい、生気のない三白眼で無気力に周囲を見まわす姿が、町に暮らす少女たちとは明確な一線をひいている。

 野生に生きるネコと、ヒトに飼われたネコが相容れないように。

 他を信じず、疑いの視線を向け続ける彼女の瞳は──しかし、今日この日だけは煌々と光が灯っているようだった。

 目を向けた先にあるものは──刃物。

 黒いローブで全身を覆い隠した男が背負った、特徴的すぎる刃物だった。

 レビ自身の身の丈よりも長い漆黒の柄の先に、赤い三日月型の刃がある。「刃物」といえば、命を絶つ道具として「死」に連想しやすいものではあるが、男の背負う刃物はさらに、ひときわ強く「死」をイメージさせた。

 彫刻や飾り紐などの装飾は全くない。徹底的に機能性が重視されたことによって、分かりやすい骸骨などの彫り物がなされているよりもむしろ「死」と関連付けしやすくなっているような気さえした。

「……死神の鎌」

 思わず、レビは呟いた。

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