05
エイドの意志とレビの象徴が、組み合わさって魔術を発動する。
炎や風などの明確なかたちを伴うことなく、ただ「エイドにとっての正義」を貫くための魔術。レビの意志を奪い、体を乗っ取って正義を遂行させる魔術を。
迷いもためらいも持たず、レビは剣を片手に〈十三番〉へと突進する。風を裂いて繰り出した刺突は紙一重で避けられ、薙ぐように振った追撃すら潜りぬけられる。
当たらない。上下左右、背後にまわりこんでも当たらない。刺突、斬撃、牽制の蹴りも、回避直後を狙った拳すらも。
「変容のきっかけを与えにきた」
連撃を避け続けながら、〈十三番〉の言葉は淀みなかった。
エイドが〈十三番〉の乱入に動揺しているためか、口だけがレビの意志に従って切れ切れの言葉を紡ぎ出す。
「なに……言って……」
「意識を強く持て。自分に関わる選択を誰かに任せるつもりか」
流れるように続く声に、息のあがった様子はない。ひとつ間違えば死の危険性もあるというのに、鎌を手にとる様子もない。
「【十三番】が司る役割は、死だけじゃない。それに伴う再生と、物質界から霊界への移行、変容も含まれる」
首を狙った一撃は、上体を反らしただけで避けられた。血の一滴どころか、髪の一本すら散らすことができない。普段から相手にしているような者なら、何十回と殺せるほどには剣を振っているはずなのに。
じわり、とレビに恐怖心が湧きあがった。殺意を向けられるだとか、誰かを殺してしまうなんていう、感じ慣れた恐怖ではない。
〈十三番〉という個人に対する恐怖。必殺の一撃を回避し続ける男に対する恐怖。
そして──回避の間、目を合わせたまま一瞬たりとも視線を外さない金の瞳に対する恐怖。