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幽霊売ります

作者: SA10 in 佐藤

イベントで使用。朗読劇脚本 de す

男「あー、頭の傷がうずくぜ。旅行で遠くに来てみたもののあんまり

面白いところないなぁ……。おっ、なんか看板でてるぞ。なになに……幽霊売ります……? なんだよこれ。ちょっと入ってみるか」


 SEカランコロン


 OPTM FO


男「胡散臭い店だな」


店長「いらっしゃいませー」


男「うわっ! びっくりした……。あのー表の看板に幽霊売ってますって書いてあったんですけど……」


店長「ええ」


男「……幽霊を売っているんですか?」


店長「ええ、ええ」


男「……幽霊売ってるってどういうことですか?」


店長「ええ!?」


男「驚かれてしまった」


店長「お客さん幽霊知らないんですか!?」


男「いや幽霊は知ってますよ! こう足が無くって、空中に浮いて、うらめしやーっていうヤツでしょう?」


店長「……うん! お客さん古い! 流行おくれだね」


男「古いとかあるんですか!?」


店長「今の幽霊はちゃんと足もありますよ」


男「今の!?」


店長「そうですよ。お客さん、もしかして生まれて一度も幽霊見たことないんですか?」


男「そりゃあそうですよ。幽霊なんているわけがないでしょう」


店長「そんなこと言ってもねぇ。こっちもこれで商売してるわけだし……

    まぁまぁ座ってくださいよ。詳しくご説明しましょう」


男「えっ、いやそんな長居するつもりは……(座らせられてしまった……)」


店長「幽霊は古くから人のよき隣人として存在していました」


男「はぁ」


店長「我々はそんな人と幽霊のつながりを支援するものなのです」


男「あの、質問していいですか?」


店長「はい、どうぞ」


男「幽霊ってどうやってできるんですか?」


店長「……さぁ?」


男「『さぁ』って!」


店長「おじさん実は発生メカニズムよく知らないんだよねぇ。ただそこらへんに浮いてるやつ捕まえてくるだけだし」


男「そんなザリガニ採って来るみたいな仕事なんですか!?」


店長「そうだよ。竹ざおあればなんとかなるから」


男「竹ざおでとってくるんですか!」


店長「よく言われるように未練があると幽霊になってこの世に残るとは聞いてるね。まぁとにかく幽霊ってのは寂しがりやなんでよく人になつくのよ。そこが人気のポイントです。犬や猫とおなじよ」


男「人気って……。どこの層に人気なんですか……」


店長「んー。ナウなヤングに」


男「古っ!」


店長「……。古くないよ? ナウなヤングだから……」


男「そこはもういいですよ!」


店長「あっ、そう? まぁとにかく人気爆発。お客さん! どう? 一人

   買っていかない?」


男「すごくまずい響きに聞こえる……。ちなみに一人(?)いくらくらいなんですか?」


店長「五十万円から」


男「高い!」


店長「あ、大丈夫です。友達のウシジマ君のところでローン組めるんで」


男「それ借りちゃいけないところじゃないですか! ……というか何でそんなに高いんですか?」


店長「よく聞いてくれました。幽霊が長年愛される理由は実はここにあるんです」


男「……幽霊が愛されてるっていうのはどうかと思いますがどういう理由なんですか」


店長「お兄ちゃんはペットを飼うのに一生いくら必要か知ってるかい?」


男「ああ、そういえばよく知らないですね」


店長「一般的なペットである犬、猫でいうと、犬が3三百万円、猫が二百

   万円と言われているんだ。毎月の食費はもちろん予防接種などの医

   療費を換算するとこれくらいの数字になるんだね。安い餌にするとかどんなに節約しても百万円は軽くかかるんだ。これが生き物の命に対しての数字なんだよね」


男「おお……なんだかイイ話をしているな」


店長「だがしかし! ここが重要、よく聞いてよ! 幽霊にはなんと……維持費がかからないんです!」


男「おお!?」


店長「まず食費。幽霊なんでもちろん要りません。お供えするだけで十分の超エコロジー」


男「うん、まあそうだろうね」


店長「そして医療費。もちろん病気になんかかかりません。もちろん死ぬ

   こともありません。不慮の事故からの悲しいお別れとはお別れです」


男「うん、まぁ死んでるからね」


店長「しかも、夏は涼しく冷房要らず! 周囲の温度を下げ快適なサマーライフをお届けします」


男「夏は涼しいって事は冬はもっと寒くなるって事なのかな?」


店長「さらにはその人懐っこい性格から常にあなたのおそばに。夜には枕

   元に立っちゃうことも!」


男「それは完全にとり憑かれているよね」


店長「産湯から棺おけまでお付き合いいただけるライフパートナー! 寂しい独り身人生はもう終わり! お求め安いお値段五十万円で一家に一人、いかがでしょうお客さん!」


男「んー。よしいただきましょうって、おい!」


店長「……お客さん。ここまで言ってもまだ買わないの?」


男「買いませんよ。そもそもいい事ばかり言って信用できませんね」


店長「まぁ一応生き物……あっ死に物を扱うわけだからねぇ」


男「今『あっ』っていったな」


店長「あんまりストレスを与えると」


男「与えると?」


店長「呪い殺されますよね」


男「おい!」


店長「そりゃあねぇ。だってライオン怒らせたら食べられちゃうでしょう? それと同じですよ」


男「たとえが一般的じゃない! 日本でライオン飼っているのはプリンセス天功ぐらいですよ!」


店長「大丈夫ですよ。自慢じゃないですが、この件に関してはクレームがきたこと無いんですよ。安心してください」


男「ああそうですか……って、それって呪い殺されてるからでしょう!」


店長「まったく文句の多いお客さんだ」


男「文句も何も、そもそも僕は幽霊なんて信じてないと言ったでしょう。幽霊なんて存在しないんだ」


店長「あー。そういえばそんなこと言ってましたね。いいでしょう。実際目の当たりにすれば考えも変わるかもしれません。いくつかご覧入れましょう」


男「なんですかその小瓶?」


店長「この中に幽霊を閉じ込めてるんですよ。ビンの中をよく見てください。動いてるでしょう?」


男「……確かに、煙のようなものが動いてますね。いや、しかしんなものじゃだまされませんよ。ちゃんと実物を見せてみてくださいよ」


店長「もちろん。それじゃあ開けますよ。それ!」


  SE(幽霊登場)


男「うわあ!」


店長「最初にお目にかけたるこの女性。死に立てぴちぴちアケミちゃんです!」


アケミ「はじめましてー」


男「……」


店長「お客さん? 大丈夫ですか? 幽霊でも見たように真っ青ですよ」


男「そうだよ!」


店長「どうです。これで信用する気になりましたか?」


男「あ……うん……。確かに空中に浮いてるし半透明だし……これは確かに……」


店長「ね? 本当にいたでしょう。で、どうでしょう、こんなかわいいアケミちゃんとずっと一緒にいられるなんて最高じゃないですか?」


男「うーん、でもなぁ……」


店長「まったく煮え切らないなぁ。ねぇ? アケミちゃん」


アケミ「優柔不断な男はもてないよ?」


男「ええ……。幽霊にもててもしょうがないんだけどな……」


アケミ「なんでもいいからアタシを買ってよー」


男「誤解されそうな言い回しをするな!」


アケミ「でないとあたし……」


男「うん?」


アケミ「織田無道に……」


男「成仏させられるの!? ていうか久々に聞いたその名前!」


店長「在庫にも限界がありますからねぇ。売れない幽霊は残念ながら成仏してもらいうことになるんですよ」


男「そうなのか……それは可哀想……じゃない! 成仏するならそっちのほうがいいだろ!」


アケミ「えーなんかやだし」


店長&アケミ「ねー」


店長「ここでアケミちゃんのお悩み相談コーナー! さぁなんでもいいから悩みを話してごらん?」


男「なにを突然思いついたように……。あーそうだね。実は小さい頃に蒸発した母親がいてね。一回でいいから会いたいんだけれど、どうしたらいいかな」



アケミ「過去にも未来にも苦しむ必要はない。過去はもう存在しないし、

     未来はまだ存在していないのだから」


男「すごい事いってるけど、何一つ答えになっていない!?」


アケミ「今はこれが精一杯……」


男「もういいからしまってくれ……」


店長「お気に入りませんか? ごめんねアケミちゃん、ご指名キャンセルです」


男「キャバクラみたいなシステムだな」


アケミ「まじウザイんですけど。こんど会ったら呪い殺すかんな」


 SE(幽霊消える)


男「幽霊に喧嘩売られてしまった……」


店長「それはそうとしてどうですか? 実際にいるとわかって欲しくなっ

   ちゃたんじゃないですか? 幽霊」


男「確かに実際目の当たりにして、幽霊がいることは認めましょうよ。しかしあんなギャルに四六時中付きまとわれたんじゃ迷惑ですよ」


店長「うん、まぁなぁ、そうだよなぁ」


男「(不良在庫を押し付けようとしたのか?)」


店長「じゃあ次は少し大人しめの子をお見せしましょう。それ!」


 SE(幽霊登場)


キヨミ「(聞き取れない何かをしゃべる)」


男「……あれ? もしもし」


店長「キヨミちゃん? ほら、自己紹介しないと」


キヨミ「(聞き取れない何かをしゃべる)」


店長「……えーキヨミちゃんはこういってます『よろしくお願いします! 

   キヨミです! ちょっぴり恥ずかしがりやの18歳! 趣味は切手集めで特技はピアノです! 夢はアイドルになること! こんなアタシでよ ければ……』」


男「買わないよ! それ全部うそだろ! 趣味切手集めって! それ店長の趣味だろ! そしてさっきから僕を上目遣いでものすごい睨まれてるのがすごい怖いよ!」


店長「キヨミちゃんシャイだから」


店長&キヨミ「ねー(キヨミは野太い声)」


男「それは必ずやらなければならないんだろうか……?」


店長「さぁ恒例のキヨミちゃんの霊感お悩み相談コーナー! キヨミちゃんはそのずば抜けた霊感によってお悩みを解決します!」


男「恒例って……。 そうだね……、じゃあさっきの続きみたいなものだけど、僕の母さんは今どこにいますかね?」


店長「何々? ふんふん。  キヨミちゃんはこう仰せであります『スプートニクに乗って、宇宙に飛ばされたライカ犬のことを思えば、 貴様の不幸なんてちっぽけなモノだ。くだらん悩みで私の手を煩わせるででない』……と」


男「また良い事言ってるけど何一つ答えになっていない!? 口調変わってるし!」


店長「あっ、あと待ち人来る(きたる)って言ってます」


男「適当だな……ごめんキヨミちゃん。僕本当に怖いんだ、その人が殺せるほどの視線。ごめんなさい」


店長「あーキヨミちゃん残念。くず男のご指名キャンセル入りましたー」


男「今ひどい事言ったよね?」


キヨミ「……死ね」


 SE(幽霊消える)


男「なんだろう。心臓が冷たいよ」


店長「キヨミちゃんいい子なんだけどねー。『ガチ』過ぎて売れ残っちゃったんだよねー織田さんにたのむかー」


男「もう不良在庫であることを隠そうとしなくなったな……もういいです帰ります。さようなら」



店長「ちょ、ちょっと待って! あと一人だけ! あと一人だけ見ていって! お願い! 竹ざおあげるから!」


男「いらないですよ! ……まったくしょうがない。あと一人だけですよ。見たらすぐ帰りますので」


店長「ありがとう! うちもノルマが厳しくてね……それじゃあ最後だ。

   それ!」


  SE(幽霊登場)


母「どうも、はじまめして」


男「今度はまともそうな人だ。しかしおばさんだ」


店長「老いてなおなお輝きを放つミナコさん! 若い子では適わない熟年の……」


男「買いませんよ」


店長「お客さん冷やかしは困りますねぇ」


男「冷やかしはむしろそっちなんじゃ……。そういえば前の二人はあくが強すぎて聞いてませんでしたがあなたは何故幽霊なんかに? なにか心残りとかがあるんですか?」


母「ええ、実はとある事情で家を飛び出していしまい、それ以来家族に会うことも無く死んでしまいましたので、せめて分かれた息子にもう一度会いたいと……」


店長「おや、奇遇だね。お客さんも生き別れた母親がいるんだよね」


男「ええ、二十年くらい前に行方不明に……」


店長「そういえばミナコさんを連れてきたのも二十年くらい前だったかな。

    関西から来たとか言ってたよね」


男「関西!? 僕も関西から旅行で旅行で来てるんですよ! まさか……」


母「まさか……、いえ、息子は小さい頃、頭に大きな怪我をして傷跡が残っているはずです」


男「傷って、、僕にもあります! ほら! これ!」


店長「驚いたな……それじゃあ本当に」


母「そんなまさか……」


男「母さん……。母さんなんだね! !? 母さん! 体が……」


店長「消えかかっている……」


母「ああ……、私の未練がなくなってしまったのね……。せっかく息子に会えたというのに……。ごめんなさい、またあなたを置き去りにしてしまうわ……」


男「母さん! そんな……。なんとかならないんですか!」


店長「こうなってしまったらもうどうにもならないよ……。もう時間も無い、未練を残さないよう言うべき事は言っておきなさい」


 BGM(挿入曲) FI.


男「……僕は別に母さんのこと恨んじゃいないよ。寂しいことはあったけど仕方ないことだってね……。もう死んでたなんて確かに残念だし、突然すぎて何の実感もわかないけど……こうやって会えた。僕は元気だしもう大人になったよ。だから母さんも……母さんももう……!」


母「……大きくなったのね。もう何の心配も要らないわ……」


男「母さん! 体が……」


母「もう時間ね……」


男「そうだね」


母「……元気でいてね。ヨシオ……」


 BGM(挿入曲) FO.


店長「消えてしまった……。……しかし私もこの仕事を続けて長いがこんなことは初めてだ。今日この日のために私は仕事を続けてきたのかもしれない。実にいい物を見せてもらった。ありがとう」


男「……僕の……」


店長「えっ?どうしたんだい?」


男「僕の名前はタツヒコだよ!」


店長「はぁ!?」


 BGM(お気楽) CI.


男「くそ! まったくの別人じゃないか! 恥ずかしい事させやがって!」


店長「はは! そんなこともあるさ!」


男「よくあること? そうだよな! よくあることだよな! 猫から馬が生まれることくらいよくあることだ!」


店長「ちょっとどうしたんですかお客さん? いきなり怒り出して。 煮干食べます?」


男「いらないよ! くそ! 馬鹿にしやがって!」


店長「まぁまぁ落ち着いて……あんまり興奮しすぎるとポックリ逝っちゃいますよ? あっ、そしたらウチでお引取りしますけど……」


男「僕が死んだら真っ先にアンタを呪い殺すよ!」


店長「脅迫ですか? 訴えちゃいますよ?」


男「くそ! 馬鹿馬鹿しい! 二度と来ないからなこんな店!」


 BGM(お気楽) FO.

 SEカランコロン


店長「あっ……お客さん。最後にひとつ」


男「なんですか。もう商売文句は聞きませんよ」


店長「いえね、今回はたまたま勘違いで残念でしたが人には幽霊が必要なときがあるんですよ。私どもも一応、商売に対して矜持をもっていることはわかっていただきたい」


男「……わかりましたよ。確かに今回は残念でしたが死んだ人間に会いたい人もいるでしょう。その点では必要な仕事かもしれません」


店長「そう、私どもの商売は必要なのですよ。そして商売であるからには……」


男「あるからには?」


店長「成仏してしまったミナコさんの分の代金、五十万円、いただきます」


男「そんなわけあるか」


一同「ありがとうございました!」


 EDTM CI.


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