第二篇「告白」 24
絢子は話しながら、少しずつ昔へと戻っている様子だった。ゆかりの目には二七歳の絢子が見え始めていた。
絢子は松宮との青春の思い出を話し終えて、少し表情を曇らせた。
「あの人はね、本当は弱い人だったのよ」
いままで独り言のように話し続けていた絢子が、急にゆかりに語りかけた。
「・・・・・・・どういうこと?」
「・・・もし、今度の投稿に失敗したら、別れようって言い出したの。」
「・・・・・・・・・」
「もちろん、私にはそんなことを受け入れるつもりは無かった。だからその時は何も言わずに次の投稿を待っていたの。でもね・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・運命って、残酷なのよ。」
そう言うと絢子は、再び独り言のように話し始めた。
松宮から決意を告げられた後、自宅に戻ると留守電が入っていた。それを再生すると七年前に縁を切ったつもりだった実家からの着信だった。兄の声で、折り返し連絡するように吹き込まれていた。絢子は動揺し、一度は連絡しないと決めたが、やはり気になり受話器を取った。
『はい、もしもし』
『・・・・・・もしもし』
『・・・・絢子か・・?』
お店の閉店時間であったため、電話に出たのは幸いにも兄であった。
そこで兄から告げられたことは、あまりにも理不尽で信じられないことだった。
時代の流れからか、老舗料亭は経営が厳しくなっており、絢子の実家も例外ではなかった。それどころか、倒産寸前のところまで追い込まれているらしい。そこで、ある程度の支援を望める相手とのお見合いを絢子に用意しようとしている、というのだ。
七年たっても、父も母は相変わらずだ。
絢子は憤慨し電話を切った。そして、泣いた。
人生というのは、なぜこうも、上手くいかないのか。
松宮の話と、兄の話。二つを交互に巡らせながら、絢子は現実を考えていた。