第二篇「告白」 19
店主は、松宮に相談を持ち込まれるようになっていた。
『女性を振り向かせるには、どうすればいいと思いますか?』
『・・・・・なんだ、その質問は・・ 笑』
絢子と原稿のやり取りを続けているうちに、松宮は確実に絢子に惹かれていった。
『で、お前さんはその女とどうなりたいわけ?』
『・・・どうって?』
『だから、付き合いたいのか、関係を持ちたいのか、結婚したいのか・・』
『ちょっ、ちょっと。いきなり変なこと言わないで下さいよ。まだそんなところまで考えられませんよ。』
『ふん、男のくせに意気地なしめ。まあいい、その女は編集者なんだろ?だったら原稿に連絡先でも挟んでおけ。まず、相手の気持ちを確かめないと話にならんだろ』
『・・・うちに電話はありません』
『なんだと、電話引いてないのか。じゃあ住所でいいじゃないか。ほら、今度の時、なんか忘れ物でもしておけ。それでその住所に彼女が来るかどうか、そして家に上がるかどうかだろ』
『・・・そんな大胆なこと、してもいいんですか・・・?』
『・・・お前さん、あんまり悠長なこと言ってると、本当に逃げられるぜ』
店主は松宮に対してそう言ったそうだ。すると松宮は意を決した様子で古本屋を後にしたという。
「それで、松宮さんは母にアプローチを?」
「おそらくな。何しろ奴らはまだ二十二・三の若僧だったんだ。何かあってもおかしくない年頃だろう」
「・・・ええ、まあ」
店主は、本当に懐かしそうに話していた。いつもの偏屈そうな表情もなんとなく消えていた。