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第二篇「告白」 18

ゆかりは、詰まり詰まり、ゆっくりと話す母をせかすこともせずに、ただ黙って聞いていた。


母・絢子は高校を卒業した後、京都市内の小さな出版社に勤めていた。そこへ、何度連敗しても諦めずに、小説を持ち込んでくる男がいた。


  『とにかく、君は才能無いよ。もう、辞めたら?人生、棒に振るよ』


当時の絢子の上司は、懲りずに何度も持ち込んでくるその男を、バッサリと切った。

絢子は、気になっていた。自分が入社して以来、連敗率トップの作家志望はどんな話を書くのだろうか、と。それは本当に、出版社で編集者を目指すものとしての、ほんの興味心だった。


  『あの』


  『・・・はい』


  『その原稿、私にいただけませんか?』


絢子がそう言うと、男は戸惑った様子で挙動不審になりながらも原稿を渡してくれた。


当時、出町柳で一人暮らしをしていた絢子は、上司の目を盗み、その原稿を持ち帰って読んだ。



―――――― この作品の、どこがいけないのだ。



読み終えた後、絢子の目には涙があった。絢子は、作品に惚れた。


それから、松宮が持ってきたボツ原稿は基本的に絢子の元へ渡るようになっていった。誰にも言えない、二人の秘密だった。松宮にとっても、絢子にとっても、初めての大切な秘密だった。



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