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第二篇「告白」 15
『ふざけるな』
そう言いたい気持ちを抑えて、ゆかりは家を出た。
もう、自分が分からなくなっていた。気づいたらまた、母さんの病院に来ていた。病室に入ると母は背もたれを起こしたまま、窓の外を眺めていた。
「・・・・・お母さん」
「・・・・・・・」
「・・・勘違いはしないでほしいの。」
「――――――――」
「・・・・・たったこれだけのことで、お母さんのこれまでのことが全て無くなるわけではないから。これだけで、お母さんのこと、軽蔑したりなんてしないから、私。」
おそらく、これが本心だ。
兄の言動には正直いらついた。
でも、家族だから大丈夫だと言ってくれたことは嬉しかった。
母が今まで、家族のために生きてきたという事実は消えたりしない。
「・・・・・・・ゆかり」
「・・・・・」
「・・・・・・座って・・ちょうだい。」
母に促されて、ゆかりは素直にベッド横の椅子に腰かけた。
「・・・彼と出会ったのはね、ちょうど二十歳のときだった。私はその時、小さな出版社に勤めていたのよ。」
ゆかりは、自らのルーツが紐解かれいていくのを、静かに感じていた。