第二篇「告白」 12
佑里子先生のありがたい助言を受けた翌日、俺はもう一度あの写真と手紙を見るために母さんの部屋にいた。
手紙に書かれているのは『松宮』という苗字のみ。これでは到底探し当てることは出来そうにもなかった。
もう一つの手がかりは写真だ。この写真、撮り方が悪かったのか、母さん以外のものがなんとなくぼやけていて見づらい。それでもよく目を凝らして見た。
すると・・・。
「・・・・これ、あの古本屋・・・・。」
一人なのに思わず声が出てしまった。
それほど驚いたのは、この写真が撮られたのは、自分がよく行く古本屋のまえだったからで。
その古本屋は百万遍近くの奥まった場所にある小さな小さな店で。店主は年老いた偏屈そうな男一人。大学が近くにあるにも関わらず、学生も集まらない、言ってしまえば非常にマニアックな古本屋で。なぜ、こんな場所で写真を・・・。
そして俺は何気なく手紙を見た。そこであることに気が付く。その手紙はとある出版社名の入った原稿用紙の裏に書かれていた。そして、その横に小さな字で『一九八四、群青』という表記があった。
まさか・・・・・。
とりあえず俺はパソコンを開き、検索エンジンにかけた。
しかし・・・
有力な情報と思えるものはヒットしなかった。
でもとにかく、この情報しか頼れるものはない。
あの店主は、何か知っているだろうか・・・・。
気が付いたときにはもう、出町柳行の電車に乗っていた。