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4.無口男と乙女ゴコロ

 

 カランと陶器製のドアベルが鳴る。今にも雨の降りそうな空を背にして中に入ってきたのは背が高く細身で、長い黒髪を後ろでひと括りにした男。彼が騎士の鎧を身につけている事を確認して、アレンは口を開いた。


「いらっしゃい」

「ドルマン医師が契約している薬屋は此処か?」

「あぁ、そうだけど?」

「…………」

「あぁ、あいよ」


 平坦で静かな口調の男が目の前に差し出したのはいつものお使いメモ。今日は彼一人らしい。今までドルマン医師のお使いで来た騎士達がやかましいのばかりだっただけに彼の存在は新鮮だった。相変わらずアレンは無愛想だが、彼もそれを気にした様子は無い。しばらくはお互い無言のまま、静かな店内に薬を包む音だけが響く。

 リストと紙袋の中身が一致している事を確認し、アレンはそれをカウンターに置いた。


「はい。これで全部。中確かめな」

「…………」


 問題は無かったようで、男から無言で数枚のコインが渡される。おつりが要らない事を確認して、アレンはそれを金庫に入れた。


「まいど」


 軽く会釈し、長く伸びた黒髪を揺らして騎士が店を出る。ドアの開閉も歩き方にも粗暴さがなかったせいか、不思議と傍に立っていても警戒心を抱かせない人物だった。

 前回騎士が来たのは五日前。どうやら五日前後でお使いはやってくるようだ。薬の買い付けにしては頻繁な方だが、ドルマンがしばらく試してみると言っていた通り、薬の内容は毎度様々で少量を買っていく。購入する薬の目途がつけば、その内彼らの訪問ももっと落ち着くだろう。


(やたら無口な男だな。やかましいよりはマシだけど)


 アレンの好きな穏やかな午後だ。そう思った矢先、それは崩れた。いつの間にか恒例となったかしましい幼馴染の登場である。


「アレン!!」

「…………」

「今のヤナ様よね! そうよね!」

「知らねぇっつーの。お前何? 最近待ち伏せでもしてんの?」

「失礼ね。向かいの木陰から覗いていただけよ」

「ストーカーかお前は!!」


 心外だとばかりに両手を腰に当て怒った顔をする幼馴染に、珍しくアレンが声を荒げる。やけにタイミング良く店に来るなと思っていたが、彼らが現れるだろう時間に仕事の休憩を貰い張っていたらしい。

 その内不審者として騎士団にしょっぴかれるのではないだろうか。


「ねぇねぇ! ヤナ様どんな人だった?」


 問われて先程の騎士を思い出す。必要最小限しか話をしてないから、見たままの印象しかアレンには分らない。


「あー? 根暗な無口男? で、あれはナンバー何なの?」

「ヤナ様はナンバー4よ!」

「え! なんで!? マジでアレがいいのか? あんな無口な奴と一緒に居たら五分と保たねぇぞ! もしかしてすげぇ金持ちとか?」


 一度しか会っていない相手に随分と失礼な言い分だが、本音なのだから仕方が無い。何せアレンが一番親しい年頃の娘はこのリリアである。今まで散々ロマンチックなシチュエーションやら理想の男性像について聞かされてきたが、ヤナという騎士はそれらとは似ても似つかない。若い女性を楽しませる会話やエスコートが出来るようにはとても見えなかった。


「やぁねぇ。誰にも靡かないストイックな感じがいいんじゃない! 私があの人の心を開いてあげたい、なーんて!!」

「…………」


 乙女ゴコロを理解するにはまだまだ修行が足りないようだ。


「次はどなたが来るのか楽しみだわぁ~」

「お前、また待ち伏せるつもりかよ……」


 最近行動が犯罪じみてきた幼馴染の将来が心配である。

 

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