王の躍進
アルがムギャン王の同盟員となり数ヶ月の月日が過ぎた。
宙城内も様々な施設が建ち活気に満ち溢れていた。
アル『ただいま〜!』
ノア『マスター、おかえりなさい。ナルグリム火山の成果は如何でした?』
アル『ん〜っと…欠片が3つって所だな。』
ノア『それならまずますですね。アークダスの間で魔獣を呼び出し終わりましたらあの子達も帰って来ると思いますから報告を聞いてあげて下さいね。』
アル『分かった。あいつらが頑張ってくれてるから結構領土も増えてきたな〜。ムギャン王の宙城とも道が繋がったしな。』
ノア『そうですね。でもあまり無理はさせない方が良いですよ。無理をさせ過ぎるとテンションが落ちて十分な力が発揮出来なくなっちゃいますから。』
アル『分かってるって。適度に休憩してもらわないとこっちも疲れちゃうよ。…とりあえずアークダスの間に行って来る。』
アルはアークダスの間に着くと小さな赤い箱の前に立った。
アル『UCやCしかまだ出た事無いからなっ…と。今度こそ良いものが出ます様に…。』
アルが赤い箱に欠片を込めるといつもの様に箱が輝きだした。
赤い箱の上に3枚のカードが現れた。
アル『どれどれ…おっ!?UC2枚もあるじゃん!……ん?………っ!?赤いカード!?初めて見るぞ!…でも何だかモンスターカードでは無い様な…。ノアに聞くか。』
アルは長い階段を駆け上がって行った。
ノアは忙しそうに執務室で書類を片付けている。
どうやら急に人口が増えた為、書類整理に追われている様だ。
ガチャッ
アル『ハァ…ハァ…ノア…こんな…こんなカードが…出たんだけど…ハァ…。』
ノア『マスター、ちょっと待って下さい!私だって中々忙し…あれ!?Rカードじゃないですか!?やりましたね!』
アル『…ハァ…これが…Rカードか…で、これ…モンスターカードじゃ無いよな?』
ノア『…へ?見れば分かるじゃないですか!?……え!?マスター…まさか…今まで出た装備カードはどうしたんですか!?』
アル『…そんなの有ったんだ?Cのカード何て興味無いから全く見てなかったよ…。』
ノア『…道理でいつまでたっても洞窟とかに探索に行く時軽装だと思ったら……あ。』
アル『何だ!?何かあったのか!?』
ノア『私ったらマスターに装備の事を説明し忘れてた気がしますわ。テヘッ』
ノアは愛らしくちょっと困った様な顔でペロッと舌を出した。
アル『ノア、それもギリギリな気がするぞ。』
ノア『…コホン。遅くなりましたが説明します。アークダスからはモンスターカードと装備カードが出て来るんです。モンスターカードは領土拡大等に役立ち、装備カードは各洞窟に行く際に役に立ちます。』
アル『ん。やっと自分を取り戻したな。』
ノア『…装備には3種類有って、武器・防具・装飾品に分かれています。今回マスターが手に入れたのはRカードのフロストバイトと言って、一部の魔獣に特効効果を持つ氷の魔剣です。』
アル『ほうほう。では早速装備を変えてみるか。ブロードソード、今まで有難うな。』
ノア『マスター、折角ですから防具や装飾品もしっかり装備して下さいね。』
アル『…そうだな。水先案内人の巫女の説明不足で忘れていたからな…。』
ノア『…シュン。』
アル『冗談だ。気にするな。…えっと…これが良さそうだな。』
アルは鉄製の全身鎧ソルジャーアーマーに深い青い宝石が美しいサファイアリング、湾曲した造形のネックレス ハーベストムーンを装備した。
ノア『マスター、良いじゃないですか!』
アル『うん。これなら探索時にみんなの足を引っ張らずに済みそうだ。』
アルが装備を終えると領土拡大の為に進軍していた魔獣達が戻って来た。
アル『ご苦労さん、またまた領土を広げる事に成功した様だな。』
アル軍の魔獣はかなり数も種類も増えていた。最大数を率いるバウンサー隊、大空を駆ける半人半鳥アヴァランティア隊、鋼鉄ボディのメタリックパリン隊、攻撃も回復もこなす戦うペンギン スローター隊。
アル『本当にご苦労さん。みんな今日はゆっくり休め。』
一同『クヮァー!』
魔獣達は自分達の宿舎に歩を進めた。
アル『…あいつらの宿舎も手狭になったな…また増築しなければならないか…。』
アルは魔獣達の背中を見送りながら呟いていた。
アル『あ。ボードに書き込みが有る。二グリス王からだな。どれ…』
二グリス王はアルの同盟の盟主でRモンスターを何体も従えている猛者である。
二グリス『同盟員諸君、近日中に我が城の南の古城を占拠する。各員助力願う。』
アル『古城?あんなちっぽけな砦相手にずいぶん重い言い回しだな…。』
ノア『マスター、違いますわ!』
急に背後からノアが話し掛ける。
アルはちょっとビックリした事を悟られたく無いのかゆっくり目に振り返りながらこう返答した。
アル『古城なんて俺1人でも何個か落としてるじゃないか?』
ノア『マスターが落とした事が有るのは朽ちた古城です!二グリス王が今回落とそうとしているのは、古城でも中堅クラスの大きさ。朽ちた古城とは大きさも魔獣の強さもダンチでございます。』
アル『古城にランクなんて有るんだ!?近くにあんまり無いから知らなかった〜』
ノア『マスターが落とせる古城を二グリス王が助力を求める訳無いじゃ無いですか…。』
アル『…それは…間違い無いんだが…。ハッキリ言われるとショックだわ。』
ノア『はっ…すいません。今回二グリス王が落とそうとしている古城は中堅クラスでも下位になりますが、今までの古城や土地とは強さが格段に違います。気を引き締めて臨まなければなりませんね。』
アル『…そだね…。』
ノア『もー!いつまでもいじけてないで下さいマスター!それに今回の古城を落とせれば大きな特典が有るんですよ!』
アル『……特典?』
ノア『はいっ!今回の古城を占拠出来ると古城内を探索出来る様になるんです!』
アル『探索!?まさか…前話で使用出来なかった『終わりの古城マスター』がついに…』
ノア『…いえ…まだイージーまでです。』
アル『…なーんだ…。でも新しいアークダスか…ちょっと元気になった!』
ノア『そうですよ、元気出して下さいマスター。それにイージーとはいえ今まではほとんどお目にかかれなかったヴァルディア属、デモニア属、ドラゴン属のモンスターも結構手に入るんですから!』
アル『上位種族か!俄然やる気出た!』
ノア『さすがマスター!古城占拠頑張りましょう!』
アル『おう!』
やる気を取り戻したアルの後ろで、ノアはこんな事を考えていた。
ノア「浮き沈みが激しいというか単純というか…まあそれがマスターの良い所でも有るんですけどねっ」
アル『ん?何か言ったか?』
ノア『な、何も言ってないですよっ。…それよりも二グリス王に返事しておいた方が良いかと思いますよ。』
アル『あぁ。そうだな。…えっと…古城占拠の件…了解…しましたっ…と。』
翌日、ボードは色々な王からの返信と二グリス王からの戦略が書かれていた。
二グリス『皆の沢山の参戦かたじけない。今回の古城占拠戦はまず我が軍のアイスエンペラー隊にて敵城門まで道を切り開く。その後皆の軍にて城門の破壊を頼む、敗残兵は深追いせず、戦力の保全を優先する事。我が軍は12時突撃予定である、皆の集には13時前後に戦場に着く様、手配願う。以上。』
アル『12時?…今何時だ…?』
アルは新設されたばかりの時計台を見る。
アル『げっ!?もう12時半!?バウンサー!アヴァランティア!古城にすぐ出立するんだ!!』
バウンサー『クェー!』
アヴァランティア『キューィ!』
バウンサーとアヴァランティアは待ってましたと言わんばかりに一声叫ぶと物凄い早さで南へ飛び去って行った。
アル『…ギリギリだったな〜…。』
アルはバウンサー・アヴァランティアそれぞれの到着時刻が13時からわずかに前だった事を確認し安堵のため息を漏らした。
ノア『何とか間に合った様で良かったですねマスター。』
アル『本当に。参加するって言っておいて行かない訳にもいかんからな。』
ノア『もし間に合わなかったら色々影で言われちゃう所でしたね。』
アル『おいおい。そこまで皆酷く無いだろう?』
ノア『マスターは皆さんを信頼なさってるんですね。』
アル『当然だ。共にこのアルカニアの地に平定を取り戻す同志なんだからな。』
ノア『そうですね。』
ノアはアルの答えに満足なのか満面の笑みで答えた。
ノア『さて、マスター。古城占拠の報告が来るまでに城内を開発しましょうか。』
アル『そうだな。ちょうどモンスター達の宿舎が手狭だと思っていたんだ。』
ノア『そうですね〜…宿舎の改築を進めるのと、王城も大きく改築してみましょう!』
アル『王城もか!?そうだな。さすがにこの小さな城では宿舎があるとは言え、そろそろ限界か。』
ノア『はい!それに王城を大きく改築していくと色々な事が出来る様になるんですよ。』
アル『色々な事???』
ノア『はい!城内に様々なお店を作る事が出来たり…後は…まだヒミツですっ!』
アル『…ノアは時々変な隠し事をしたがるな…まぁ良いけど…。』
ノア『うふふ…その内お教えします。』
アル『…では、王城及びモンスター宿舎の改築を!民衆には苦労を掛けるが、これも王城と皆の生活を豊かにする為、頑張って欲しい。とも伝えてくれ。』
ノア『わかりましたマスター。』
ノア「マスターが民衆の事を心から考えてくれる方で良かった。」
ちょうどその頃、二グリス王と同盟員達の部隊、アルのバウンサー隊・アヴァランティア隊達が古城占拠の勝鬨を上げていたのであった。