王の旅立ち
数多の魔獣が大地を蹂躙し、その王たる八匹の古代龍が世を支配する暗黒の大陸アルカニア…
人々は魔獣達の追撃により絶滅の危機に瀕していた…
人々が絶望の淵に立たされていた時、一人の魔導師が現れ、人々に希望をもたらした。
その希望とは
魔獣を従える秘術と宙に浮く城、そして王の器をその身に宿した者達に龍神の巫女を従者として遣わした。
その魔導師が別れ際に願いを託す…
『100年に一度の大破壊の前に八龍を滅し、アルカニアに光を』
この物語は王の器を持つ一人の戦士の戦記である。
ノア『マスター、マスター…もうどこに行っちゃったんだろう…』
一人の少女が白い王城の石畳を駆けながら誰かを探している。
その少女はあどけない表情に黒い瞳、美しい赤髪をしていた。
ノア『…居た!マスター!何やってるんですか!外界に行きますよ!他の王様達は既に自分達の領土を広げているんですからマスターも遅れてられないんですからね!』
マスターと呼ばれた青年は逞しく、短めの栗色の髪を掻き乱しながら答えた。
アル『分かってるって…ちょっと天気が良いから外で昼寝したいな〜なんて思ってただけなん…zz…』
ノア『マスター!!起きて下さい!』
アル『…はい。ごめんなさい。…で領土を広げるってどうすれば良いんだよ?俺一人じゃ沢山の魔獣を相手するのは限界があるけど…』
ノア『マスター、その為に魔導師様から素晴らしい力をもらったじゃないですか…もう良いですからあの洞窟に行って来て下さい!』
ノアはまだ少し寝ぼけているアルを無理矢理立たせ、城の近くにある小さな洞窟へ叩き込んだ。
アル『って〜…乱暴だなぁノアは…龍神の巫女ってのは優しいもんだと思ってたけど期待外れだなぁ…』
ブツブツ文句を言いながら少しずつ進んで行くアル
しばらく進むと少し開けた場所に辿り着いた。
アル『狭い所ばっかりで息が詰まりそうだったよ〜…見た所…何も無さそ…でも無いな。…何か居る…』
アルは怪しい気配に気付き大剣を構えた。
大剣を構えた先の物陰から丸いボディから小さい手足が生えた卵の様な魔獣が現れた。
アル『パリンか…楽勝だな』
アルは身の丈もあろう大剣でパリンを撫で斬りにした。
パキッ パキパキッ
パリンは卵の殻の様にバラバラになって倒された。
アル『まっこんなもんでしょ。』
パリンを倒し得意気になっているアルの頭に声が響く。
ノア『マスター、おめでとうございます。パリンをやっつけましたね。』
アル『?ノア?…あぁ…頭に直接話しかけてるのか?そういえばそんな事が出来るって言ってたね。』
ノア『そうですよ。ほらほらマスター、今倒したパリンを見て見て下さい。』
アル『え?どれどれ…ん?何か綺麗な石が有ったけど?』
ノア『それは欠片と呼ばれる物で、その欠片を使う事で様々な魔獣を従わせる事が出来る様になります。行く洞窟によって従わせられる魔獣も変わるんですよ。』
アル『へ〜…こんなもんでね〜…でどうやれば良いんだ?』
ノア『それはお城に戻ったらお伝えしますので一度洞窟を抜けて来て下さい』
アル『オッケー♪んじゃ〜戻りますか〜…あれ?出口が消えちゃったぞ!?』
ノア『洞窟は一度入ると力尽きるか一番奥に行くまで出られませんからねー…お気を付けてー…』
アル『…マジかよ…結構奥まで有りそうじゃんか…』
アルは仕方なく洞窟の奥まで進んで行った。
とぼとぼ5分程歩くと再び広い空間に出た。
アル『ここにも何か居るのかな〜……
また出たよ』
再びパリンが現れた。
アルは先程よりも手早くパリンを粉砕し、欠片を回収する事が出来た。
アル『まだまだ先は有るんかねぇ…おや?』
広い空間の端から光が漏れている。
アル『外だ!意外と呆気ないもんだな〜』
アルは足早に洞窟を後にした。
アル『ただいま。結構ラクチンな洞窟だったよ。これなら魔獣から大地を取り戻すのもサクサク行けちゃうかもよ?』
ノア『甘ーい!文○堂のカステラよりも限りなく甘い考えですわ!』
アル『その例えが良くわから
ノア『まだ最初の洞窟を1回しか行ってなくて考えが甘過ぎますよマスター!』
アル『まだ話して
ノア『とりあえず先程手に入れられた欠片を見せて頂けますか?』
全く納得行っていない表情をしながらポケットから欠片を取り出すアル。
アル『全部で3つ拾ったよ、こんなんでどうやって魔獣を呼び出すんだよ。しかも暴れたりしたらどうするんだ?』
ノア『ご安心下さい。呼び出した魔獣はマスターの従者として間違いなく働いてくれますよ。後は呼び出す方法ですが…』
アル『もしかして欠片を7つ集めて、出でよシェン
ノア『マスター!!!!それ以上は色んな意味で危険です!』
アル『はいorz』
ノア『城の地下にアークダスの間が有りますのでそちらで説明しますね。』
城の地下深く長い階段を下った先にその部屋は有った。
部屋の中には大きい箱と小さい箱が無数に並んでいる。
アル『へ〜この城にこんな部屋が有ったとはね〜…で、この並んでる変な箱は何なの?』
ノア『この箱はアークダスと言って、欠片を正面のポケットから飲み込ませる事で魔獣を呼び出す事が出来るんです。』
アル『ホントに!?早速やってみよう!』
アルは黒く大きな箱に欠片を飲み込ませ様とすると、
ノア『ダメダメ!ダメですよ!先程の洞窟の欠片ではその『終わりの古城マスター』を使う事は出来ませんよ』
そう言ってノアは木製の小さな箱の前に立ち、
ノア『先程の『はじまりの洞窟』ではこちらのアークダスを使う事が出来るんですよ。』
アル『…何か…さっきのと比べると…ショボいなぁ…』
ノア『仕方無いんです!まだまだマスターはヒヨッコなんですから!一歩ずつ前に進んで下さい!』
アルは期待感が少なさそうな小さい箱に欠片を込めると箱が輝きはじめた。
アル『わゎっ!?何か凄そう!?』
しばらくして箱の輝きが消えると箱の上に3枚のカードが有る。
アル『何だこのカード?青いカードが1枚と茶色いカードが2枚?何か絵が書いて有るぞ?』
ノア『それはモンスターカードと言ってマスターがこれから従える魔獣が描かれた物になります。2枚は先程倒したのと同じパリンですね、1枚は…おめでとうマスター!UCバウンサーですよ』
アル『UC???』
ノア『モンスターにはそれぞれ強さや珍しさに応じてランクが有るんです。ありふれた物は茶色カードC少し珍しいUCあまり出会えないR滅多に出会えないSRっていう風に4つのランクに分かれてるんですよ。』
アル『へー…なる程ね。ちょっとは運が良かったんだな。…で、このカードをどうするんだ?』
ノア『ここは狭いので一度外に出ましょうか』
2人は先程降りてきた階段を登りはじめた。
アル『バウンサーねぇ…綺麗な緑の羽の鳥だなぁ…あのパリンとは全然違うけど、他にどんなのが有るんだ?』
ノア『パリン達は見た目通りエッグ属、バウンサーや鳥型はフェザー属、魔法の力で無機物に命を与えられたゴーレム属、狼や獣達が変異したビースト属、水中での生活に慣れ親しんだアクアリッシュ属なんかが有りますね。』
アル『色々有るんだなぁ…』
ノア『他にも上級種族として、混沌の化身デモニア属、秩序の申し子ヴァルディア属…後は最強の生物ドラゴン属ですね…この大陸を支配している八龍もドラゴン属に属しています。』
アル『…ちょっと待って!覚えられる自信が無い…』
ノア『大丈夫ですよマスター。私が居ますし、その内慣れちゃいますから。』
アル『そんなもんかねぇ…』
そんな事を話している内にようやく外にたどり着いた。
ノア『さて、マスター。先程のバウンサーのカードを地面に置いてみて下さい。』
アル『あぁ。…これで良いか?』
ノア『はい!では少し離れて下さいね』
地面にカードを置いてすぐにカードから白と緑の羽が吹き出し辺りを包み込む。
吹き出した羽が地面に舞散らばると羽の中央から緑色の翼を持つ大きな鳥が現れた。
バウンサー『…ワガナハ バウンサー コンゴトモ
ノア『ストーップ!言わせませんよ!?それにアルカニアのモンスターは上位種族以外は喋りません!!!』
バウンサー『キィーキィー…クェ〜…』
アル『凄っ!カードからモンスターが飛び出した!』
ノア『凄いでしょ?カードを地面に置いて待つ事でモンスターはこの様に具現化します。
このモンスターを使って領土を占領したり出来ますから可愛がってあげて下さいね。』
アル『分かった!ではバウンサー!あのマグマが溢れ出す火山を占領しに行くのだ!』
ノア『…マスター…あそこはまだ無理です。産まれたばかりのバウンサーには荷が重過ぎます。』
アル『そうなの?じゃ〜どこ辺りが良いんだ??』
ノア『そうですね〜…あっあそこ!北東に草原が有るのであの辺りが良いですよ!』
アル『よし!バウンサーいざ北東の草原へ!』
バウンサー『クヮーッ!』
バウンサーが甲高く叫ぶと回りから小さなバウンサーの群が飛んで来た。
アル『うゎっ!バウンサーがこんなに!?』
その数100羽!回りはバウンサーだらけ、ちょっと家畜臭い…
ノア『マスターびっくりしないで下さい…カードで具現化したのはバウンサーのリーダーで従属を呼んだだけですよ。やっぱり1匹じゃ心もと無いですし…魔獣の多くは群れを作りますからね。こちらも数で対抗しないと!』
アル『ふぁぁっ!びっくりしたぁ!そういう事は先に言ってくれ。』
ノア『えへっ!…中には数ではなく身体が大きくなる者やそのままでも力のみが強くなる者も居ますが、基本は数ですよ。』
アル『なる程。…では改めて。バウンサー、北東の草原へ!』
バウンサー『クヮァー!』
バウンサーは100羽の従属を引き連れ飛び立って行った。
アル『…………で、どうすれば良いんだ?』
ノア『後は…待つだけですね…。』
アル『…そうか…。暇だな。…ん?その城の入り口の横に掲示板とポストみたいなのが出来た様な気がするんだが気のせいか?』
ノア『マスターが昼寝している間に私が用意したんです!これはボードとまさしくポストです。ポストにはマスターと同じ様に宙城を持つ王から手紙が届いたりします。ボードは…使う時に説明しますね。』
アル『手紙なんて来る事有るのかよ……来てる!?』
綺麗な薄い黄色の封筒に整った文字で「アル王へ」と書いて有る。
アルは封筒を開け綺麗に折りたたまれた便箋を取り出し、内容を読んでみる。
ムギャン『はじめまして。私は南西に一時間程の所に宙城を構えているムギャンと申します。宜しければ我が同盟にいらっしゃいませんか?同盟内の王達とお待ちしております。』
アル『同盟?…ノア、同盟って何なんだ?』
ノア『マスター、同盟とは沢山の王達とグループを作って情報を共有したり一緒に領土を増やしたり協力したりするんです。八龍は強大なのでマスター1人で倒すのは難しいかもしれません。ですが同盟の仲間達と一緒ならなんとか出来るかもしれませんね。後、先程のボードですが、同盟国の王達が何かを書き込むと同じ同盟であれば書いた内容が共有されます。そうやって情報を共有するんですよ。』
アル『便利なもの作ったな〜…もしかしてノアって凄くない?』
ノア『もっと早く気付いて下さい!なんてったって龍神の巫女なんですからね!』
アル『まぁ…とりあえず…手紙を見る限りムギャン王は良い人そうだし色々情報も集めたいから同盟とやらに入ってみるか……オッ…ケー…よろしくっ…と。』
ノア『後は同盟の盟主殿から承認されればマスターも同盟員ですね。』
アル『さてっと…ちょっと疲れたから少し寝るか〜』
ノア『ダメー!マスター!まだまだやる事は沢山有るんですよ!みて下さい!北東の草原の方から人が歩いて来ていますね?』
アル『あ!本当だ!…でもなんでだ!?』
ノア『きっとバウンサーがあの草原を占領出来たんですね。魔獣の脅威が無くなった人達が安全なこの城に助けを求めて向かって来ているんですよ。マスター、彼らはマスターと違い宙城を持っていない為、守らなくてはなりません。その為には城に畑や資源を確保出来る施設を増やしたり王としてやる事がたっっっくさん有るんです!頑張って下さいね。』
アル『王として…か。頑張ってみますか!』
ノア『マスター、共に頑張りましょう。アルカニアの平和の為に。』