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仮説と仮説

とりあえず先に確認したい事があった私は周りを見回しました。

正直、今までのも見てる人が居たら恥ずかしいけど、これからするのを見てる人がいたらまた恥ずかしいので。

・・・なんで異世界でこんな事気にしなければいけないのかわかりませんが、私は旅の恥はかき捨て派ではないのでしょうがないのです。

まぁ、誰も居ないのは分かってましたが一応の確認をして、私は口を開きました。


「えぇ、と・・・私の名前は黒峰さやです。

・・・私の名前は黒峰さや、です。」


静かな泉に私の声だけ響き、また静寂。

・・・何でしょう、この居た堪れない感というか気恥ずかしさはっ。

うぅ、顔が赤いです。

しかし、やはり、というか、今ので一つ分かった事があります。

私は何も考えずに最初、名前を言いました。

その時、私に聞こえたのは意味は分かるけど、知らない言葉でした。

次に私は日本語で名前を言うと、私には日本語が聞こえました。

つまり、この子は先に話した言葉が日常的に使う言葉、となり、日本語は意識しないと出てこない言葉、になります。

これで私の仮説その1、実は見た目が変わっただけでコレは私の体。はナシになります。

私は日常会話は日本語ですし、意味は分かるけど知らない言葉、は日常的に使えません。

まあ、荷物とかもあるし無いだろうとは思ってましたが。

となると、やっぱりこの子の体はこの子の物、になりますね。

私は首を傾げます。よく分からない考え事をする時の癖です。

言葉を喋れる、文字が読める、は言語を理解する、という事ですよね?

しかし私は言葉、文字の意味は分かりますが、厳密にゆえばそれは理解ではありまん。

さっきのノートもそうですが、意味はわかるけど、書いてある文字を読み上げる、となると難しいでしょう。

発音、読み方がわからない。

いぇ、分かるけれど、それは日本語しか知らない人間に初めて聴かされた英語を喋れ、と言っているのと同じです。

英文に訳文が書いてあって、発音も書いてあればその文は読めるけど、それは理解した、にはならないでしょう?

文の並び方、書き順、単語単語の意味をしらなくては理解したとは言えません。

だけどこちらの言葉を、書いてある事の意味を日本語で読めば口が勝手に翻訳してくれる。周りからみたら理解してる、けど本当は理解しているわけではない。

他の荷物だってそうです。

私は最初、それらが何か分からなかったけれど、理解しよう、と思って見たら理解出来ました。

しかしそれは私の経験則からではなく、頭の中にあった知識のみ。

・・・頭に知識があり、それを引き出せる。この子の情報以外。

そして、多分、ですかその引き出せる情報はこの子が知っている事のみ、ですね。


しかもタチが悪いのはこの子の経験則も引き出せない。です。

例えば魔法石、ですが、一般的な使い方は知識として分かりましたが、この子が使っているところが出てこない。

地図を見たらその場所に何があるか分かりますが、やはり行った記憶、見た記憶はでてこない。

完全な知識のみ、ですね。徹底してます。

プライバシーの保護は完全ってことですか、頭の中身のみなら。

まあ、とりあえず、何故言葉が分かるのか、は分かりました。

私がなんでこの子の中に居るのか、この子の意識は何処に行ったのかは、分かりませんけど。一応前進でしょう。

多分、私は魂?とかそんなのだけでこの子の中にいて、だからこの子の脳の情報がある程度私にも分かるのでしょう。

良く考えたら当たり前ですよね、脳は知識を蓄え、思考する。この脳は私の物ではないから知識はこの子の物があるはず。

思考、と個人の人格が何処に消えたのかはわかりませんが、そこは置いときましょう。とりあえず、今は。

そして、そもそも私のものでもない脳だから齟齬も生まれる。

魂と体はセットだ、と言われるくらいだから別の魂が別の体に入った事による齟齬。

意味は分かるけど、理解してない。みたいな。他にもあるのでしょうが。

まあ、知識はないよりあるが良いので助かりますし、まだ仮説に過ぎないわけですし。

と、なると何処まで齟齬があるか、ですね。

とりあえず、ただ見るだけでは知識がでてこないのは分かりました。

これは何か、を意識しなければならない。

そして知識がでて来るまでのタイムラグ。

慣れないうちは大変そうですね。

知識、は分かりましたけど、体も齟齬があるのは困りものなんですが・・・。

初めて使う体だから上手く動かせない、とか。

まずはストレッチでもして体がどう動くか試してみますか。

そんな事を考えて軽く伸びをした私は、いきなり聞こえた雄叫び、と言うより断末魔の悲鳴のような鳴き声に体を硬直させました。

ギギギ、と音がしそうな程硬直した首を声がした方に向けます。嫌な予感しかしません。

ベキっとかバキッとか、何かが森の中で暴れて居るような音とまた、悲鳴じみた鳴き声。

それが暫く続いて、静寂。

ダラダラと冷や汗が背中を流れている気がします。なんのホラーですか、これは

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