私は誰ですか?
異世界トリップ。
いわゆるまだ若い男の子や女の子が異世界に召喚されたりなんだりするアレです。
大抵は中高生がメインだと思うのですが、この頃は大学生とか社会人も召喚されたり、または何かの事故やら神様やらに飛ばされたり、昔は伝説の勇者がメインだったのが変わったり、異世界物も多様化したな~とか思いながら楽しんで読んでました。
正直な話、憧れもありましたし。
異世界の騎士や王様との情熱的な恋愛やハラハラするような冒険も想像したりしてました。沢山。
いや、やっぱりファンタジー好きとしては譲れないでしょう?そこは。
今の自分じゃない、他の自分。
勇敢で強く、優しく、誰かに愛される自分。
そして、誰よりも私を愛して、守ってくれる、強くて優しい人。
沢山の危機を乗り越えて最後はハッピーエンドで異世界で幸せに暮らしました。的な。
・・・まぁ、それも自分の元には絶対起こらない、夢の話だから好き勝手に楽しめるのであって、現実に起こったら、正直かなり困りものな訳ですよ。
だって実際問題、私には仕事があるわけですよ、バイトだけど。
無断欠勤なんかしたら、下手すれば解雇な訳で。
さらに言えばこのまま帰り方がわからなければ私は失踪者、行方不明者なんて事になって、警察官に連絡され、もしかしたら行先を探すため、とかって部屋を捜索された日にはっ・・・頼むから右端本棚隣の納戸の扉だけは開けないで下さい!乙女の秘密が沢山詰まっているのです!
・・・いけない。また話がずれましたね。
私の悪いクセです。
ついつい関係ないことを考えてしまうのは。
まあ、しかし異世界トリップなんてこの際どうでもよいでのす。いえ、あまり良くはないですが、この際おいておきます。
だってそれより重要な事があります。
私の目の前にある大きな泉。
その水面に映る、本当なら私が写っているはずの場所にいる、この美少年はいったい誰なんでしょうか。
手触りはさらさらで、すこし痛んでるけどそれでも極上の絹糸のような感触のハチミツ色の髪。
チョコレート色の肌はきめ細やかで若々しい張りがあり、その肌と髪と同色のクルリと綺麗に円を描くまつ毛に縁取られたアーモンド型の目は海のような青と緑の混ざった・・・コバルトブルー。
水面に写っているのを見てるだけだから少し違うかもしれないけど、そんな色彩。
東洋系、西洋系とどちらともが混ざった、何とも言えない繊細な顔立ち。
まだまだ幼さの残る水面の彼は私が首を傾げる同じように首を傾げ、私が笑うと彼も笑いました。
・・・やばい、メロ可愛い。萌えた。
丸い目が少し細くなって小さなエクボがまたキュートです。本来の私、余裕で負けてます。
まあ、四捨五入で30になろうとかゆう女がこんな可愛い子どもに勝とうなんて無謀に過ぎますが。
しかし今の彼は私です。
気をつけなければナルシストだと思われてしまうかもしれません。
いけません。ナルは嫌です。
私は泉の渕につけていた手を離して身を起こしました。
四つん這いになって水面を覗いていたので付いた手と膝の汚れを軽く払って立ち上がります。
立ってみた感じ、地面との距離が何時もと変わらない感じがしました。
となると、身長はあまり変わってない、ということでしょう。
私は155㎝なので、そのあたりでしょうか?
みた感じの年齢は中学生くらいに見えますが、外国人は見た目より上に見える、といいますし、もっと若いかも知れません。
推定13~5歳前後、サバ読み10歳になりますか・・・うわぁお、ですね。
年齢詐称も良いところです。