その4
私は岩山を下りながら森に入れそうな場所を探します。
この森は中に入ればそうでもないのに、森の外は異常に木が密集していて、なかなか入れそうな場所がないのです。
なかなかいい場所が見つからないまま下って行くと、最初の空き地の上についてしまいした。
私は一応、上から彼の様子を伺いました。
彼はまだ岩や木やらの下敷きになって地味に震えていました。
どうやら彼女が助けに来る事もなかったようです・・・哀れな。
相変わらず煤けた体の隙間から見える彼の体は、どことなく元気のない、淀んだ青色をしていて、ぷるぷると悲しそうに震える彼に罪悪感すら感じそうです。
自業自得とはいえ・・・。
私はしばらく彼を見つめ、ため息をまたはきました。
なんだか此処についてからため息ばかり吐いている気がします。
こんな事では幸せが逃げて行ってしまいますね、気をつけましょう。
私は腰の小袋から魔法石を二つ取り出して、両手に握り、崖の端に立ちました。
《水よ》
その言葉に反応して、両手の石から水が溢れだしました。
私は暫くそのまま立って水を出し続け、水が岩や木を伝って彼の体を潤すのを確認しました。
彼の身体の煤が流れ、淀んだ青が少しはマシになったのを確認してから、水を止めます。
まあ、これで彼が少しはマシになったのかは分かりませんし、そもそも加害者の私がこんな事をするのも、タダの自己満足ですが。
それでも少しは元気になったように見える彼に私は満足して頷くと、また道を下って行きました。
結局私が森に入る道を見つけたのは岩山を下りきった場所付近でした。