その5
私は一気に崖に向って走りました。
・・・なんだかいっつも彼に追われ始めてからやっと動いてる気がします。私。
やっぱり思い切りが足りないんですか。
私は崖までの距離と根の距離をはかり、飛ぶタイミングを測ります。
後ろからなんかシュシュシュシュシュ、的な何かが擦れ動いてる音がしますが、無視です無視‼
あとちょっと。
崖はもう目の前です。
思いっきり飛んで根に足を乗せるっ。
そう考えながら右足で思い切り地面を蹴って私は飛びました。
そして崖の上に着地しました。
・・・はい?
あれ、私、根とか、木とか、飛び越したような気が・・・しますよ?
慌てて、後ろを振りかえってみと、やっぱり崖は後ろにありました。
崖下から彼が怒ったように点滅、もとい色を変え変えさせながら触手を振り回しています。
・・・落ち着いて考えましょう。
私は崖の下から飛びました。根っこに向けて。
それを足掛かりにしようと思ったからです。
そして、いざ、力の限り飛んだら崖の上までジャンプできたわけで。
・・・若い男の子ってなんて素敵なジャンプ力なんでしよう。
三mの崖なんて余裕なんですね。
・・・んな訳ありますかっ⁉
身長の二倍はありましたよ⁉
約三mですよ⁉
・・・いや、でも走り高跳びって結構高く飛んでますよね。
有り、なんですか?それともこの子が凄いだけですか。私の、考え過ぎなんですか。
・・・後で考えましょう。
とりあえず、なんとか無事逃げれそうですし、悩むのは後です。
私はまた、彼に視線を戻しました。
彼は触手を根に巻きつけ、崖をのぼろうとしていす。
しかし重さがあるからか、古い根が崖から剥がれかけ、新たな根に触手を伸ばしたり、とその進みはかなり遅いようです。
強いてゆうなら、壁をのぼるカタツムリ、みたいな速度です。
丈夫そうな、まだちゃんと生えている木に触手を伸ばさないのは長さ制限でもあるからでしょうか?
古い根が剥がれ、土や石が体に落ちて来ても諦めずに登ろうとするなんて・・・愛ですね。
しかし私は食べられたくありません。
彼の勇姿を横目にさっさと逃げようと崖から離れかけ・・・とっても良い事思いつきましたよ。
そのら思いつきについつい顔に悪魔的な笑みが浮かびます。
多分人がみたら十人中十人が、引きそうな顔な気がしますが、まぁ、ここに今、人は居ませんし、いいでしょう。
私は早速、腰の小袋をあさり、目的の物をとりだしました。