その4
崖は昔、土砂崩れか地盤沈下でもあった森なのか、所々に古そうな木の根や、斜めに生えた木がありました。
私が居る場所から見て、右から左にかけて少しづつ崖は高くなっていってます。
一番下にある斜めに生えてる木は大体二mよりやや上、しかしそれより下に古い枯れた木の根が足を出してます。
あれを上手く伝えれば上に逃げれるかもしれません。
私は彼らを横目で確認しました。
まだ、揉めて?いる、と言うか、まだ彼は熱心に口説いているようです。
私は頭の中で行動をシュミレートしました。
ダッシュで走って木の根を足がかりにジャンプして、上の、生えてる木の幹を摑む、そのまま下の根を足がかりに幹に登って、木に登って、崖の上にジャンプ。
・・・どうしよう。すっごく失敗しそうです。
が、この子は私より運動神経がいいし、上手くいけば少しは安心して逃げれます。
私は崖を見て、頭の中でもう一度手順を確認すると覚悟を決めました。
大丈夫です。出来ます。やれます。っていうかやれっ‼
私は気合いを込めて自分を鼓舞すると、タイミングを窺うため、彼らにまた視線を戻しました。
彼女は彼の猛アタックに少しは心が動いたのか体をピンクから薄紅色に変えてゆらゆら揺れます。照れているのでしょうか?
そして、何か、何やら、気のせいだと思いたいのですが、私の方をちらり、とみるような動きをした後、プルプルと震えてみせました。
それに彼は嬉しそうに体を群青、青、群青と変えて・・・いやいや、待ってくださいよ?
なんか、こちらを、狙うような動作を。
ズルズルと。
まさかアレですか。
私が欲しければ貢げ、的なことを言われたんですか、彼女は。悪女ですか。
彼は体の色を変えつつ、身体から触手を生やして、ゆっくりと私に近づいて来ます。