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展望台  作者: 朝霧幸太
3/5

先客



 ギイッと鳴るドアを押して店へ入ると、右へ伸びるLの字の形をしたカウンターの端に、先客が一人いた。



 白髪のマスターがカウンター越しに、客と将棋を差していたようだ。



「いらっしゃい」



 マスターが振り向き、にこやかに会釈した。



 格子柄のベストと赤い蝶ネクタイが、いかにもバーのマスターらしく似合っている。



「おや、お連れ様でしたか。ようこそ」



「こんばんは」



 僕は短く挨拶して朱美の右側に座った。



「むぉっほほほっ」



 先客は僕等を見て甲高い声で笑った。



 何だろうか?



「うむっ! 儂は待っていたのじゃ。ひやっはははは……むほほほほっ」



 細く長い白髪をだらりと下げた老人は、気味の悪い声で笑い続けた。顔がシミだらけで、かなりの高齢者だ。70代後半……いや80歳に近いのではないか?



「どうじゃ、マスター。儂の勝ちじゃな?」



「参りました」



 マスターは、大仰に頭を下げている。



「ふぉっほほほ。では今宵は、たらふく呑ませて貰おうかのう」



 長い白髪の老人は得意げに笑い、目を細めている。



「賭けをしているのよ。次に来る客は男か、女か、カップルかって」



 朱美が僕に耳打ちしてコートを脱いだ。



 なるほど。そういうことか。店に入るなり笑われて、訝しく感じたが、そうと聞かされ得心がいった。



 朱美は脱いだコートを壁際のハンガーに掛け、僕に向き直って両手をかざした。



 同じようにせよということらしい。



 僕が立ってコートを脱ぐと、彼女はそれを受け取って自分のコートの上に掛けた。



「幾分、暖かくなって来ましたね。何を作りましょうか?」



 マスターが灰皿とピーナツを盛った小皿を置きながら訊いて来た。




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