表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

IV.おじいちゃん陛下

「久しぶりですね~、陛下!」

「おぉ、来たか!」


(なんか陛下明るい!!)


城にて案内されたのはとても広い場所――小広場だ。こんな広さで小、だなんておかしいと思うのだが。

そして、奥の玉座に座っているじいさんが皇帝。皇后はすでに亡くなっているらしい。


(確かに、一回なんか皆で黒い服を着ないといけない日があった気がする)


皇帝とは言ってもかなり高齢らしく、近々皇太子が跡を継ぐ予定らしい。灰色の髪と髭。親しみやすさと威厳を兼ね備えている。


「おぉー、ルネティア・ロデスよ。成長したなぁ。泣けてくるのぅ」

「今はルネティア・ロード・ロデスです、陛下」

「んん?そうだったかえ?」


ルネティアは特に相手をせず「はい」とだけ頷く。皇帝は「ふんふん……」と頷いて、アダの方に目を向ける。


「其方が次の〈英雄〉か」


皇帝が真っ直ぐにこちらを見つめた。こうしてみると、やはり威圧感がある。


「二つ名は決めたのか」

「名前?」

「あぁ、此奴は〈光明の英雄〉、トイフェルは光の裏側ということで、〈孤影の英雄〉じゃ。其方はどうする?」

「属性から取ることが多いよ〜。アダは火と風だよね?」

「……はい」


(でも、そんなことを急に言われても思いつかないな)


「〈炎の英雄〉とか?カッコイイと思うんだけど」

「いいと思う……です」

「そのままじゃないですか」


皇帝はアダの変な敬語も特に気にせず、ククと笑った。


「まぁ、貴族学院に入学するまでには決めておきなさい」


皇帝は穏やかな笑みを浮かべ、その後にスッと目を細める。

小広場の中に緊張が走った。


「アンジェリーネ、ルネティアよ。落ち着いて聞きなさい。十一年前の悲劇が……また起きようとしておる」

「……!!」


〈ヴェヒターの結界〉が眉を顰め、〈光明の英雄〉はピクリと肩を震わせて雰囲気が凍る。


(十一年前の悲劇……。何のことだ?)


「どういうことですか。もったいぶるのは止めていただいていいですか」


〈ヴェヒターの結界〉はかなり怒っていた。緑の瞳には冷たい怒りの炎が灯っている。


「落ち着きなさい。まだ確かなことは分からぬ」

「では、不確かな情報を教えないでくださいますか。あの事件でどれだけわたくしが……。アンジェリーネ様だってそうでしょう」

「あぁ、そうだね。陛下、それは封印が解けそう……ということかな?」


〈光明の英雄〉はニコリと微笑んだ。オパールの瞳は全く笑っていない。


(ホントにどういうことなんだ!聞ける雰囲気でもねぇし!!)


アダは黙って聞いているしかなかった。


「あぁ。第一師団の調べだ」

「……そう。信憑性が高いなんてこういうときは喜べないよ」

「あぁ。だから、アダの教育には力を入れろ。前回とは違って、人手はそこまで多くないからな」

「分かってるよ」


吐き捨てるように言って、〈光明の英雄〉は立ち上がる。〈ヴェヒターの結界〉とアダも立ち上がった。

そうして、皇帝との面会は終了した。



◇◆◇



「お久しぶりだな、〈光明の英雄〉殿。貴女がここにいるなど珍しい」

「まぁ、〈光明の英雄〉様!お久しぶりですわ」


馬車に戻ろうと、城の廊下を歩いているとき、前から歩いてきた集団に声をかけられる。

流石に先程のことを聞ける雰囲気でもない。言ってもらえるまでは黙っていた方が懸命なのかもしれない。


「わぁ、皇太子殿下、皇女殿下。お久しぶりですねぇ」

「えぇ、えぇ!ご活躍は耳にしておりましてよ」


どうやら、皇太子と皇女だったらしい。皇太子は頼もしそうな顔立ちをしており、皇女は優しそうでありながら芯の強さがありそうだ。


「わぁ、聞いてくださったんですかぁ。嬉しいですねぇ。ありがとう存じます~」

「これからも頑張ってくださいまし。わたくし、いつでも応援しておりますわ!何かあれば是非頼ってくださいませ」

「皇女殿下にそう言っていただけるなんて光栄ですよ~。では、また」


〈光明の英雄〉は皇太子と皇女に軽く手を振って会話を終わらせた。


「……なんか、陛下より敬ってるスか?陛下より偉いんスか?」

「いえ、彼らは陛下のお子様方ですよ。皇太子殿下に関しては次期皇帝です」

「えぇっ!あの人たちが!?」

「声が大きいよ」


眉を下げて、〈光明の英雄〉は唇に人差し指を当てる。




そうして、馬車に戻った。

無言の空間の中に、ガタガタと馬車の揺れる音だけが響く。


「あの、〈光明の英雄〉様は二つ名、どうやって決めたんスか?」

「ん?あぁ……。わたしは素直に〈光の英雄〉にしようと思ってたんだけどねぇ」

「それで?」

「うん、フェルトに言われた。ちゃんと、意味を持った名前をつけろってね。わたしも今ではそう思う」

「光明……どういう意味なんスか?」


〈光明の英雄〉は「うーん」と言って、顎に人差し指を当てる。


「『暗闇を照らす明るい光。希望』って意味。助けを求める人たちをそういう風に導いてあげられたらなって思いを込めて」


(すごく考えられてる意味だ。俺、難しい熟語は分かんねぇんだけど)


〈光明の英雄〉はアダの考えを読み取ったかのように口を開く。


「大丈夫さ。難しく考える必要はない。自分がどうなりたいか、どうしたいか。国民をどうしたいか、どうさせたいか、どう思ってほしいのか。そういう、目標みたいな感じだ。熟語が分からないのなら、辞典を開けばいい。いろんなものがあるはずさ。ルネティア、帰ったら図書室に案内してあげて」

「かしこまりました」

「アダ、できそうかい?難しいなら、ルネティアかフェルトに聞けばいい。フェルトにはちゃんと話を通しておこう」

「……はい、頑張り、ます……!」

「いい子だ」


〈光明の英雄〉は笑って、アダの頭をワッシャワッシャと撫でる。



(頑張ろう。〈英雄〉に選ばれたんだ。選んでもらったんだ。二つ名のことも、マナーのことも、言葉遣いも、勉強も、魔法も。全部、全部……!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ