月の先住者、ウサギ族の姫が登場。「私の餅つき場を返して!」
月面リゾートの開業により、銀河中からUFOが殺到していた。 アレンたちはドーム内の管理室で、売上(見たこともない宇宙通貨)を計算していた。
「アレンさん、この『コスモ・ゴールド』、地上の金貨換算ですごい額になりますわよ……」 「これで地上の借金(資材代)も完済だな」
そんな平和なひととき。 ドームの入り口で、警備ロボット(アレン製)と誰かが揉めている声がした。
「だから通せと言うておる! ここは妾の土地じゃぞ!」
モニターを見ると、餅つきの杵を背負った、白い和服姿の少女が映っていた。 頭には長いウサギの耳。そして真っ赤な目。 紛れもなく「月ウサギ」だ。
「……行ってみるか」
アレンたちが入り口に行くと、少女はプンプンと怒っていた。
「やっと出てきたか侵略者め! 妾は月の民の姫、ルナじゃ! 勝手に妾の餅つき場に温泉なんぞ作りおって!」 「餅つき場? ここ、ただのクレーターでしたけど」 「クレーターではない! あれは究極の餅を打つための『臼』じゃ!」
ルナ姫の主張によると、このクレーターは先祖代々伝わる聖なる臼らしい。 アレンは申し訳なさそうに頭をかいた。
「それはすみませんでした。……でも、もう温泉湧いちゃってるんですよね」 「むぅ……。なら、責任を取って妾に美味いものを食わせろ! 月の食い物はパサパサの宇宙食と餅しかなくて飽きたんじゃ!」
どうやら彼女も、アレンの飯テロには勝てない運命らしい。 アレンはニヤリと笑った。
「いいでしょう。ちょうど地球から『お月見セット』を持ってきたところです」
アレンが出したのは、月見団子……ではなく、「月見バーガー(アレン特製・半熟卵入り)」と「フライドポテト」だった。
「なんじゃこの茶色い物体は……? ぱくり」
サクッ。とろぉ~。
ルナ姫の動きが止まった。 半熟卵の黄身と、ジューシーなパティ、そして濃厚なソースが口の中で宇宙を描く。
「~~~~~~ッッ!!」
ルナ姫の長い耳が、ピーン!と直立した。
「う、う、美味いぃぃぃッ! なんじゃこれは!? 餅より美味いぞ!?」 「気に入りましたか? ここ(温泉)で働いてくれたら、毎日食べ放題ですよ」
「働く!! 妾は今日からバニーガールじゃ!」
チョロかった。 イグニスといい、人外姫たちはなぜこうも胃袋が弱いのか。 こうして、月面リゾートに「本物の月ウサギによる餅つきショー」という新アトラクションが追加された。




