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Health Control  作者: ZIRO
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第3話【UP&DOWN】

ダイエットする気なんて更々ないけど、なんか勢いでも言っちゃったもんは引っ込めらんなかった。


「あら、百華?どこ行くのこんな時間から」


玄関で靴を履いてたら、夕飯を作ってたお母さんが気付いて、キッチンからでっかい声で聞いてきた。


「ダイエット」


お姉ちゃんのせいでイライラしてるから、つい怒ったような声になる。お母さんは何も悪くないのわかってるのに。


「あら、今日も行くの?お姉ちゃんは?」


そんな様子のあたしにも、お母さんはいつもと変わらない感じで話してくるから、なんかそれが空気読めない感に感じて、余計にイライラする。


「行かないって」


「あら、そうなの?でも、こんな時間に一人は危ないわよ。お姉ちゃんと一緒に行きなさい。咲ぃー」


お母さんは、玄関からパタパタと階段下まで歩きながらお姉ちゃんを呼んだ。けど、どうせお姉ちゃんが文句言って、お母さんがそれに反論して、なんか鬱陶しい言い合いが始まる予感がしたから、その前に玄関を開けて逃げるように外に出た。




「ううぅ…寒いぃぃ……」


玄関開けて、2秒で後悔MAぁX!!


しかぁし!!


勢いで出てきちまった以上、ちょっとは走らなきゃなと思い、自分に気合いを入れて、とりあえず昨日のルートを走り出した。


走り出してちょっとして、2度目の後悔。


「うっ……」


ただでさえ怖い夜道。


そんな中でも、より恐ろしい雰囲気を醸し出してる竹藪が現れたのだ。


ただでさえ怖い上に、竹藪の脇に立つ街灯が絶妙に点滅してて、ホラー映画みたいでまぁ怖いのなんの。


ここまでたぶん家から1分ぐらい。怖いからルートを変えようと思って、来た道を引き返すと


「お姉ちゃん?」


街灯に照らされた丸いシルエットが、こっちに歩いて来た。


「何、もう帰るのアンタ?」


「いや、竹藪怖いから道変える」


お母さんと言い合いしてたにしちゃ、ずいぶん早いじゃないか。


てか……来たんだ。


「ふーん。じゃこっち行こか」


そう言って、お姉ちゃんは昨日よりだいぶゆっくり走り出した。


お姉ちゃんが無言で走るから、あたしも無言で走る。時々交差点に来ると、どっち行く?って聞くぐらいで。


なんで急に走る気になったとか、気になったけど聞かなかった。


走るってより、ほとんど歩くに近いペースだったから、あたしもお姉ちゃんも昨日みたいにダウンすることはなかった。


団地の中をたぶん30分ぐらい走った頃、どちらからともなく家に向かうコースを走っていた。




それから2週間ぐらい、あたしたちは二人で団地の中を走った。ペースは相変わらず歩く並で、コースは毎回気紛れ。


お姉ちゃんは文句を言わなかった。


だから、あたしも嫌な気分にならなかった。


まるで、夕飯の仕度が出来たから食卓に着くぐらいの自然な感じで、学校から帰った2人が揃うと、毎日ジャージに着替えて走りに出た。


4〜5日経った頃、団地を大回りしながら大通りのローソンまで走った。


「今日のコースで、走っても15分ぐらいか」


外から見えたコンビニの時計を見て、お姉ちゃんがそう言う。


あたしは家を出た時間だって覚えてなかったけど。


それからは、ローソンまでを往復するコースを走った。


団地の中を最短で抜けると10分かからないから、今日はこっちからとか、今日は児童公園の方からとか、気分を変えるようにコースを変えながら、団地を大回りするように走った。


3月に入ってすぐ、積もるぐらいの雪が降ったから、その日と次の日は走らなかった。


雪が降った日から3日目、お姉ちゃんにどうするか聞くと、


「どっちでもいいけど」


って、何やら曖昧な返事。


正直、あたしもどっちでもよくなってた。体重計ってたわけじゃないから、効果もわかんないし、ゆっくり走ってたからそんなに意味がない感じもしたし。


それに、食事制限もしてなかったから、ダイエットをしてるっていう感覚があんまりなかった。


ただ、お姉ちゃんの読んでた雑誌の裏表紙にあったダイエットサプリの広告が、ちょっと気になった。




それから卒業式までの約1週間は、特に何事もなく過ごした。


あたしは推薦で高校が決まっちゃってたからヒマだったけど、公立を受ける子達はこれからが本番。


遊びに誘える仲のいい子は皆んな公立を一般で受けるから、遊ぶ相手もいない。


あたしは結局部屋でゴロゴロする毎日に戻って、スマホで画像アプリや動画アプリを見ていた。


走ってたからか、そういう運動系のも見たりするけど、だからって自分で体を動かすことはなかった。


お姉ちゃんも、あれからやる気無くしたみたいで、私と同じように部屋でゴロゴロしてる。


「お姉ちゃん、何してんの?」


ゴロゴロしてるんだけど、なんか変な格好してるから気になって聞いてみた。


「プランク」


ぷら……何?


お姉ちゃんはそれ以上説明してくれないし、あたしもそれ以上気にならなかったから、あたしはまたスマホをいじってた。


つーか、みんな可愛いなぁ


SNSで見る女の子は、皆んな可愛い子ばっかり。


運動系のハッシュタグで見てると、ちょいちょいジムで筋トレしてる綺麗なお姉さんも出てくる。


中にはモデルさんかアイドルかって感じの、こんな人が筋トレ!?って思うぐらいスリムビューティーな人もいる。


あたしもこんな顔や体で生まれてたら、人生ちょっとは違ったのかなぁ。


もう諦めてデブで生きてくことを、受け入れちゃってるけど。


人生80年とか100年とかいうけど、あたしゃ15年で人生悟っちまったw


へっ!!


まあいいけどね。


そのおかげで、あたしは“明るいデブ”っていうキャラを手に入れられたんだし。


小学生の頃も、デブが原因でちょっとしたイジメに合ってたけど、このキャラのお陰で乗り越えられたし、あたしは気に入ってる。


運動系の画像見てると、やっぱり男性の方が多い。


ジャニーズみたいな爽やかボーイもいれば、プニプニのオジサンが頑張ってるのや、ガチムチのボディビルダーみたいな人もいる。


あたしはどっちかっていうと、日焼けしたスポーツマンて感じの、細マッチョぐらいの人がいいなぁ。


まぁ、そんな妄想したところで、あたしにゃ無縁だけどねwww


そんな理由で女子高選んだのもあるし。


恋愛には興味はない。


カッコいい男性を見て、カッコいいなぁとは思うけど、付き合いたいなぁとまでは思わない。


どうせ釣り合わないし。


だけど、共学に行くとイヤでも周りがそんなノリになる。


興味がないことで周りが盛り上がってても合わせられないし、恋バナなんかされた日にゃあたしゃついていけないよww


ちっとも理解できないのに「わかるぅ〜」とかムリムリ。


最近、あたしの仲良しグループで1番可愛いリナちゃんに彼氏が出来て、よく彼氏の話しするけど、「ふ〜ん」と「そーなんだー」しか返事してないwww


あ、そういえば楓香ちゃんは「あーわかるー」とか「そういうことあるよねー」とか答えてたから、もしかして楓香ちゃんも彼氏いるのか?


ま、どうでもいいけどね。


あとは、ちょっと地元から離れたいなーって気持ちもあるかも。


だから、同じ中学から行く子がほとんどいない、少し遠い所の私立にした。


今じゃ明るいデブやってるけど、元は陰キャだし。


仲のいい子は皆んな頭いいから、それこそ志望校の段階で釣り合わないし。


仲のいい子で、唯一私と成績近いユリちゃんは、あたしと同じぐらいのところ行くかなって思ってたけど、意外と偏差値の高い所を志望校にしてたから、やっぱみんなその先の将来のこととか考えてんのかなぁって、感心しちゃった。


皆んな今頃受験勉強してんのかなぁ。


すげぇよなぁ。


あたしはたかが高校受験に、そこまで真剣になれなかったよ。

ご閲覧いただきありがとうございます。誤字・脱字、矛盾点等ありましたら、ご指摘頂けると幸いです。

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