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Health Control  作者: ZIRO
17/23

第16話【陸上部】

なんつったっけ?クラウンなんとか…


あの、「よーいどん」のポーズ。体育で習った……


ああそうだ、クラウチングスタートだ。




放課後の校庭では、ソフトボール部やサッカー部の運動部が、大きな声を出しながら練習してる。


そんな校庭の一角には、100mの直前コースのスタート地点に2列に並んだ人たちがいて、その先頭の2人がクラウチングスタートに構える。


列の横に立った生徒が「よーい」って言うと、スタートの構えをした2人がグイッと腰を上げ


パンッ


と手を叩いた瞬間、全力で走り出す。


前の2人がスタートすると、すぐさま次の2人が位置につき、同じように手を叩く合図で駆けて行く。


「え!?マツコ陸上部入るの!?」


「うをっふ!?なんだ、姫ちゃんか。うん、まぁなんつーか、ちょっと、まぁ、本格的にやってみよっかなーって。ははは」


グランドを走る陸上部を眺めながら、教室で入部希望用紙に部活名を書いていたら、姫ちゃんが覗いてきた。


見られたのが姫ちゃんでまだよかった。あたしが陸上部だなんて、流石に恥ずかしくて他の人にはまだ言えないよ。


自分でも勘違いすぎるって自覚あるし、姫ちゃんが驚くのも無理はない。


90kg級の私が陸上部なんて、角界からジョニーズへ転身するようなものだ。


「マツコ…もしかしてダイエット?」


うおっ!?姫ちゃん察しが良すぎる!!


「いやぁ〜そういうんじゃないけど…お、お姉ちゃんがさ、ダイエット始めて走ってるから、私も無理やり付き合わされてっていうか、、、はははっ」


あれ?


「ふーん、そうなんだ。てか、マツコお姉ちゃんいたんだ」


「う、うん。あれ?え?姫ちゃん知らなかった?」


「うん、初聞き」


「そっかぁ」


マツコシスターズって、中学で割と知られてると思ってたけど、そうでもなかったか。


いや、それよりも


姫ちゃんが、キョトンとした顔で見てる。


自分でもわかるぐらい動揺してる。


ダイエット目的で陸上部に入ろうとしてることがバレたくない……じゃない。


身体測定の時、あんなにフラフラになるまで頑張ってた姫ちゃんを、あたしは他人事みたいにしか思ってなかったのに、なんで急にダイエットしようって思ったの?って、ツッコまれやしないかっていう動揺。


まさかね、


名前も知らない、年上の男性(ひと)に告白したくて、痩せようと思ってる……


なんて、言えるわけない。




「桜井さーん」


教室の外から姫ちゃんを呼ぶ他のクラスの子の声がした。


さすがだなぁ姫ちゃんは、もう他のクラスの友達がいるのかー。


しかも、学校一可愛かった姫ちゃんと並んでも、遜色ないぐらい可愛い。


2人が喋ってると、まるでアイドルグループのMV見てるみたい。


ああああ、いいよなー、ああいうの!!


痩せたからって、姫ちゃん並みに可愛くなれるわけじゃないけど、でもあのぐらい細くなれば、あたしだってあの中に混ざってても、文句言われないだろうな。


やっぱ、目標は姫ちゃんだな!


姫ちゃん体型になるまで、陸上部で走って走って走りまくるぞ!!




そんな甘っちょろいことを考えていた時代が、あたしにもありました。






「ぶはぁー!!!!ぶはぁー!!!!」


ちょ、やば、しむ!!


速い!!


みんな速すぎる!!




部活初日


先輩達との自己紹介が終わり、全員でストレッチ


ストレッチが終わると、先輩達は外周を走り、その間私たち一年生はマネージャーの先輩の指示で器具の準備をした。


準備が終わったら1年生は外周を走るんだけど、スタートからみんなのペースが超速い!!


最初はなんとか食らいついた。


てか全力ダッシュ。


けど、校門の坂で置いて行かれ、最初のコーナーを曲がる頃には50mぐらい離されてた。


私が、二周目の最初のコーナーを曲がる頃、先頭の子に抜かれた。


そりゃ、最初からついていけないのはわかってた。


けど、ちょっとこの差は焦った。


結局、みんなが3周走り終わる頃、私は2周目を走り終えて倒れ込んだ。


「小松、大丈夫か?」


顧問の酒井先生が声をかけて来た。


「だ…だい…」


大丈夫なわけない


けど


「大丈夫…です…」


て言うよね


「そうか、まあちょっと休んでろ。よし、他の連中は100mダッシュ!!」


その日はその後ずっと見学してたけど、情け無い気持ちより、こんな厳しさについて行きたくないって気持ちの方が大きかった。


「小松さん、ちょっと手伝って」


不意に呼ぶのは、2年生のマネージャーの先輩…ハヤシ先輩だったかな


呼ばれて器具庫の方へ行く。


ハヤシ先輩は、デカ眼鏡の眼鏡っコで、オタク漫画のサブキャラにいそうな、グランドにいるより、教室の隅っこでラノベ読んでる方が似合ってそうな文化系タイプ。


マネージャーって、男子の野球部にしかいないと思ってた私は、まず女子校にマネージャーがいることに驚きだった。


部活初日は、マネージャーの手伝いをして終わった。




次の日、疲れすぎて朝寝坊して、電車に乗り遅れた。


乗り遅れたって言っても、陸上部の朝練に間に合う電車に乗れなかっただけで、授業には間に合ったけど。


部活の時間になり、顧問の先生に寝坊して朝練サボったことを謝って、また昨日みたいにみんなで器具の用意をしながら、他の一年部員のことをチラ見する。


特に走る系の種目の子達は、みんな体が細い。


中には砲丸投げとか、パワー系の種目もあるから、ガタイのいい子もいるけど、あたしみたいなブヨブヨのデブは1人もいない。


やっぱ、高校まで来て陸上部やろうって子は、みんな本格的だなぁ。


あたしなんかが、付いていけるわけがない。


だから今日は、自分のペースで走ろう。



そんなことを考えていた。



昨日より遅いペースで走ってた気がしたけど、また皆んなが3周走り終えたところへ、2周目を走り終えて合流できた。


昨日のように倒れこむことはなかったけど、疲れて立っているのがしんどかったから座ってたら、酒井先生からまた見学と言われた。



………



「小松さん」


「…は、はいっ!!」


マネージャーのハヤシ先輩に声をかけられ、バッと顔を上げた。


「ふふふっ、疲れちゃった?」


「え?」


「何度声掛けても起きないんだもん。昨日と今日で相当疲れちゃったんだね」


文化系眼鏡女子の良く似合う、優しい笑顔で語りかけられながら、何故かボヤボヤする頭で状況を考えて……


「え?私、寝てました?」


何があったか、ちょっと理解した。


「うん、ぐっすり(笑)」


どうやら座ったまま寝ていたらしい。


恐るべしデブの安定感。


昨日と同じく、今日も部活が終わるまで、ハヤシ先輩の手伝いをした。




「ただいまー」


「おかえり桃華ー、ご飯もうすぐだから着替えてらっしゃい」


「はーい」


家に着くまでの記憶があんまりない。


部活が始まってから姫ちゃんと帰ることもなくなったから、電車の途中から1人になる。


フラフラ帰って来たんだろうなー。


「明日は部活あるの?」


食事の時にお母さんが聞いてきた。


「あ、ああ、うん」


「何その返事は。あるの?ないの?」


「あるよ」


そっか、土曜日だけど部活あるんだ。


中学は一応美術部に入ってたけど、ほとんど行ってなかったからなぁ。


「じゃあ、お弁当いるのね」


「うん」


「桃華、あんたご飯もちゃんと食べなさい」


「いらないってば」


姫ちゃんみたいな体型になって、先生に告白するんだと決めたあの日から、私は一切の炭水化物を絶っていた。


芋は大丈夫と思ってポテチ食べてたら、姫ちゃんからジャガイモも澱粉があるからダメだよと言われ、ポテト系の物も避けるようになった。


「ダメよ!!アンタ陸上部入ったんでしょ!?走るんなら体力つけなきゃいけないから、ちゃんとご飯も食べなさい」


「いらないって言ってんでしょ!!」


「何その口のきき方は!!お母さん、あんたの身体を心配して言ってるのよ!?」


「じゃあ、心配しなくていいよ!!栄養ならここにしっかり貯めてるから」


言って腹を叩いてみせる。


お母さん譲りの大きなお腹を。


「そう言う問題じゃないの!!」


「ああ、もう煩い!!ごちそうさま!!」


まだ残ってるおかずを残飯入れに捨てて、私は2階へ上がって行った。




翌日、お母さんに叩き起こされて遅刻ギリギリで部活に着く。

ご閲覧いただきありがとうございます。誤字・脱字、矛盾点等ありましたら、ご指摘頂けると幸いです。

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