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Health Control  作者: ZIRO
11/23

第10話【泣いてもいいよ】

ユリちゃんは、恋愛圏外のあたしからしたら、ものすごく大人な経験をしてた。


それこそ、陽キャな1軍グループの子達が話してる内容みたいな。


そんな大人な経験までしたキミが、今さらあたしみたいな猪女に何を聞いてほしいんだい?


「彼、優しいからさ、私にずっと嘘ついてたんだ…」


ええっと………


優しい()()、嘘ついてた?


「……どゆこと?」


あたしゃ全然わからないよ、ユリちゃん。


「彼、本当は好きな人がいたんだって」


「うん…ん?」


え?ユリちゃんと付き合ってるのに?


ああ、もしかして、初恋の人が忘れられない……とか?


その人を忘れるために、ユリちゃんと付き合ったとか……


そうすると、ちょっと不憫かも


「私と知り合う前から好きだったみたいで、でもその人はたまにしかオフ会来ないし、美人でみんなから人気だったから、なかなかチャンスがなかったんだって」


「…え?」


ちょっと待って、最近の話?


「私と付き合ってからも、気になってたみたいで……たまたま今年の初詣にみんなで行ったときに、その人も来てたんだって」


「……え?」


付き合ってからも、気になってた?


え?どういうこと?


「お詣りして、その人に何お願いしたか聞かれて、『君と付き合えますように』って、言ったって……」


「はあ!?マジで!?」


なんだと?


ユリちゃんと付き合ってるのに、他の人も好きで?


ユリちゃんと付き合ってるのに、君と付き合えますように?


どういうこと?


ていうかユリちゃん、あたしのリアクションにも何か反応しておくれよw


けどまあ、今の話の最後の方は、ユリちゃんの声は涙で途切れ途切れになって、なんとか聞き取れるぐらいだったから、がんばって話してくれてるのが精一杯なんだろな。


溢れ出した涙を拭って、気を取り直したユリちゃんは、また語り始める。


「でも、みんな私と付き合ってるって知ってたから、冗談だと思ったって」


「冗談だよ、たぶん」


そうじゃないと、理解できない。


でも、そんなあたしの無意味な相槌に、ユリちゃんは小さく首を横に振る。


「あとから…聞いたんだけど、私は、受験があるから……来れないって、言ってたって……」


「ふぬ?」


「私……初詣の、話、なんか……聞いてなかった……」


「え?…それって」


気を取り直して頑張って話してたユリちゃんは、ついに嗚咽混じりの涙声になった。


「その人が…来るって……解ったから……私を…誘わなかったって……ううっ…」


「なんじゃそりゃ!?」


堪え切れなくなって、ついに顔を伏せて泣き出すユリちゃん。


もうなんか、頭の中で状況を整理できなくなってる恋愛圏外のあたしだけど、そんな大人のドロドロに巻き込まれて、ユリちゃんがものすごくツラい恋愛してるのはわかった。


ていうか


「それが、『優しい嘘』なの?」


さっきからずっと気になってたこと。



──彼、優しいからさ、私にずっと嘘ついてたんだ──


いやいやいや、どう考えても優しさのカケラもないでしょ!!


なんでそれを「優しいから嘘ついてた」なんて言えるんだい!?


実際、キミはそんなにも泣いてるじゃん!!


ユリちゃんは、涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げて、こっちを向いてなぜか笑った。


「はっ、バカみたい!!優しくなんかないよね」


「そうだよ!!だいたい、優しい人なら嘘つかないよ!!」


ユリちゃんは、ちょっとだけ力強く「うん」て頷いて、涙を拭った。


「この前、久しぶりにオフ会に行ったんだ」


少し、気を取り直したように、嗚咽の止まったユリちゃんはまた語りだす。


「彼と付き合うようになってからはね、私への連絡は彼がしてくるようになってたから、私、ずっとオフ会やってないと思ってたの」


「…ん?」


どういう意味……


「でも、たまたま主催の人が連絡くれて…卒業式の日に「卒業おめでとう」って連絡くれて、そのままちょっとやりとりしてたら、今も…最近もオフ会やってるって言われて、それを彼氏に聞いたら、言うの忘れてたって」


「…どういうこと?」


「なるよね、どういうこと?って。なんで教えてくれなかったの!?て言ったら、なんか逆ギレされて、そのことでケンカになったんだけど…」


ああそっか、そういうことか。


ユリちゃんには、オフ会の連絡は彼氏から来るはずだから、彼氏からオフ会のこと何にも聞いてなかったユリちゃんは、オフ会ずっとやってないと思ってて、でも主催者さんに聞いたら本当はオフ会やってたってことか。


でも、なんで彼氏はユリちゃんにオフ会のこと伝えなかったんだ?


彼氏が伝えることになってたんだよね?


「とりあえず、次のオフ会は一緒に行くってことで落ち着いたんだけど…」


「うん…」


「彼氏、その日急に行けないって言い出して、でも、それは、私の卒業祝いも、兼ねたオフ会だったから、どうしたら、いいか……主催の人に聞いたら……迎えに来てくれて……」


ユリちゃん、また泣きそうなのを堪えながら話してる。


泣いていいよあたしで受け止めてあげられるかは、わかんないけど……


「オフ会行ったら、私たち……」


涙で言葉が止まるユリちゃん。


また何か、よっぽどツラい事を言おうとしてるのかな…


「わた、したち…ううっ……別れた…ことになってて……彼氏は……」


ユリちゃんの嗚咽を堪えた涙声に、あたしの目頭も熱くなってきた。


別れたことに?


いろいろ混乱して聞いてたけど


よく考えたら、卒業式の日に彼氏はユリちゃんを迎えに来てたんだ。


見るからにラブラブそうな感じで、キスまでしてたのに


あのあと、そんなケンカしてて


別れたことになってた?


頭の中は混乱しっぱなしだけど、たっくんにあたしは殺意すら湧いてきたよ。


ユリちゃんは、小さな拳を膝の上でぎゅっと握って、がんばって泣き崩れるのをこらえてるのか、その手が震えてる。


あたしは、思わずユリちゃんの震える小さな拳を握ってた。


下を向いてたユリちゃんは、ちょっとだけ顔を上げた。


「彼氏は……あたしが…いない間に……その美人さんに猛アタックしてるって…」


「なんじゃそりゃ!?」


ちょっと待てちょっと待て


えーっと


ユリちゃんと彼氏は別れたことになってて


彼氏は美人さんに猛アタックしてて


でも、卒業式には迎えに来て、あんなラブラブなキスしてた!?


マジで意味がわからない……


「美人さんは、そんな風に言い寄られるの慣れてるから……のらりくらり、かわしてるって言ってた、けど」


……もっと別世界の人だ


「自分が悪くないのに、ごめんねって言ってくれて、私とまだちゃんとケリがついてないんなら、そっちが先だよねって、彼氏を呼び出しくれて」


うわぁ、めちゃくちゃ大人な世界だ。


ドラマでしか見たことねぇよ、そんな修羅場www


「いろいろあったけど、その日はもう遅かったから、また明日ちゃんと話すって言って終わりになって…」


「ふんふん」


「それが()()


「へぇ……え!?昨日!?じゃあ今日は……」


「うん、本当は彼氏とちゃんと話す予定だったんだけど、逃げられた」


ユリちゃん家からローソンまでは、あたしん家からより倍ぐらい遠い。


歩いて来てたのを変だなって思ってたんだけど…車持ちの彼氏との約束で来てたら歩きだわね。


「マツコ…、私……どうしたらいいかな?」


やっとこさ頭の中で状況が整理出来てきたあたしに、どうしたらいいなんて聞かれても


「いやあ、あたしにゃ遠い世界過ぎてなんとも…」


本物のデラックスなマツコさんなら、何かいいアドバイスくれるんだろうけどね。


彼氏どころか、恋愛として人を好きになったことすらない私には、何も言ってあげることができないよ。ごめんけど。


「だよね…」


「あ……ああ」


そんなあたしの心の内を知って知らずか、ユリちゃんはサクッと肯定する


いや、事実だけどさ、アッサリ認めないでくれw

ご閲覧いただきありがとうございます。誤字・脱字、矛盾点等ありましたら、ご指摘頂けると幸いです。

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