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ある勇者パーティの追放事情

追放。

それは不要な者や有害な者、危険人物、不法入国者などを社会から追い払う事を意味する。


一族からの追放、家からの追放、国外追放、楽園への追放、永久追放等などと世の中には色々な追放がたぐいに存在する。


これは、とある勇者パーティー内にて起きた追放から始まる物語。





とある砂漠都市。

都市内にある宿屋兼酒場、その1階の酒場にて5人の勇者一行はテーブルに囲いながら、否、正確には2人の男が互いに向かい合い座り、右側の席には魔術師の少女と女騎士、左側の席には神に仕えし白装束を着た聖女が座っていた。すると、金髪の男はニヤリと笑いながら向かいに座ってる黒衣の青年に向けて言い放った。


アラン「お前は追放だクロト!」


何時もながらに金銭確保の探索が終わり、稼ぎの分配、となった時に突然リーダーである勇者アランからそう告げられる支援者クロト。


彼とアラン以外のパーティーの他のメンバーは互いが眼を向けても気不味そうな顔をしながらもクロトを引き止める声はなく、眼を逸らすのみ。


アルト「これでわかっただろ、貴様は明日限りで追放だ!今日の分前わけまえだけは渡してやる。明日には荷物を纏めて出て行ってくれ、この無能の支援者が!」


そういうなり、アランは明らかに軽そうな金の入った皮袋をクロトの眼前に投げ置くが、クロトは投げられた皮袋を手に取る気は無かった。


ニヤニヤと笑いながら彼が投げ置いた皮袋を手に取る光景を楽しむ最中、それ以外の3人の仲間達はクロトの様子が可笑しい事に気付く。


クロト「悪いが断る、このパーティーを抜ける積りは更々無い。」


アラン「な、何だと!?断るってどう言う事だ!!」


クロト「それは、お前は兎も角、間に座ってる彼女達の意見はどうだと思う?」


瞬間、アランは目線を仲間達の方へと向けた途端、3人は何も言わずに縦に頷く、何せ彼女達はクロトの意見に内心賛成していたからだ。


エリス「私はキクチの意見に賛成よ。」


女騎士エリスだけでなく、聖女ルキナ、そして魔術師セレナも何も言わずにクロトの意見に賛成する。


クロト「この様子だと3人は俺の追放は反対の様だな。そもそもアラン、お前は『支援者』と言う職業を何だと思う?」


アラン「そ、それは...。そんなの簡単な答えだ!支援者と言うのは後方でアイテムを使ってを前衛の俺達の支援サポートをする職業じゃないのか?だ、だが、それがどうした!そんな理由で俺がお前を追放しないと考えてると思ったか!!?」


クロト「ああそうだ。支援者はアイテムを使って味方を支援する、だが、通常の戦闘時ではアイテムの使用は一度きり、しかし、使用者は戦闘開始と同時に先制攻撃ならぬ先制支援を行う、つまり、支援者は2度アイテムを使用する事が出来るんだよ。」


アラン「そ、それがどうしたんだ!?内容を聞いた所でな、お前は無能の最弱職に変わりは無いんだよ!!お、お前等だってそうだろう!?」


エリス「私は、クロトの追放に反対だ。彼の支援が無ければ、今日の探索で全員死んでたかもしれない。想像して見ろアラン、クロトが抜けた私達が次の探索で全員死ぬと言う想像を。」


アラン「お、俺達が、死ぬだと…。」


瞬間、アランは想像する、クロトの抜けた勇者パーティーが探索の最中に自分達が魔物達に殺される光景を、アランは額に冷や汗が垂れる。


アラン「そ、それがどうしたんだ!?幾ら内容を聞いた所でな、お前は無能の最弱職に変わりは無いんだよ!!お、お前等だってそうだろう!?」


エリス「………アラン、単刀直入に答えよう、私はクロトの追放に反対だ。彼の支援が無ければ、今日の探索で全員死んでたかもしれない。」


セレナ「私もエリスの意見に同意するわ。確かにクロトは最弱職だけど、私達のパーティーに必要な存在よ。それを理解出来ないのはアラン、貴方1人よ。」


ルキノ「それにアラン様。今日の探索でクロトさんが先制支援をして下さら無かったら、私達は全滅していた可能性があります。」


クロト「それにだアラン、旅路での荷物持ちは俺だ。俺が抜けたら誰が荷物を持つ?お前1人で持つのか?その重さは人間の腕2本だけじゃ足りないぞ。それに、戦闘中にポーションなどの回復アイテムを何時でも直ぐに取り出して使えるようにするのは誰がするんだ?」


アラン「ぐぬぬ...」


クロトの反論の棘が身体に突き刺さりながら悔しがるアランは握り拳を作り震えさせる。


エリス「それとだ。アラン、確かにクロトは最弱職の支援者だが、彼は冒険者ギルドから王国へと派遣された100人に1人しか存在しないと言われる支援者専用の特別技術エクストラスキル道具箱アイテムボックス∞』の所有者でもある。見ろ、通常の支援者が背負う筈の大型鞄が背負われていないだろう。」


そう、クロトの背中には通常の支援者が背負っている筈のリュックサック型の大型鞄が背負われていないのだ。


ルキノ「そうです、アラン様。クロトさんが普段から大型鞄を背負っていなかった理由がまさにその技術スキルなのです。支援者専用の技術スキルである『道具箱∞』は所有者の総合値ステータスに関係無く、アイテムを無制限に収納できる技術何です。つまり、クロトさんのコートの小さなポケットの中にも大量の回復アイテムや補助アイテムが入っていると言う事です。手品師が扱う奇術きじゅつの様に。」


アラン「巫山戯るな!!何が100人に1人しか存在しない支援者だ!!特別な支援者でも最弱なのは変わらないんだよ!!」


クロト「こんな事を言ってもお前は俺を追放する事に変わりは無いんだな。そんなお前の我儘のせいで、シオンとナターシャはお前に付いて行けずにパーティーから抜けた事を忘れたとは言わせないぞ!!」


シオンとナターシャとは勇者パーティーの仲間の事である。


シオンはエルフ族の弓使いの女性。もう1人のナターシャはケットシー族の盗賊にして勇者パーティーの斬り込み隊長役でもあった。


とくにシオンはキクチとは職業とか種族の立場の壁を越えた恋人同士でもある。それはシオンがパーティーから抜けても関係は変わらずにいた。


アラン「シオンとナターシャは元々俺のパーティーに必要な奴等じゃなかったんだよ!彼奴等は俺の威厳を見て自主的に出て行っただけだ!!」


クロト「………そうか、たった今気付いた。この勇者パーティーに必要無いのは、アラン、お前の様だな。」


何とクロトは勇者パーティーのリーダーにして勇者アランの追放を宣言したのであった。


セレナ「その通りね。私は最初からクロトの方がアランよりずっと頼りがいがあると思っていたわ。それに比べてアラン、貴方は、ただ運良く神の啓示を受けて勇者になっただけ、技術スキルもなければ、魔法も使えない貴方何て此処では何の役にも立たないわよ。」


アラン「お、俺が、追放?役に立たないだと!?俺が無能だと言いたいのかセレナ!!」


怒りの矛先をクロトに向けると共に席を立ち上がりながら怒鳴り放つ。


アラン「巫山戯るな!!俺は勇者だぞ!?リーダーであるこの俺様が抜けたら魔王討伐はどうなると思ってやがるんだ!!」


クロト「アラン、何時までもそんな事を言える立場だと思ったら大間違いだ。ルキナ、セレナ、エリス。3人に見せて貰いたい物があるんだ。これを。」


コートの小さいポケットから紙の束をテーブルに置き、ルキナはそれを手に取って眼にする。


ルキナ「こ、これって!?」


クロト「旅を始めてから今まで買い込んだ物の請求書だ。」


ルキナは1枚1枚と請求書を眼に通すと手を震えさせながら、クロトに合計金額を聞き出した。


ルキナ「ク、クロトさん。これらの請求書全部の合計金額は幾らなのですか?どうしてそんなに多くの物を買い込んでいたので!?」


クロト「アルトが強引に購入したんだ。回復薬類以外は兎も角、武器と防具が異常な数で無駄に購入している、とくに何の効果も無い金のネックレスを10個程。しめて150万ゴールドだ。」


エリス「何ですって!?たったそれだけの理由で支援者であるクロトがここまで苦労していたというの!?一体どれほどの金額なのか想像もつかないわ!!!」


セレナ「これは幾ら何でも無駄遣いし過ぎだね、アラン、そもそも同じ武具を買ってどうする気だったのさ?」


アラン「お、俺はこの世界を救う勇者なんだぞ!だったら見た目からでも華やかにならなきゃならんだろ!!それの何が悪いんだ!?それに俺は回復薬なんか必要ねぇんだよ!!」


するとクロトはある事を思い出し、アランに言った。


クロト「そうだアラン、金で思い出したぞ、この前俺から貸した2000ゴールドを返して貰おうか。」


アラン「そ、それは…。」


エリス「金を貸しただと!?アラン!!お前自分が何をしたのか分かってるのか!?」


セレナ「ちょっと待って、金を貸したって言ったよね!?確か勇者が金貸しする事は禁じられてる筈だよ!!」


クロト「ルキナ、確か勇者の規則として金貸しは禁じられていたんだったよな?念の為に再度、確認してくれ。」


刹那、ルキナは真剣な表情をしながら最初の勇者規則をアランや仲間達に伝えた。


ルキナ「はい、その通りです。勇者規則第1条、勇者がパーティメンバーを始めとした如何なる相手に対して不当に資金を供与することは禁止されています。」


アラン「うっ……な、何だよ!?金を借りる位で規則破っても良いじゃないか!!」


クロト「その俺に貸した金でカジノに行くもスッカラカンだったよな?」


アラン「そ、それは…。」


エリス「ん?クロト、今さっきカジノって言ったよな?確かこれも規則に反してるぞ!?」


クロト「そうなのか?ルキナ。」


ルキナ「はい、それも間違いです。勇者規則第2条、勇者はカジノに入場して資金を賭け事に使用することを禁止しています。」


ニコニコと微笑みながらルキナは2つ目の勇者規則をアランと仲間達に伝える、その時、アランはクロトも賭け事をしてる事を思い出して反発した。


アラン「ちょ、ちょっと待てよ!!賭け事ならクロトだってしてるじゃないか!?」


エリス「何?」


アラン「買い出ししてる時に見たんだよ、彼奴が店主相手に値引き交渉をしてるのをな!!」


クロト「………それが、賭け事だと言うのか?ひかし変だな、先程ルキナの言った勇者規則にはカジノへの賭け事は禁止してるが、商品の値引きは禁じられてはいないぞ。そうだよな、ルキナ。」


クロトの言葉に同意するように縦に頷くルキナ。


ルキナ「はい、確かに勇者規則には商品の値引きは禁じられていません。ですからクロトさんは規則違反を犯したわけではありません、因みにオークションも非公式の闇オークションに参加しなければ違反では有りません。」


アラン「こんな事が認められるか!!何で俺が責められてクロトの言う事を理解してるんだお前等!!お前等は」


そんな納得を認めずに怒鳴りながらテーブルを叩くアラン、すると、アランの服の懐から1枚のカードがハラリと床に落ちる。


エリス「ん?何か落ちたぞ?」


アラン「なっ!?そ、それを拾うな!!」


エリスはそのカード拾うとアランは慌てながらアランを止めようとする。


しかし時既に遅し、カードを拾ったカレンは顔を真っ赤にしながらアランに叫んだ。


エリス「こ、これは!!この砂漠都市1番と言われてる高級風浴店の会員カードじゃないか!!アラン、何でお前がそんなカードを持っている!!?」


アラン「え、えっと、そ、それは…。」


クロト「風浴だと?ルキナ、確かこれも勇者規約に反するよな?」


答えられずに口をパクパクさせていたアランは、クロトの質問にビクッとしながら聖女ルキナを見つめる。彼女の眼に光は無く暗転していた。


ルキナ「はい、もちろんです。勇者規約第3条に風俗店への出入りは禁止されています。」


女子陣3人は冷たい眼でアランを見つめながらドン引きしていた。


セレナ「うわあ、アラン最低…。」


エリス「正直、こんな奴が勇者だと思った私が馬鹿だったかもしれない…。」


ルキナ「敢えて言います、不潔です…。」


クロト「アラン、そもそも風浴での金はどうした?パーティーの所持金は俺が管理してるんだ?お前、まさかと思うが、借金、してないよな?」


威圧の籠もったキクチの眼にアランは怯える。


アラン「ち、違う!俺が、俺が個人の所持金で払ったんだ!本当だぞ!!」


その時だった。何かタイミング良く2人の強面の戦士を引き連れたオカマが勇者一行の元へと現れた。


謎のオカマ「あらあら、此処に居たわねアランちゃん〜、昨日お姉さんと遊んでくれたあのお金なんだけど〜?昨夜から今朝にかけて、すごく熱くて素敵だったわね〜。」


突然現れた謎のオカマとその仲間達を見て思惑するアラン以外の面々。


エリス「えっと、失礼ながら、何方様で?」


クロト「あ、もしかして、アランが貸した借金の主で?」


オカマ改めてが借金取りは営業スマイルで縦に頷く。


オカマの借金取り「まあ、そうなのよ〜、この子が私達の仕事場からお金を借りて高級風浴を満喫しちゃったのよ。」


セレナ「はぁ…?アラン、本当にそんなことしたの?」


クロト「おい、アラン、答えてみろ。お前、本当にその人から金借りたのか?」


アランは身を震えさせながら目線をルキナの方へと向けると、ルキナは冷たい笑顔で微笑みながら一言呟いた。


ルキナ「再び勇者規則第1条。勇者がパーティメンバーを始めとした如何なる相手に対して不当に資金を供与することを禁止されていますよね?」


アラン「ひいいいいいっ!!!?」


冷たいルキナの笑顔にアランは恐怖する、そんな最中、クロトは借金取りにアランが借りたお金が幾らなのか聞き出す。


クロト「あの、因みに借金は幾らなのですか?」


オカマの借金取り「へえ、あんた達、アランちゃんの仲間かい?借りたのは合計200万ゴールドだよ。」


クロト「200万ゴールド!?アラン、お前正気か!?風俗でそんな金使うなんて!」


アラン「ち、違う!俺、俺はそんなこと…!」


エリス「じゃあ一体どんな理由で200万もの大金を使ったっていうの?」


セレナ「うわぁ、最低、まさかあんた風俗でそんな使い方したの?マジでありえないわ」


ルキナ「これはもうダメですね。罰を与えなければいけません。」


笑顔の裏側に激しいオーラを放つエリス、そんなエリスの姿を見た仲間達はもうどうしようも出来ずに見てるしか出来なかった。


クロト「駄目だ。ルキナがあんなに怒ったらアランも終わりだな。」


エリス「ああ、私もそう思う。」


セレナ「触らぬ神に祟り無しだね…。」


クロト「でも、何で俺にだけ丁寧語を使うんですか?」


オカマの借金取り「ああ、それはね。あんたが随分と人当たりが良さそうだからさ、ちょっと優しく接してみたんだよ。でもこのガキが借金返さずに逃げ出したもんだから、優しくもいられなくなったってわけさ。」


クロト「はぁ…、そういうことだったのか。アラン、お前この人からお金借りて何に使ったんだ?」


アラン「………風浴です、全て風浴に使いました。」


仲間達『やっぱり…。』


仲間達は内心考えは同じだった。


エリス「やっぱりか…。」


セレナ「あーあ、バカな奴。」


ルキナ「本当に救いようが無いですね。」


クロト「全く呆れるよ、アラン。お前それでも勇者か?」


オカマの借金取り「おい、このバカ野郎!アタシの金、返さねえのか?さっさと払え!!でないともう風俗にも行かせねえぞ!!」


アラン「ひいいいいっ!!」


クロト「こんなに勇者規則を破ってしまったとなると勇者の資格は本当に無い見たいだな。」


仲間達『その通りだ!』


仲間達と借金取りに責められながら近付き涙目になって尻餅を付くアランは直ぐ様にクロト達と借金取りに土下座した。


アラン「す、すみませんでした!!二度と勇者規則を破るようなことはしません!!」


クロト「駄目だ。」


アラン「何で!?」


オカマの借金取り「おいおい、何言ってやがる?アタシの金返さないと行けないだろ?風俗にも行けねえんだから体でも売って金稼いで来い!」


エリス「今、気付いたのだがアラン、お前、本当に勇者なのか?」


アラン「…は?」


セレナ「そう言われて見たら、今までの戦いで一度も聖剣を使用しなかったね?何で?」


仲間達から眼を逸らすアラン。クロトはある事を思い出した。


クロト「そう言えば、戦闘に入った時な何でお前以外の面々は前衛何だ?俺は兎も角、何で戦闘職でもない回復役の僧侶を務めてる聖女のルキナまで前衛にしてるんだ?」


ルキナ「それは…。」


アラン「お、おい!!黙れ!!だ、黙らねぇと殺すぞ!!」


慌てるアランは仲間達を脅しがてらに黙らせる。


クロト「アラン、仲間達に殺すと言ったとなると、本当に勇者じゃないと疑惑が走って来たんだが。」


エリス「確かに、聖剣を抜けた姿を見た事無いな…。」


クロト「なあ、アラン、試しに聖剣を抜いてみろ。」


アラン「こ、これ以上俺に恥をかかせる積りか!?おい、この馬鹿野郎!今直ぐ黙らないと本気で許さねえぞ!!!」


クロト「まさか抜けないのか?聖剣。」


最弱の支援者であるクロトの言葉にアルトの顔が真っ青になる。汗が流れ始め、目を泳がせながら答える。


アラン「そ、そんなことねえよ!!俺が本気で抜こうと思えば何時でも抜けるんだぜ?ただ...今は時期じゃないだけだよ!うん!」


エリス「さっきから言ってることが支離滅裂だな。」


セレナ「何か、アランが勇者じゃない気が増して来たのは気の所為?」


クロト「だったら抜け、聖剣を。そしたら勇者だって認めてやるよ。」


聖剣を抜けとアランに挑発するクロト。結果、アランは聖剣を抜く体勢に入った。


仲間達や借金取り達、周りの客達、皆が見守る中、アランは聖剣の柄を握り締め、力を込めて抜こうとする。しかし、びくともしない。アランの顔が赤くなり、怒りの表情でクロトを睨みつける。


アラン「糞っ!!これはいったいどういう…!!クロト!!お前が呪いを掛けてでも聖剣を俺から隠そうとしているんだな!?」


クロト「もし呪いを掛けてるならルキナが気付く筈だ。ルキナ、聖剣の状態を鑑定スキルで調べてくれ。」


聖女であるルキナは自分の『鑑定』の技術スキルで聖剣の状態を調べた結果。


ルキナ「聖剣には何の問題もありません。ただ、アラン様の資格が足りないだけです。」


クロト「と言う事はつまり…。」


アラン「あ、ありえねえ!!!俺が勇者じゃねえってのか!?こんな馬鹿な話があるかよ!!!」


エリス「つまり、今までのアランの行動が全て偽りだったと言うのか?」


セレナ「これが何を意味するのか分かってる?王国の恥さらしよ。アランが聖剣を抜けないなんて、この事実が広まったら大変なことになるわ。」


この時のクロトはアランが勇者じゃないとどうなるのか、この後の事を考察した。分かってると言えど一応、ルキナに聞き出した。


クロト「………ルキナ、アランが勇者じゃないとなると聖剣はどうなるんだ?」


ルキナ「えっと、その、聖剣は…資格のある者が触れると自動的に新しい担い手を見つけます。しかし、今のところ聖剣が反応する気配がありませんね。」


クロト「いや待て、流石に女の子であるルキナを聖剣何て重い物を持たせる訳には行かないな。ルキナ、一時的だが、聖剣は俺に預からせてくれないか?道具箱なら安全だ。」


エリス「そうよ、その方がいいわ。ルキナ、あなたのような女の子がそんな危険なものを持つべきじゃないわ。クロトの言う通り、道具箱の中に入れておくのが正解よ。」


セレナ「そうね。私もクロトの提案に賛成よ。ルキナ、貴女も異議は無いでしょ?」


ルキナはう〜ん、と悩み出すが、手で自らの頬を叩いて決意した。


ルキナ「分かりました。それでは聖剣はクロトさんが一時的に預かって下さい。ただし、絶対に無くさない様にお願いします。これは王国にとって非常に重要な物なのですから。」


クロト「了解した。」


クロトは聖剣をルキナから受け渡すと聖剣は突然と虹色に光輝き出した。


クロト「な、何だ?!これは?!」


周りの者達は驚愕する、突然の光に周囲が眩しく照らされる。光が徐々に収まると、聖剣は以前よりも一回り大きく、より神秘的な力を放っていた。


クロトは自分の体に何か変化を感じた。今までとは違う力が湧き上がり、全身が熱くなる。同時に、聖剣の声を幻聴するようになった。


[幻聴] 聖剣の声『私こそが真の勇者にしか反応しない聖剣。新たな担い手であるクロトよ。これから宜しく頼むぞ。』


エリス「な、何てこと...聖剣がこんな風に反応するなんて。」


セレナ「ほ、本当にクロトが...勇者だったの!?」


ルキナ「いいえ、ですが今はそんなことが問題ではありません。聖剣が認めた以上、それが真実です。さあ、これで王宮の使者たちも何も言えなくなるでしょう。」


オカマの借金取り「あ、アタシは今、とんでも無い光景を立ち会っちゃったわよぉぉぉ!!?」


新たな勇者の誕生を見て、仲間達は兎も角、借金取り達は大いに驚き出す。 


そんな新たな勇者になってしまったクロトの姿を、呆然と見ていたアランは我を取り戻してブチギレた。


アラン「ふざけるな!俺はこのパーティーのリーダーだぞ!なんでこんな奴が勇者なんだよ?!」


借金取りは本来の目的であるアルトの借金、200万ゴールドの支払いを強引に求めた。


オカマの借金取り「おい、アラン!お前は借金を返さなきゃならないんだぞ。今すぐ200万ゴールド持ってこい!」


アランは歯を食いしばり、怒りに震えながら叫ぶ。


アラン「くそっ、なんで俺がこんな目に遭うんだよ?!」


こうして、アランは勇者の称号を剥奪され。『偽勇者』『借金勇者』と周りから呼び嫌われると共に、借金取り達に連行がてら、借金を返済するまで鉱山で功績掘りの重労働をさせられたそう。

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