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神器選定

原○の新しい地方伝説エグい強くないですか?

私の完凸ク○リンデさんでも苦戦するのはマジでやべぇと思います。強い敵と戦うのは楽しくて興奮しますが。

「これは一体……基本ステータス以外、全てまともに表示されていません。名前や年齢まで……故障でしょうか?」


「そんなこと今ままで無かったと思いますが…」


 姫様と女性騎士は俺のステータスに困惑している。

 スキルだけでなく、名前まで出ないのはバグか何かを疑ってしまうよな。


「さっきシルフィさんに教えてもらってオープンで見た時も、こんな感じでしたね。何か色々書かれてますけど、何が出来るんですかね俺?」


 しかしそれでも戦闘スキルや攻撃スキルと言った、固有スキル以外にも何かしらのスキル持ちであることは知られたことに変わりない。

 他の皆は大概、固有スキルくらいしかスキルは無いと思うが、俺はなぜか戦闘スキルや攻撃スキルとか色々持っている。

 戦力になると判断されることだろう。


「……なんのスキルかはわかりませんが、少なくとも戦力になることは確かです。他の勇者様はほとんど固有以外のスキルを持っていませんから。これらのスキルについては、明日からの訓練でじっくり調べてみましょう」


「りょうか~い」


 ま。そうなるよな。

 結局しばらくは国に縛られることになるのは確定している。

 後はここからどう自由を手にするか…。


(前世では強敵といっぱい戦えると思って、リョウタロウのサポートを引き受けたが……魔王軍の本拠地に行くまで、そこまで強い相手はいなかったし。このまま戦争の道具になるのはね…。さっさと追放イベントに漕ぎ着けたいね)


 鑑定の場から離れ、これからのことを模索する。


 地球の創作物には、追放系というジャンルが存在する。国やパーティーから追放された主人公が実は最強だったってオチで、追放した側は何かしら抱腹を受けたり、破滅へ向かったりするやつ。

 アレみたいに追放されるのが目標かな。俺は別に最強ではないから、いなくなったところで問題ないだろうし。


 そうなれば冒険者として生活しつつ、地球とと行き来する方法を探せるだろう。

 さすがに今世の両親とこれで永遠の別れってのは辛い。不自由ない暮らしをさせてくれた恩返しはしたい。


「前世では出来なかったしな…」


「何が出来ないんでござるか?」


 同じく鑑定を終えたヲタが声を掛けてくる。

 声に出てたか。


「親孝行出来ないのは辛いなって話」


「なんと。早乙女は凄いでござるな。こんな状況だと言うのに、親孝行出来ないことを悔やむとは。普通は自分のことで手一杯になるであろうに」


 クラスメイトを見ながら言うヲタ。

 それぞれ何かしら突飛したステータスと固有スキルを持ってるようだが、皆にとってここは見知らぬ土地。

 どれだけ凄い能力を有していようと、不安な気持ちは変わらない。


 うつむき、泣きそうになっている者。

 友達と身体を寄せあって、不安を緩和させている者。

 強がって平常心を保とうとしている者。


 多くはそんな様子を見せている。


「さ、早乙女くん。ヲタくん。い、一緒にいてもいいかな…。まだちょっと、不安で…」


 そして先ほどまで【超怪力】と【超合金化】の固有持ちであることにショックを受けていた真白さんもまた、召喚された不安が甦って来たようだ。


「もちろん良いでござるよ。むしろ一緒にいて欲しいでござる…。拙者、たぶんクラスで一番力を持ってないと思われるので…。ぶっちゃけ守って欲しいでござる」


「情けねぇな…。その固有が既にコンプレックスになってる子相手に」


「だってだってぇ~!」


「キショ…」


「ガチトーンはやめて欲しいでござる…」


「……ふふふふっ。うん!ちょっとこの力は嫌だけど、それでヲタくんと早乙女くんを守れるなら…」


 真白さんは俺たちのやり取りを見て笑顔になり、小さくガッツポーズしながらそう言った。

 ……もしかしてヲタの奴。真白さんを元気づける為に…?だとしたらピエロの才能があるな。


「なっはは!ありがたいでござる!しかしもちろん守られるばかりでなく、自衛はしっかりするでござるよ。……それで早乙女殿、真白殿。これからどうするかでござるが…」


「どうするか?」


 ヲタが急に真剣な顔になり、そんなことを言う。


「うむ。こればかりはさすがに声を小さくして言うが、正直拙者はこの者らの言うことが信用出来んのでござる」


 訝しげな視線を姫様と騎士たちに向けながら言う。

 ただ創作物の読みすぎなお陰で他より落ち着いてるだけなのかと思ったが、ヲタなりに何かに気付いたことがあるようだ。


「を、ヲタくん。それって、どういうこと?」


「考えてもみるでござる。前回の勇者召喚の儀で呼び出したのは一人。対して今回は拙者たち31人……これが4人とか5人とかに増えるならまだしも、一気に増えすぎではござらぬか?聞けば先代の勇者パーティーというのは、勇者リョウタロウ。エルフのラウラ。鬼族のギルガ。蟲人のサソりん。そして闘神ノヴァと呼ばれる者たち、計5人で魔王討伐を成し遂げたとのこと。それなのに勇者だけで約6倍の戦力を召喚……何か裏があると思って、早めに何かしら行動を起こした方が良い気がするのでござる」


「……確かに。言われてみれば…」


 魔王討伐が目的なら、こんなに人数は必要ない。魔王軍は確かに強力な敵が数多く存在するが、それでも明らかに過剰戦力だ。


 例えば魔王は街一つ滅ぼせるくらいの魔法をいくつも使用していたが、なんとか対策は出来る範囲ではあった。四天王でも、そんな攻撃を仕掛けてきたのは魔導王と名乗る奴くらいだったな。

 それに対してステータスオールSの相馬を始め、正しく粒揃いの勇者たちをこんなに集めるなんて……


「マジで魔王討伐以外に、何か別の目的があるってのか…?」


「拙者はそう見てるでござる。が、あくまで拙者の不安症から来る推測であるからな…。漫画やラノベの読みすぎだと言われれば、それまででござる」


 ヲタはそう言うが、強ち間違いではないと俺は思う。

 最初は「またコイツら異世界の人間に頼って、身勝手に縛り付けるつもりかよ…」くらいに思ってたのだが。ヲタの推測で、強力な人間をこんなに揃える意図が別にあるとしか思えなくなってきた。


 ヲタの推測をそのまま鵜呑みにする訳じゃないが、調べた方が良いかもしれないな。


「ヲタの心配する気持ちもわかる。ここは俺たちの文化とは明らかに違うからな。けれど今は調べる方法がない。今は大人しくしておいて、追々調べていくとしよう」


「うむ。承知した。真白殿は何か気付いたことや、意見などはあるでござるか?」


「えっ!?え、えっと、えっと……も、もしヲタくんの推測が正しかったとしたら、他の皆にも教えた方がいいのかな…?」


「いや。それはやめた方がいいだろう。ただの推測をいたずらに広めて、皆の不安を煽る訳にはいかない。ましてや今は、召喚のショックがあるしな…」


 人によっては既にトラウマ確定だろう。これから自分たちは命を賭けた戦いをすることになるんだからな。

 今まで平和な生活を送っていたのだから、想像しただけで恐怖が込み上げて来るはずだ。


「そ、そうでござるな…。すまぬでござる。こんなこと言うのは、軽率だったでござるな…」


「いやいいさ。今は誰もが不安や不満を口に出したいだろうしな。とにかく、一旦この話は終わろう。もうすぐ適性検査とやらも終わりそうだしな」


「うん…。と、友達がいなくて良かったぁ…。いたら思わず溢しちゃいそうだし」


 真白さんが何気に悲しいこと言ってる…。

 自由時間が出来たら遊びに誘おう。


「皆様のステータスは把握致しました。それでは次に、神器選定に移りたいと思います」


 姫様の言葉に息を呑む者。ざわつき、不安がさらに増す者。様々な反応が出る。

 神器。要は命を奪う武器を与えると言われているのと同じ。そんな物を貰うのが憚られる気持ちがある奴らばかりだろう。


 そんなことはアイツらにとっちゃ、知ったことではないから、黙々と進行していく。

 囲んでる騎士たちの脇に置かれていた、布を被った大量の台車が次々運ばれて来る。それが取り払われると、見るからに特別な武器であることがわかる物たちの姿が露になった。


 金色に輝く剣を始めとし、丸く刺々した星の形(これ名称あんのかな?金平糖型?)をした杖。

 見るからに相手を潰すことを目的としているどデカイ銀色のハンマー。

 神々しさと禍々しさが合わさったかのような分厚い本。


 その他にも正しく神器と呼ぶに相応しい武器が、武器置きにズラーッと並べられている。


「こちらの数々の神器から、“皆様を選んでいただく”……それがこれから行う、神器選定でございます」


「あ?俺らを選んでもらうだぁ…?まるでこの剣や槍に意思があるみてぇに言いやがるな」


 佐江がすぐに姫様の言葉の違和感に気付き、疑問を口にする。

 意外と鋭いんだな。佐江って。


「はい。ケンタ様の言う通りでございます」


 そして姫様もすぐに佐江の疑問に答えた。


「はぁ?無機物に意思なんてあんのかよ。いくらここまでファンタジーなことが続いたからって、さすがに信じられんね……」


「わーーーっ!?なんか急に光り出したんだけどー!」


 佐江の言葉が、急な光と女子の声によって遮られた。

 見るとそこにはクラスのカーストトップでよく見かけるような、パーマをかけたギャルが発光する弓を持ちながら騒いでいた。


「な、七奈美(ななみ)!?アンタ何やってんの!」


「いやそのなんかさ!?この弓見てたら、自然と吸い寄せられたっつうか、手に取らなきゃいけないような気がしてさっ!」


「何言うとんねん、ななみん…。ヲタみたいなこと言い出しおって」


「拙者。常日頃からあんな痛めのセリフは吐いてないでござる…」


 友人二人から七奈美やななみんと呼ばれたギャルは、どうやらリョウタロウが愛用していた弓に選ばれたようだ。それもダンジョン産のやつ。


「おめでとうございます。ナナミ様は星屑の弓に選ばれたのですね。ナナミ様の固有スキルは【必中】でしたね。正にピッタリの武器かと」


「うへぇ~。これうちってば、後方から大活躍しちゃう感じ???でも弓なんて握ったことないんだけど…」


「ふふふっ。すぐに馴染みますよ」


 今のが神器の特性の一つだ。

 神器には意思が宿っており、自身の使い手を選ぶ性質がある。選ばれなくても鞘から抜けたり、弓を引いたりなどは可能だが、その場合は殺傷力が無い。

 剣は紙すらも斬れないし、矢は飛ばずに真下に落ちるなど……なんとも不思議な物だ。神器というのは。


「このように神器が人を選びます。選ばれた方が神器を手にすると、今みたいに強い光を放ちます。どうぞ皆様、ご自由に神器を見て回ってください。選ばれるのが一つだけとは限らないので、ナナミ様ももっと見てみてください」


「マジで!?りょ!」


 死語じゃねそれ?今日日聞かねぇぞ。


 姫様の言葉に従い、大量の神器を見て回るクラスメイトの面々。

 適性検査の時と同様、各所で色々と騒がれる。


「まぁ!リョウタ様はやはり、聖剣エクスカリバーに選ばれましたか…!リョウタロウ様以来の、エクスカリバー所有者でございます!おめでとうございます、リョウタ様」


「は、はい!ありがとうございます」


「そういえば。リョウタ様とリョウタロウ様は、名前が似ておられますね」


「言われてみれば、確かに…」


 なんとなく予想はしてたが、相馬がエクスカリバーに選ばれたか。

 ステータスオールSともなれば、エクスカリバーが反応しない訳ないもんな。リョウタロウの時は運以外のステータスが全部Sにならないと認めてくれなかったし、たぶんエクスカリバーに選ばれる条件がそれなんだろうな。


 てか次々と誰かが神器に選ばれていくせいで、眩しいったらないなおい…。

 神器に失明させられそう。


「うおー!?真白殿!えれぇゴツい物に選ばれたでござるな!?」


 隣のヲタが何やら騒いでいる。

 細目でヲタのさらに隣を見ると、ヲタの言う通り真白さんがゴッツい大剣を手に固まっていた。


 その大剣は全体的に薄茶色の地味な色合いをしており、ギザギザした刃と鍔の部分がゴツいエンジンみたいなのが付いているのが特徴的だ。


「おいおい。よりによって真白さんを選ぶのかよこれ…」


 思わずそう呟く。


 確かこの大剣はギルガが自分用に作った神器で、主に(かった)い敵をズタズタに切り裂く為の物だったはず。

 素材は世界最高級の鉱石であるオリハルコンを使用してるから、刃こぼれもまずしない。


「そんな…。私、なんでこういう屈強な男の子みたいなスキルとか武器ばかりなの…。ぐすんっ。ひっぐ…」


「真白殿ー!?なんてこった、真白殿のメンタルがついに限界を迎えたでござるッ!お客様の中にカウンセラーはいらっしゃらないでござるかー!!!」


「お前がカウンセリングしてやれ。慰めという名の。マジでごめんなんだけど、俺はこういう時なんて声を掛けてあげれば良いのかわからん…」


「ぐぬぅ…。果たしてアニメで鍛えた女子への慰め術がリアルにどこまで通じるか…」


 サソりんもラウラも、この大剣……確か魔剣グラムだったか?

 これを扱うギルガを見て『いいなぁ、それ。便利で』と口を揃えて羨ましがってたし。この神器に選ばれて落ち込む真白さんを、どう慰めたら良いのかマジでわからん…。


 ヲタと真白さんは一旦離れ、俺一人となる。


「さてと。ちゃっちゃと適当に神器を見て回るか」


 ぶっちゃけ相変わらず神の目のステータス表記がバグってたことを考えると、どの神器も俺を選んでくれるとは思えない。

 俺は前世ではギルガ作も含め、一度も神器には選ばれてないからな。防具やアクセサリーにすらも……なんとも悲しい人生だったな。

 可愛い嫁を二人も貰っておいて、酷い言い種だとは思うけど…。それでも男としては、特別な武器の一つや二つは装備したかったんですよ。


「そういえばここにあるのは武器ばっかだな?防具やアクセサリーはまた後か?……ん?」


 そんなことを呟きながら神器を見ていくと、一つの剣に目がついた。

 他の剣などは鞘から予め抜かれていたのだが、これだけ鞘に納まった状態で置かれている。

 持ち手を守る為のガードの片端が、グリップと同じ長さまで真っ直ぐに作られているのが特徴的だ。ギリ柄まで届かないくらい。


 剣の柄にはこの世界の文字で『狂』という文字が彫られており、鞘にもこの世界の文字で、こちらは一筆書きのように『ギ』と彫られている。

 この『ギ』はギルガの作品であることを表していて、真白さんを選んだグラムにも探せば同様の文字があるはずだ。


 そしてこの『狂』という文字は……“(ノヴァ)”のことを指した文字。


「なんでこれが神器と一緒に並んでんの…?」


───その剣は。前世の俺の愛剣だった。


 しかも神器でもなんでもない。ギルガの奴が酒で酔っ払った勢いで作った、なんの特別な効果も持たない、オリハルコン製のただの丈夫すぎる無銘の剣だ。


「どういうことだこりゃ…。なんでこの剣がこんなところにある?」


 手に取って、見間違いかと思って『狂』の文字を何度も確認してしまう。しかしどう見てもギルガが俺に対する皮肉で付けた名前だ。


「ユリ様。どうかなさいましたか?」


 無銘のオリハルコン剣がなぜここにあるのか疑問に思っていると、姫様が俺に話し掛けてきた。


「え?えーっと…。なんでこれだけ、鞘に納まったままなのか気になって…」


 当たり障りのない言葉で誤魔化すようにして言う。

 危ねぇ~。選ばれた訳でもないのにマジマジと特定の神器を見る奴なんて、盗もうとしてるんじゃないかとか怪しまれるよな…。


「ああ。『デュランダル』ですか」


「え…」


 思わずオリハルコン剣と姫様を交互に見る。


 そしてもう一度オリハルコン剣に目をやり、姫様を見る。


 さらにもう一度オリハルコン剣と姫様を素早く交互に見た。


「デュ、デュランダル…?」


 なんで地球でも聞いたことあるような聖剣と同じ名前してるのコイツ?分不相応な名前に驚きのあまり姫様と交互に三度見しちゃったじゃん。


「はい。聖剣エクスカリバーと並ぶ聖剣、デュランダル。先ほど召喚部屋で説明致しました、勇者パーティーのノヴァ様が愛用していた剣でございます。刃は決して折れず、決して欠けず……その聖なる光の剣を持って、魔王討伐に大きく貢献したと聞いております。そちらもエクスカリバー同様、ノヴァ様からは所有者が現れず、これは伝承だけ伝わっているのですが。なんでもデュランダルは如何なる攻撃を弾き、魔法は打ち消す特性を持ち合わせているそうなのです。その効果で魔王の世界を何度も破滅させるような攻撃を無効化し、勇者パーティーを勝利に導いたそうです」


「……………あ。そう…」


 無ぇよそんな効果ー!?

 これは貴重なオリハルコンが酒の失敗からギルガによってただの普通の剣に仕上げられてしまっただけで、やたら丈夫という点以外はマジでそこらの剣と変わらんてっ!

 ……いやまぁ、もちろん切れ味もめちゃくちゃ良いんだけどさ?でもそれだけだ。


 エクスカリバーやグラムのように、特別な効果なんて何もない普通の剣だ。

 攻撃を弾いたり、魔法を打ち消したりしたのは俺自身の技量だ。剣はあんまり関係ない。

 あと魔王のクソやべぇ魔法を打ち消してたのはラウラです…。アイツの盾がそういう効果を持ってた。

 物理攻撃もサソりんやリョウタロウと一緒に受け止めることで、ようやく弾いたり受け流すことが出来た。


 リョウタロウたちのこともそうだが、500年で色々と事実改変され過ぎじゃないか?

 てかマジでなんでこれがここにあるんだ?サソりんとラウラ、俺らの子どもたちが家に飾ってるもんだと思ってたわ。

 もしくは倉庫の奥でゴミ同然と化してたか…。


(でもまぁ……色々と疑問は尽きないが、使い慣れた武器がこの場にあったのは幸いだな。使い慣れてない武器で戦うことは、素手で戦うことよりも危険だってゲームの俺の推しキャラが言ってた。昔の勘を取り戻す必要はあるだろうが)


 かつての愛剣がここにあることに喜びを感じながら、剣を引き抜こうと力を込める。

 しかし神器扱いされていて、選ばれた判定の光が出ないこれをどうすれば譲ってもらえるだろうか…。


「あっ!すみません長々と…。その剣が鞘に納まったままの理由ですが、単純に“誰も鞘から抜くことすら出来ない”のです。相当特別な剣なのでしょう。勇者様たちに一縷の望みを賭けて、一応この場に用意はしたのですが……」


「え?」


───チャキッ……シャーーー…。キラン…。


「……………え?」


 姫様が俺の疑問に答える頃には、俺は既に剣を鞘から抜いていた。抜いて、しまっていた…。


 え。今、誰にも抜けないって言った…?

 オリハルコン製とはいえ、なんの特別の効果もないこの剣を…?


「普通に抜けたけど…」


「……………」


「……………」


「「「えーーーーーッ!?!?!?」」」


 しばらく沈黙が続いた後、姫様とシルフィ含む周りの騎士たちが一斉に驚きの声を上げた。


「やっばこれ…。やっちまったか?」


 やらかしたと冷や汗をかいてる俺を他所に、俺の愛剣はあの頃と変わらない、美しく真っ直ぐな。白銀の剣身を輝かせていた。

失敗で産み出した武器が、実は特別な仕込みがされていた系大好き侍。

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